変化と日常
目を開いたが体を起こす気にはなれない。隣を見れば、フェルが横で寝息を立てている。いつものネグリジェも着ていない。いや、ベッドの近くに雑に落ちているだろう。
「ここ最近、毎日だな……」
スギヤの街を訪問してから、約1週間。フェルは毎日、俺を襲っている。そして。俺も受け入れてしまってる、それどころか楽しんでしまっている。
…………体が動かせない。自分の家では義手と義足を外しているからだ。義手と義足は思ったよりも負担がかかる、だから家では車椅子が多かった。
「あ……おはようございます」
フェルは起き上がると、俺の体を起こして、首筋に吸い付いてくる。
何と言うか、フェルらしくない……でも、フェルらしさが俺には分からない。ただ……
「レイジ様……」
今のフェルは、お互いに良くない……気がする。
◆
俺は今、ネルガに車椅子を押してもらいながら、仕事の為の部屋に向かう。今のフェルに仕事を手伝わせる気にはなれず、レオとネルガの補佐の元、領主の仕事を学んでいた。
「なあ、ネルガ」
「何ですかな?」
「正直に今のフェル、どう思う?」
天照に会った日から、フェルの様子がおかしいというのは、ネルガもレオも気付いているだろう。フェルの居ないところで聞くのは卑怯かもしれないけど、聞いてみたかった。
「フェル殿ですか……いつも通りと言えば嘘になりますなぁ。筋肉をぶつけ合った私としては、愛の暴走と感じますな……」
ネルガの言葉も少し分かりにくい。いや、天照に比べれば分かる部類なんだけど……でも、フェルの信念は覚えてる。
「フェルの信念は俺への愛……だったっけ? それが暴走……?」
「ええ、結婚した私も味わったものですが……力を持つ女性は愛の加減をよく間違えます。フェル殿程、強ければ惚れた相手との距離の取り方は難しいでしょうな」
惚れた相手との距離の取り方……か。ん、惚れた?
慌ててネルガの方へ振り向くと、ネルガはしまったという表情を浮かべている。
「フェルが俺に惚れてるって何でお前は知ってるんだよ!」
「いえ、演習の時に拳から伝わってくるのです。フェル殿のレイジ様への愛が、それはもうガッツリと!!」
慌てるネルガに溜め息を吐く。
いや、別に俺もフェルに惚れてるし、フェルも俺に惹かれているのは気付いている。けれど、それを他人に知られるのは恥ずかしい。
「まあまあ、続きは仕事の後にしましょう。レオ、入るぞ!」
ネルガは扉の前で止まると、中に居る筈のレオに声をかける。扉が開き、レオが俺の車椅子を押し始めた。
「それでは、レイジ様。この私はフェル殿と筋肉で語り合ってきましょう。レオ、任せたぞ」
「おう、おっさん。しっかりフェルの体力減らして、レイジ様を助けてやれよ。俺の回復魔法でも追い付かねーぞ」
「レオ!」
余計なお世話だ!そう思って名を叫べば、レオは悪い悪いと言いながら楽しそうに笑う。ネルガは既に演習室へと向かっている。
こいつ、絶対に悪いと思ってない。……でも、服従され過ぎてもつまらないし、これくらい自由な奴が居てくれた方が気楽だ。
「腕付けるぞー?」
「おう、頼むぞ」
レオが下着以外の俺の服を脱がす。義手と義足を取り付け、レオが肩に手を当てて魔力を流し込んでくれる。暖かいものが肩から流れ込み、手足の感覚を取り戻す。手足の感覚を取り戻したら、服を着直す。
フェルが作ったこの義手は素晴らしい性能だった。体に馴染む……けど、何か怪しいような気が……
「さて、と……手紙が1件届いてるな、読むか?」
「ああ、頼むよ」
さて、仕事を始めようか。
書いてて恥ずかしかった←




