太陽の腕
白が果てしなく続く世界で、人の影に色が付いていく。メイド服で、輝く銀髪に仮面のような無表情。
夢の世界で、俺を攻撃していた存在……その正体はフェルだった。何故フェルが攻撃してきたのか分からない。
「アハ……アハハ……アハハハ…………」
無表情だったフェルは歪に嗤い、血の涙を流し始める。太陽の剣を持ち、カタカタと揺れる。
対する俺の体は今までの夢とは違って、俺の体には手も足も無い。今までの手足はきっと、コイツによって付けられていたんだ。
「スベテノ……オワリ…………ヲ……」
フェルらしき存在が太陽の剣をゆったりと俺に振り上げる。夢の中で位なら殺されたって……
(馬鹿者!)
俺の服の襟首を誰かが掴み、フェルから引き離した。フェルの剣は振り下ろされ、火柱を上げる。
あの炎……嫌な予感がする。というか、俺を引っ張ったのは……?
(我だ。レイジ、天照だ。油断しおって……フェルは貴様を殺す気だ。まずはここを乗り越えろ)
「フェルが俺を殺す気……? の、乗り越えろって……?」
(ここは夢の世界。貴様の心が奇跡を生み出す。まずは手足でも用意せよ)
天照の指示通りに手足に、フェルの創ってくれた義手と義足を装着する。この夢の世界では義手も義足も魔力なしで動かせるみたいだ。
フェルと戦うのに、フェルが創った物を使うのか。いや、使わなければならない気がする。
(貴様だけでは、フェルには勝てん。自覚できぬ程愚かではないな?)
「勿論だ。…………でもどうすれば? あの太陽の剣はヤバいって気がするぞ」
(安心しろ、貴様にも我の加護を授けてやろう。貴様に加護を授ける事は出来ぬが、夢の世界となれば、話は別。受け取れ、レイジよ!)
天照が俺の右腕を噛み砕く。痛みはなく、右腕を通じて力が漲ってくる。天照が牙を離すと、右腕だけが太陽の剣のような模様が付いている。
これなら、一時的にフェルのような存在と戦えるかもしれない。
「太陽の腕……そうか、こういう風にイメージが流れてくるのか」
太陽の腕から、頭の中にイメージが流れてくる。体に漲る力を右手に集中させると、オレンジの闘気が拳を纏う。
これは魔力じゃなくて……闘気? まあ、いい、これなら戦える。
(油断をするなよ!)
フェルへと駆け出し、剣と拳を打ち合う。素早い剣戟にも、太陽の腕が反応してくれる。7回ほど打ち合って、俺達はお互いに下がった。
自分の力じゃないけど、戦えるって嬉しいものだ。
「キエテ……! キエテッ!」
フェルの剣から、灼熱の光線が放たれる。右手を前に翳し、闘気の盾をイメージする。闘気がバリアを形成し灼熱の光線を防ぐ。
なんて威力だ…防げているはずなのに、体が焼けているように熱い。
(レイジ! 我に乗れ!)
天照の声に、バリアの展開をしながら飛び乗る。天照がその場を跳ぶと、黒い影が地面から飛び出し、俺の居た場所に突き刺さった。
影じゃなくても、あの影を使えるのか……いや、分身を習得したフェルなら当然かもな。
(我も、夢の世界ではその加護を授けるのが限界だ。レイジ、夢を抜け出す策はあるのか?)
「あいつら、倒しても復活するしな……」
前の夢ではあっさり切り裂けたけど、今回のは比べ物にもならない位に強い。天照の力で互角に持ち込めているとはいえ、殺せないなら夢からは抜け出せない。だったら……
「…………よし、試してみるか!」
(む? おい、レイジ!?)
天照から飛び降り、フェルのような存在を抱きしめる。人間らしくない、生暖かい感触。フェルのような存在は抵抗して影を刺してくるが、俺は一切躱さない。
このフェルは俺の夢に住み着いたフェルの思念。きっと、この思いはフェルには届かない。それでも俺は……
「レイ……ジ…………様」
血の涙を流しながら、フェルは微笑んだ。口づけをして、フェルは消えていく。
太陽の腕は消え、夢の世界が崩壊していく。
(全く、心配させおって……)
太陽の腕
天照の加護を受けたレイジの義手。
身体能力の強化、闘気の強制発動、闘気の具現化が可能になる。
レイジは平凡を止めるために、神から受けれる特典を使い切った為、現実では使えない。
夢の世界でのみ、使用が可能になる




