ジャンククラスの夢
「ルウくんお待たせ―」
「クック、今朝はありがとう」
「どういたしましてー」
賢者の塔でのどかな一時を過ごしたからか。
魔法学校の放課後、クックと校門で落ち合う頃にはみんなも元気になっていた。
「その子たちは、ルウくんのお友達?」
「そーでーす、俺はエドっていーまーす」
「オゴロです」
クラスの男子はクックに早速気を許していた。
クックは1つ年上の、赤毛の三つ編みが可憐な美少女だからな。
まだまだ幼いのに、母性も相まって、クックは今からモテていた。
「それじゃあ行くよー、母さん秘伝のポーションには森の薬草が不可欠だから」
「またあの森にもどるの?」
と、アンナはくたびれた口調で言う。
昨日はあの森でゴブリンを狩ったし、これからも何かと縁がありそうだ。
「おい、あいつら今年のジャンククラスだろ?」
「誰か教えてやれよ、お前ら生きてるだけでゴミなんだって」
下校中の下級生が、僕達を見て愚弄している。
「……さっさと行きましょう、ここに居ても馬鹿にされるし」
「そうだねー」
「な!? お姉さんまで私達をゴミと思ってるの!?」
「思ってないけど?」
アンナはちょっと早とちりな所があるんだな。
それほど自身の劣等感が嫌らしい。
◇
「クック、薬草ってこれでいいの?」
「うん、ばっちりだよルウくん」
街外れの森はやけに静かだった。
嵐の前の静けさ? とは思い辛いけど、首筋を冷ややかな風が撫でていく。
「はぁ、商売あがったりだ。おうルウ、こんな所で何やってるんだ」
「ゾロさん、今帰る所ですか?」
薬草摘みをしていると、街の方角からゾロさんがやって来た。
今日まで不思議だったゾロさんの素性を知ってしまった僕は、少し焦る。
「薬草取りか、余り摘み過ぎないように気をつけろよ?」
「了解しました……それと今日はありがとうございました」
「礼をいわれるようなことしたかね、俺は」
「そう言われると、確かに」
「ばーか、そこはお世辞でもいいから何か言っておけよ」
……竜、なんだよな? 本当に。
ゾロさんの正体はこの先の湖に生息する、竜であり。
これはメフィストさんにも内緒にしてある。
一見は小汚い恰好をした、インチキ臭い露天商の店主なんだけどなぁ。
「ちょっとおじさん! その先は危険よ!」
幻想湖に帰ろうとするゾロさんをアンナが制止している。
「なんで?」
「森を抜けた先の湖には、竜がいるからよ」
「竜? 竜ねぇ……嬢ちゃんはこんなこと知ってるか」
「何を?」
――竜は元来、人間の神様だったんだ。
「だからな、この先の幻想湖にいる竜は、呼び捨てにされるほど落ちぶれちゃいないのさ」
「じゃあ何て言えばいいのよ」
「言い様はいくらでもあるだろ、竜神様とか。嬢ちゃんは清らかな心をしているようだし、将来は竜神付きの巫女にでもなったどうだ?」
「……巫女か、おじさんそれってどうやったらなれそう?」
アンナが巫女になる方法を尋ねると、ゾロさんは大きな手を彼女の頭にやった。
「巫女になりたかったら、さっさとこの国を出ることだ。この国は腐敗しちまってるよ」
年端も行かない子供に大胆な決断を迫るなぁ。
「国を出ろって言っても、どうすれば」
「見受けた所、嬢ちゃんは考えるのが余り得意じゃなさそうだし、ここは1つクラスメイトの知恵を借りてみろよ。人間は仲間との結束力が1番の長所だと俺は思うな」
ゾロさんがそう言うと、アンナは僕を見詰めていた。
ジャンククラスでも召喚魔法を手繰る異色の存在を、羨むように。
と言っても、今の僕に提案らしい提案はできない。
そこでふと思ったのは、僕は将来どんな人間像になりたいのかだった。
仲間に頼られ、共に支え合えるような生き方は美徳だと思うけど。
「……みんなは、将来どんな人になりたいの?」
その場に居たみんなに将来の夢を尋ねる。
「私はとにかく自立したい」
アンナは自立心をその年で垣間見せれば。
「俺は冒険者ギルドに入って、有名になりたいな」
活発な雰囲気のエドは将来有名人になりたがっていた。




