耳に入れしその事実
適度に森に自生していた薬草を摘み。
ゾロさんとは別れ、クックの家に向かった。
「お帰り……おお、ルウじゃないか、いらっしゃい」
「ただいまー」
「お邪魔しますガラルさん」
ガラルさんは工房で魔法紙を製造している。
今日はクックにポーションの作り方を教わりに来たけど。
もし手隙になったらガラルさんを手伝おうと思う。
「じゃあ、私が今からポーションを作ってみせるね」
「お願いします」
「先ず、取って来た薬草を水でよく洗い、泥を落として乾燥させます。乾燥させた薬草はこれになるんだけど、これを井戸の魔法水に浸して1日寝かせます」
クックのお母さん秘伝のポーション作りは、まるで料理のようだった。僕達が取って来た薬草と井戸の魔法水を使って、クックは料理番組のように作業を進めて行く。
僕がその様子をメモに取ると、みんなも真似ていた。
「そしてこれが完成した代物です、簡単でしょ?」
「いや、意外と抑えるポイントが多かった気がする」
大雑把な力仕事から、細かな手作業まで、クックは流れるように説明してくれた。
その手際のよさに、普段からぼーっとしがちな彼女の印象が変わったぐらいだ。
「とりあえず、みんな出来合い物のポーション持って行っていいよー」
「ありがとうございますクック先輩」
しっかりもののヒューはポーションを貰い、クックにお礼をつらねた。
「そのポーションは万病に効くって、母が言ってたから。大事にしてね」
「うん、言われた通り大事にするよ」
僕も赤色をしたポーションを受け取り、鞄に大事にしまった。
「そう言えばルウ、俺とクックからの入学祝は役に立っているかな」
「っ、すいませんガラルさん、実は」
2人から貰った魔法のポーチは学校の習わしで取られたことを告げると。
ガラルさんは悲しみに満ちた瞳で僕や、クラスのみんなに謝った。
「すまない、魔法学校にはその仕来りがあることを失念していた……君達が悪いんじゃないよ、全てはこの国を一向に改善できない、大人たちの不甲斐なさに尽きる」
「ガラルさんが謝らないでくださいよ」
「そーいえば、父ちゃんから貰った魔法剣はあの後どうなったんだろうなー」
エドが父より受け継いだ魔法の剣のその後を思案している。
「ジャンククラスの魔法具はのきなみプラチナクラスの生徒に行き渡る。だからと言って、プラチナクラスの生徒に手を出さない方がいい。君達ジャンククラスの人間からみれば、連中は化け物だ――」
と、ガラルさんがそのクラスの存在を仄めかした時。
――俺達は化け物なんかじゃないぜ!
この台詞と共に、錬金工房の扉を勢いよく開いた子供がいた。
「君は、コリンズ」
「夜会以来だなルウ……その、俺今日は借りを返しに来たんだ」
現れたのは夜会で握手をかわした僕と同い年のコリンズだった。
コリンズは借りを返しに来たといい、背負っていた風呂敷を下ろす。
「あ、それ父ちゃんの魔法剣」
「先輩達から貰ったお前らのお宝を、返しに来たんだ。受け取ってくれ」
コリンズがそう言うと、ジャンククラスのみんなはわっと花咲いた。
「こんなことして、ただじゃすまなくないかな?」
「なんとかなる! それに、俺はもうあんな思いはごめんだしな」
「……ありがとうコリンズ、僕なんかのために、怖い思いをさせちゃって」
「謝るのは俺の方だルウ。んだよ、陰気臭くなるから泣くなよ」
コリンズは奪われた魔法のポーチを僕に渡すと、再び握手を求めて来た。
夜会以来に交わした彼との握手に、僕は人の恩情に触れ、泣いてしまったみたいだ。
「ありがとうコリンズくん、君の勇気ある行動のおかげで、この子達の自尊心は救われた」
「そうなのかな? まぁ俺が将来目指してるのは勇者って奴だし、このくらいは」
ガラルさんがコリンズを褒めると、エドやオゴロ、アンナにヒューとクスィーもコリンズに感謝の気持ちを伝えていた。
「ルウ、お前のMP量は一体いくつなんだ? 俺はてっきりプラチナクラス級の存在だと思っていたぞ」
魔法学校には生徒の持ち合わせるMPによってクラス編成がなされる。
下から順にジャンク、ノーマル、レア、プラチナで。
プラチナクラスの編成基準は、3万より上のMP量であることだった。
何故ガラルさんがさきほど、プラチナクラスの連中は化け物だと称したのがわかる。
「今まで言ってませんでしたけど、僕が生まれ持ったMP量は」
0です。
そう告げると、ガラルさんは驚いたように目を見開いていた。




