庭案内される側
ルアン視点です。
なんて事のない、一言だった。
--なのに、なんて……。
※※※※※
ミネの家の庭は区画を区切ったりはせず、多種多様な植物や木々が生い茂っていた。
まあ、一応木々は庭の端の方に植えられてはいたが……なんて言うか……。
「黄色い……。」
俺の知っている庭とはかなり違う。
この乱れ咲きの様な入り乱れている作物達を見るにミネの性格が伝わってくるが……。
「だが、嫌いじゃないんだよな……。」
これだけごちゃ混ぜなのに、ひとつひとつがイキイキとしていて色鮮やかだった。
それに、雑草はほとんどなく、手入れの良さが窺える。
ミネはマメで、世話することも苦ではないのだろう。
--お。アレは確か……。
その様にいろいろと感じながらも眺めていた庭で目に付いた作物があった。
いただいた食事の記憶を思い起こすと、類似している気がする。
「アレは?サラダに入っていたような葉野菜では?」
ミネが作ってくれたサラダに入っていたな……緑、黄色、緑のストライプ……目に付くから無意識に覚えていた……。
「そうそう、ほうレモ草ね。」
ミネはさも、当たり前の様にその名を言った。
……また、変わったネーミングの作物だった。
大丈夫。
俺は学んだ、言わぬ方が良いこともあると。……身に染みた。
普段は皆否定なんてしないからなー。いや、まあ……しないじゃ、ないか。
自分の普段の私生活に疑問を感じながらも先行くミネに着いて行きます。
そのまま、広い庭をふたりで見て回る。
しかし、……………………細かく見て回るとやはり何とも名状しがたい不思議な庭だった。
見たことのない作物がオンパレードな事は、最早大前提なので置いておくことにするが……良く見ると明らかに時期はずれの作物や、光輝く土まである。
そもそも黄色が多くて、“普通の庭常識”とのギャップが激しいのだが……。
どうやらミネの【加護】の力らしい。
“加護”……。
そう言われて生命力溢れる庭をもう一度ぼんやりと眺めた……………………。
「美味しい力なんだな!」
ニッコリ。
何だか自然と笑顔で答えてしまったが、命漲るこの庭は素晴らしいと素直に感じた。
キラキラと光り輝くように潤い実る作物達。
ミネの面倒見の良さが解る生命力の強い作物達。
見慣れぬ庭の形態ではあるが、良い庭だと思ったのだ。
--だが…………。
「!」
--それは他の人と比べたら、小さくて気付かれないほどの微笑み。
でも、少なくとも自分の窮地に救ってくれたミネと言う人物を、恩人として見ているルアンならばその些細な変化に気付く。
挨拶としての笑顔ではない。
とりあえずの笑顔でもない。
助けられてからの少しの時間でも、ミネという人物が人慣れしていない事は気づいていた。
それでもミネは俺の世話を懸命にしてくれたのは充分に伝わってきていた。
……さすがに、目を合わせてくれても自然体に笑う姿はこれまで見れなかったが…………。
--しかし、今。
--ミネが朗らかに微笑んでいた。
--ミネの心が笑っていた。
「……参ったな……ただ、思ったまんまに言っただけだったのだがな……。」
ボソボソ……。
何気なく言った一言だったので、ミネの嬉しそうな反応に少し感じるものがあった。
「なに?ルアン、何か言った?」
「いいや、何でもないよ。」
軽く返事を返しながら、ミネの案内について回る。
ぶっきらぼうな喋り口調の君は、かなり好きらしい黄色い変わった作物の次々と見せてくれる……。
--しかし……。
「安直なネーミングだな……。」
再びミネを刺激する一言を言ってしまったらしく、俺はまたミネを怒らせてしまった。




