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勇者だから、魔王を倒す。  作者: つぶあん


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3/5

勇者、告命の前夜。

 五歳の誕生日前日。食卓に並ぶのは、俺の好物ばかりだった。

 ブイヤベースに、少し硬めのパン、ローストポークに、ポテトサラダ。その他にも豪華な品々が机を埋め尽くしている。

 本当なら、アルタムのグラスに注がれたワインも楽しみたいのだが、五歳の体に酒は耐えられない。


「セタン。分かっているとは思うが、いよいよ明日だな」

「はい、お父様。明日が楽しみです」

 嘘をついた。明日からこの生活がガラリと変わってしまうのだ。憂鬱が先立つ。

「神殿へは馬車で行く。中には俺やヒティネは入れないから神官殿の案内に従いなさい」

「セタン、告命だけどな、あれものすごく痛いんだぜ」

「こらフェルダ、変な嘘をセタンに吹き込むんじゃありません」

 ヒティネがフェルダを睨む。フェルダは肩をビクつかせた。

「じょ、冗談だって......。別に痛くもなんともないよ。神官様の言うことを聞いていたらすぐ終わるさ」

「俺たちは神殿の前の広場で待っているから、終わったら戻りなさい。明日に備えて、今晩本を読むことはないように」

「分かりましたお父様。お気遣いありがとうございます」

「それにしてももう五歳か。お前は体が弱いから、長く生きられないとも思ったのだが、無事告命を受けられる歳になれて良かった。セタンよ。どのような才覚が欲しいのだ? 」

「人の役に立てるような才覚がいいです」

「セタンったら、本当にまだ五歳なのかしら。フェルダなんて、『きれいなどろだんごつくれるようになりたい』って言ってたのに」

「えぇ。俺そんなこと言ってたの? 」

「あら、覚えてないの? 」

「それに比べてセタンは本当に大人びて......」

 ここらで止めておかなければ後でフェルダが拗ねる。

「そういえばお母様。このブイヤベースはお母様が作ってくれたのですか? 美味しいです」

「そうよ? ありがとう」

 ヒティネの頬が瞬く間に綻んだ。普段の食事はメイドに作らせるのだが、祝い事の時いつも添えられるブイヤベースは、どういうこだわりなのか、ヒティネのお手製だった。

 俺やフェルダにとって、真っ先に思いつくおふくろの味と言うやつだ。


 食事が済み、甘味が出された。これも祝い事の時にしか出ない。いくら裕福な商人とはいえ、この世界では砂糖を容易く入手し使用出来るほど、流通しない。


「誕生日の贈り物は、明日、セタンの才覚が明らかになってから選ぶとしよう」

 去年は贈り物に新しい本を貰ったのだが、そういえば今年は、欲しいものを聞かれなかった。

 「分かりましたお父様。楽しみにしています」


 勇者に相応しい贈り物とは一体何なのだろうか。剣か、あるいは旅に役立つアイテムだろうか。前世の創作物で見てきたファンタジーに自分を重ねて、胸が高なった。


「今日はもう寝なさい。明日に響いては、いけない」

 甘味を食べ終えて一息つくと、アルタムに急かされた。

「分かりました。おやすみなさいお父様、お母様、お兄様」


 朝、メイドに起こされて支度を始めた。

 庭に、馬車が見えた。

 校正していたら、「セタン」を「セダン」と書いている部分を発見しました(訂正済み)。

 僕はスカイラインが好きです。

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