ぼっちは穴が空きそうなほど見つめる
「……じぃ~~~~……。」
思わずじぃ、と穴があくほど小麦畑を眺めている。
「……じぃ~~~~……。」
先程から声に出して「じぃ~~~~。」っと言ってみているが、決してミネの頭が可笑しくなったわけではない。
そして、自暴自棄になっているわけでもない。
ミネは後先考えず突っ走りそうな言動は多々あるが、ちゃんと考える事が出来る人間である。
「……じぃ~~~~……。」
現に、口に出して小麦畑を穴があきそうなほど見ているこの様子だけを見れば馬鹿っぽいが、考えている最中なのだ。
「あの時。……そう、あの時はどうだったかな……。」
思い出しているのは3年前程のあの時。
「あまり思い出したくは無いが…………。仕方ない--……。」
気が進まないが思い出すしかない。
そう思い、回想するのは過去の自分。
「確か、この森に辿り着いて数日たっていた頃だな……。」
※※※※※
--3年前。
「うぅ……。」
目が時々ぼやける様になってしまっていた。
この地に辿り着いて数日。
持っていた食べ物は尽きつつある。
しばらく身体も拭けていない為、薄汚れた手足。
身形もボロボロであろう事は確実で、他人から見たら自分は今物凄く汚いだろう……。
まあ、そんな他人がこの深い森に居るとは思えないが……。
手持ちの食料は乾きつつある芋と、果実を搾って使うくらいしか使い道のないレモン。
果肉を食べないソレも、もはやかなり萎びてきている。
完全に枯れているスプラウト何て食べれやしない。
「“レシピ”は関係ないなぁ……。」
乾き、萎びつつあるコレ等の調理方法等解っても……。
「無い物は増えない……。」
食材を調理出来るのは良いことではあるのだが、あと何日持つのか?
「小さく分けて食べても一週間分あるかないか……。」
迷い込んだ森の奥、散々な目にあったがどうやらこの辺りは凶暴な害獣は生息していないらしく、助かったが、それでも身体に疲労が蓄積し、多少の怪我もした。今はお腹も満たされていない為、疲れて長時間の移動は難しいだろう。
それでも、希望は捨てなかった。
生きる為の考えを模索した。
「普通に……生きていいと、思う!」
ミネは過去を思い出し、同時に自分の未来を望み、怒り半分希望半分で、無意味かもしれないと思いながら自分の手首の紋様に“力だけ”集めた。
すると、紋様は光り輝く。
“レシピ”加護を使う時とは違い、半透明のプレートは無い。
ギュンと一気に集めた力は眩しい光を放って----キュッと縮まった。
いや、集束したようだ。
「ん?!?!?!?!」
疲れていた身体にしては、有り得ない程の素っ頓狂な声が出た。
ついでに驚きすぎて、紋様を遠ざけた。
引き離した自分の手が同時に数少ない荷物を叩き飛ばしてしまったが、すぐそこに落ちただけだろうから後で拾えば済む。
大体自分の手首を遠ざけた所で物理的に限界はあるのだ。
叩き飛ばしてもたかがしれている。
「……ほら、靴の近くに飛んだだけ----……へ?!?!」
今ミネは身体の疲れから、木に背を預けて片膝を立てるように座っていた。
当然叩き飛んだ状態の荷物はすぐ近くにあった。
光り輝いた現象は後回しにして、取りあえずそれを拾うか……と一番近くの物に手を伸ばしたのだが………………。
「なんだコレ?」
物凄く見覚えがない。
丁寧に畳まれた紙の小さな包みだった。
この辺に人気はない。
そもそと来た時には見かけていない物。
自分の荷物にはなかった物が、……ある。
「怖い……。」
でも、気になる。
「綺麗すぎるだろ……。」
やたらと綺麗に畳まれていた紙包み。
※※※※※
「アレ、開けたら種だったもんな。しかも、手持ちの枯れてたスプラウトが消えてて。」
種だったから、どうせ蒔いても育つ前に自分は空腹で倒れているだろうと思った。
でも、蒔いた。
「だって、蒔かなきゃ食べられる可能性は0だからな。蒔いときゃ、運が良きゃ食べれる。」
実際ミネは食べられた。
スプラウトは1週間で発芽する。
しかし、なんか急に出てきたあの種は、2日程で食べられた。
恐るべき成長速度だったのだ。




