ぼっちと果物~歓喜パンからの午後~
「♪~♪~♪~~~♪」
すっかり機嫌も良くなったミネは午後も相変わらず鬱蒼しい前髪から蒼玉をキョロキョロとのぞかせて、口笛を吹きながら至極楽しそうに果物を厳選して採取している。
ここは果実を集めた庭の一角。
カラフルで形も様々な多様な作物達。
赤、黄色、オレンジ色、薄い黄色、……………………まあ、当然黄色が多いですよ?何故?それを聞いちゃいますか?
……もちろんレモンが大好きだからですよ。
丸に楕円、沢山粒々の果物……。
--と、言ってもミネ基準の果実認定した作物達なので、中にはハテ?と言うものも混ざっています。
どう見ても、あの木の下辺りにワサワサと育っている作物達はサラダに入っているような葉野菜では?
あまり気になされないで下さい。ここは私の家ですから、自分でさえ解れば場所なんて何となくで良いのです!
「フルーツサラダを作りたい時には完璧な配置だからね!!!」
声を張り上げて得意気に片方の口角が上がる。
「面倒くさがりめッ!」と突っ込まれそう----だが、ぼっちなのでその心配は当然無いのだ。
※※※※※
「さて----。」
本日は甘味を作ろうの日にしようと思う。
上手くいったら沢山作ってタムさんに売れないか頼んでみればいい!
そんな事を思いながら収穫してきた果物達を並べて考える。
「まずはジャムかな?」
作る物を決めるとさっさと行動に移る。
採取したのは、レモも、レんご、レちごだ。
ちなみに、レモもはレモンベースのモモ合成。
レんごとレちごもレモンベースなのだが、いつも通りのネーミングにすると、りんごといちごをそれぞれ合成しているのでどっちもレンゴになってしまう為、レんごとレちごにした。
「♪~♪♪~♪~。」
ご機嫌な鼻歌を奏ながら慣れた手付きで煮立ってクツクツとしている鍋を3つ同時に火にかけている。
焦がさないように順番に混ぜ続ける。
地道で時間も割と掛かる。
だが、ミネはこう言うことは意外に飽きずに続けられる。
むしろ自分の好きなことに妥協出来ないので、やるったらやるのだ。
「美味しい物のためだからな!」
そうして暫くするとジャムが出来上がった。
今は瓶に詰めて蓋を閉めて逆さにして置いてある。
暖かい状態のジャムは瓶の中の空気を膨張させる。
冷めるに従って空気が収縮して蓋をよりキツく閉めてくれる。
そうすることで、空気が入り込んでカビが生えないようにする。
--らしい……。
「誰かが言ってたのを聞いただけだけど、やらないよりやるほうがいいよね?たぶんその通りなのだろう。」
ミネは適度っぽいが、ちゃんと仕上げていく。
「よっし!」
ジャムができた!
瓶詰めにしたジャム達は温度がさめて落ち着くまで放って置けばいい。
ミネの目線は瓶から鍋へと移った。
味見用にとっておいたジャム達が各鍋に極少量ずつ残っている。
用意周到!
いつの間にか、今朝焼いた歓喜パンを手にしており出来立てホヤホヤを試食する気満々だ。
「待てるわけがない!さぁ!!!」
ミネの性格上、冷めてから食べると言う選択肢は無い。もちろん冷めてからも食べるが、それは明日以降の話。
新ジャムなのだから、今!すぐ!食べたいのだ!!!
ミネは歓喜パンを一口だいたいにちぎると、まだ冷め切らぬジャムをひとつずつ食していく。
「んん!美味しい!!!」
どれも美味しい!しかも酸が最初から合成されているので、砂糖だけあれば良かったこのジャム!
何て簡単!
何て美味しい!!
ペロッ。
口元に付いてしまったジャムもしっかりと美味しくいただく。
「--砂糖は貴重だけどね。」
おかわりの歓喜パンを取り出して、更に食べ続けるミネ。意外に鍋に残していたジャムの量は多かったらしい。
「うん、うん、うん、美味しいな。……………………ん?これだと普通にももジャム、りんごジャム、いちごジャムじゃないか?!?!?!」
脳内で爆発が起きたかのように、又は頭に雷が落ちたかのように衝撃が走り抜けました。
はい、気づきました。気づいてしまいました。
ジャムは通常、果肉に、砂糖、そしてレモン汁を加えます。
なので、レモンベースのレモも、レんご、レちごのこのジャム達は…………もも、りんご、いちご味…………。
なので、普通のジャムなのです。
まあ、厳密にはちょっとはレモンの酸味が強く爽やかですが……。
「……。」
「……。」
「……。」
出来上がった喜びと、待ちきれなかった試食タイムで単純に“美味しいジャム”を味わっていました。
“美味しい”のですよ。
自分の作った物だから殊更美味いッ!ってやつなのだ!!!!!
そんな訳で「美味い。」「美味い。」「美味い。」で思考が単純だったのだ。
「……。」
「ま、……まあ、レモン比が高いだけあって通常よりも爽やかな風味は強い(……と思う)から、タムさんには一応相談してみよう……。」
ずらりといっぱいに並んだジャム達を見てとりあえず普通に売ろうと決めた。
「どう見てもひとり分ではないからな……。」
歓喜パンはこの日の朝悲しみの感情に任せて無意識で作り上げた、当初叫んでいる人の顔のようなパンだったやつですね。




