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一概に悪ではないのだと


「さて、小腹が空いてたりしないか、君達」

「空き、まし、たー」

「じゃあ裏町で今流行りの駄菓子を食べさせてあげよう」


 ガラルさんはジャンククラスのみんなによくしてくれた。


 愛娘の顔馴染みとはいえ、ここまで甘えていいものか悩ましい。


 裏町で流行っているという駄菓子を求め、僕達は工房を出る。


「ん? 何かおかしいかルウ?」

「いえ別に」


 工房の鍵を閉めていたガラルさんを僕は怪訝な眼差しで窺っていたみたいだ。


「……俺も魔法学校では、ジャンククラスに所属していたんだよ」

「そうだったんですか?」

「そうだとも。先輩が後輩の面倒を見るのは、別におかしくないだろ?」


「違うんですガラルさん……ご厚意は嬉しいのですが、僕達は何も恩返しできそうになくて」


 言うと、ガラルさんは微苦笑を零し、僕の頭に手をやる。


「お前は子供のくせに、色々と考え過ぎだ。そんなに言うのなら、早く孫の顔を見せてくれ」


 何でガラルさんの中で僕とクックは結婚前提になっているのだろう。


 僕にはメフィストさんが居れば、他の人とは結婚できない。


 その後、僕達はガラルさんに連れられ裏町の駄菓子を食べさせて貰った。


 地球で言う所のもんじゃ焼きに近いそれは、僕達の満腹中枢を刺激し。


 エドやコリンズはその場で寝そうになっていた。


「ジャンククラスのみんなに聞いて欲しい、明日から錬金術を齧ってみないか?」

「錬金術ですか?」


 泣き虫のクスィーはガラルさんの提案にちょっと靡ているようだ。


「俺を始めとした、MP量の低い人間に魔法は難物だからな。だがMP量が低くても、万物に宿るMPを利用すれば、俺達のような人間でも世の役に立てるようになる」


 現にガラルさんが作る魔法紙は今引く手あまただ。


 すると、駄菓子の最後の一口を食べたアンナが挙手した。


「やります、私は私にできることを何だってやってみるつもり」


 彼女は翡翠色の瞳を輝かせながら、ガラルさんの申し出受ける。


「君は何事にも積極的だな、じゃあ明日から放課後は私を訪ねなさい」

「はい! よろしくお願いします師匠!」

「師匠か、どうやらクックに妹弟子が出来たみたいだな」

「やったー」


 アンナの他にも。


「出来れば私もお願いします」


 黒髪のポニーテールが艶めかしい、しっかりもののヒューも。


「私もよろしくお願いします」


 八重歯が可愛らしい泣き虫のクスィーも、ガラルさんに師事を仰いだ。


「……エドくんやオゴロくんはどうする?」


「んー、俺ー?」

「エドは明日から俺と猛特訓するんだよ! もちろんオゴロもだ!」

「え? 僕なにもいってない」


 エドとオゴロの男子組はコリンズと放課後を過ごすようだ。


「ルウくんはー?」


 クックが頓狂な声音で聞いて来た。

 口元にソースを付けていた彼女にハンカチを差し出す。


「僕はどっちも、錬金術も学ぶし、コリンズ達と体を鍛える」

「ルウはちょっと他とは違うからな、好きにするといい」


 ガラルさんの許諾も得れたし、明日から放課後が楽しみだ。


「師匠、私とルウだったらどっちの方が才能ある!?」


 アンナの迫力の乗った質問に、ガラルさんはまた微苦笑を浮かべていた。


 ◇


 みんなと別れる頃合いには日が暮れており、賢者の塔に帰る。

 帰路の途中、夕焼け空を背負う三つの巨塔の光景が怖く見えた。


 入り口から中に入り、メフィストさんの私室に向かうと多数の賢者とすれ違う。


「ふぁー、一体いつまでこの作業が続くんだ」

「一生涯だろうな」

「はぁ、俺達もたまには羽目を外さないとな」

「なら今度の休日、裏町に出向かないか?」


 賢者も賢者で悩み、普段から疲労を抱えているようだ。


 なだらかな階段を上りメフィストさんの部屋に着くと。


「ルウ、どこ行ってたの?」

「ガラルさんの工房に行ってました」


 ユルシアが僕の帰宅を待っていて、メフィストさんを呼んで来た。


「メフィストさん、今日はすみませんでした」

「いいんだよルウ、誰にだって失敗はある」


 するとメフィストさんは僕を後ろから抱きかかえ、ソファに腰を下ろした。


 まるでお気に入りのぬいぐるみのようだな、と思っていれば。


「はぁ、今日も疲れた。ルウが傍にいないと本当に駄目だな」


 メフィストさんは嘆息を吐きつつ、僕を寵愛していた。


「メフィストさん、1つ質問なのですが」

「なんだ? ルウの質問になら何だって答えるぞ」

「結局のところ、魔法学校は僕達をどうしたいのでしょうか」


「……あの学校は王国の中でも、右寄りの機関だからな。出来るならMPの低い連中にはいなくなって欲しいのさ。だからジャンククラスの人間はこれから様々な迫害に遭うだろう。私から学校の関係者に口出ししてもいい。辛くなったらすぐに言うんだぞ」


 メフィストさんは自分の立場を捨ててでも、僕を庇ってくれるみたいだ。


 その気持ちだけあれば十分で。


 今日の昼、ガラルさんから受けた厚意にも、感謝の念が堪えない。


 ゾロさんはこの国は腐敗してる。って言ってたけど。


 魔法王国にいるすべての人間が、一概に悪だと断じれそうになかった。


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[気になる点] MP量の低い人間に魔法は敷居が高いからな 敷居が高い 「不義理・不面目なことなどがあって、その人の家に行きにくい」『大辞林第3版』より
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