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勇者だから、魔王を倒す。  作者: つぶあん


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勇者、変わった日常の初日。(3)

 中庭で見えた人影は、クリスとフィン、それにフェルダだった。


「え、なんで皆さんがここに!? 」

「セタン様が今日から、王宮にいらっしゃるとハンセンに聞いて来てみましたの! 」


 フィンが無邪気に答える。


「俺はフィンの付き添いだ。それに、勇者の力がどんなものなのか気になったんだ。午後からの訓練も見させてもらう」

「は、はぁ......」


 聞いていない。完全に聞いていない。予想外だ。それに王族と昼食を一緒に摂る、というのに加えて、訓練を見られるというのはプレッシャー以外の何物でもない。しかも、初回だ。

 しかし、それとはまた別に......。


「なんで、お兄様までいるんですか? 」

「えっとな、セタンが王宮に行って、しばらくしたらギリルさんが帰ってきて、セタンがお昼ご飯をお城で食べるって聞いたから、俺も行っていい? って聞いたんだ。そしたら『分かんないけど多分いい』って言ってくれたから! 」

「ギリルさんっていうのは......? 」

「あの御者の人だよ、物理魔法の人! 」


 そうか、あの御者の人はギリルというのか。


「お父様のお手伝いはどうなりましたか? 」

「ちゃんとしたぜ? ギリルさんが、お昼にまた来てくれるまで、母様と一緒にいっぱい文字見てた! すげぇのな、文字自体は分かるのに、なんて書いてあるのか全然わかんない」


 あっけらかんというフェルダに、張っていた気が抜けてしまう。


「あら、フェルダ様? お父様のお手伝いというのは? 」

「うちのお父様、商人してて、セタンとお父様宛の手紙が沢山届いてたから、それの仕分けを手伝ってたんだ! 」


 フィンの質問に、フェルダは自慢げに答える。でもきっと実情は、ヒティネに言葉の意味を教えて貰っていた、という具合なのだろう。


「すみません、アレイさん。急に人数が増えてしまって」

「いえいえ、セタン様に謝られることはありません。それに、三名も四名も、あまり変わりませんから」


 と、言うことは、アレイは昼食にクリスとフィンがやってくるという話を知っていたのか。

 まぁ、そもそも、そういう話でもなければわざわざ中庭に連れ出すなんてことはしなかったのだろう。


 予想外の顔ぶれで進んだ昼食だったが、フィンとクリスとの食事の席に、フェルダが来てくれたのは幸いだった。

 フェルダはともかく、同世代の子どもたちと話すというのは、その話題や、テンション感についていけないことが多い。実際、家の近所でもあまり同世代の友達と言える人はいなかった。

 そして自然と、話す相手は大人が多くなっていた。


「てな具合で、セタンは昔から体が弱かったんですよ! それに本ばっかり読んでたし! 誕生日の贈り物も、二年連続本だしな! 」


 本だしな! と言われても、フェルダのねだるおもちゃや遊び道具では、俺はなかなか楽しめない。


「今年の贈り物も、本だったのですか? 」


 フィンが少し、ワクワクしたような目で聞いてきた。


「はい、告命の次の日、昨日にもらいました。『初めの勇者』の物語を......」

「初めの勇者様のお話......。素敵ですね」

「フィンは、本というか、物語が好きだからな。俺には全然分からん」


 そうか、フィンは読書好きで、クリスは読書が嫌いなのか。それで昨日、王に読書の機会を増やすと言われた時、こうも反応が違ったのか。

 和気あいあいとした、雰囲気で食事は進む。昨日は、互いの両親がいたからこそ、今日の方が一層笑い声に溢れている。


「そういえばフェルダ、それにセタンも! 俺達にはタメ口で話せ! それに呼び方も名前で、呼び捨てでいい! 」

「いえそんな! 王族の方にタメ口などと」

「いいや、これは命令だ。もっとお前たちと仲良くなりたい! 敬語があったら、何となく距離を感じるだろ? フィンもそれでいいか? 」

「もちろんですわ! よろしくお願いしますね? 」


 強引に決められてしまった。


「あっ、それなら! セタン! お前も俺にはタメ口で話せ! 」

「えぇ、兄様まで」

「だって、セタンは貴族なんだろ? で、俺は兄ちゃんだから、これでおあいこだ! 」


 とんでも理論で論破された気がする。


「アレイさん、本当にいいんですか? 兄様はともかく、王族の方にタメ口って......」

「もちろん、公的な場でそのような言葉遣いは困りますが、私的な場面ではよろしいかと。何より、王族の方から、直々のご命令ですので」


 許可が下りてしまった。


「わかった! クリス、フィン! 」


 そして、フェルダは早速馴染んでいる。


「俺も分かったよ。クリス、フィン、それに兄さん」

「あれ? セタンって自分のこと言う時、『僕』じゃなくて『俺』だったの? 」


 フェルダに指摘され、つられてクリスとフィンも笑った。俺は少し恥ずかしかった。


「ではそろそろ。セタン様は午後から訓練が控えておいでですので」


 ひとしきり食べ終えたところで、アレイからお開きにするよう言われた。


「そうですわね! じゃあセタン様! 訓練、楽しみにしていますわ! 」

「俺も楽しみにしている」


 フィンとクリスは、そう言い残すと、メイドたちを連れて行ってしまった。


「兄さんは? これからどうするの? 」

「俺はまた帰って、父様の手伝いの続きだな! 」

「そう。今日は来てくれて助かったよ。ありがとう」

「なにが? 俺はいい昼ごはんが食べれてラッキーだっただけだぜ? 」


 フェルダはやはり気付いていないようだ。

 フェルダがいなければ、クリスやフィンと、こんなにも早く打ち解けられなかっただろう。


「じゃあな、セタン! 訓練頑張れよー! 」


 フェルダも、メイドに連れられて行ってしまった。


「ではセタン様。訓練場へ参りましょう」


 皆がいなくなって、これから訓練が始まることを思い出すと、やはり緊張してきた。

 これから恐らく、俺は初めて、剣を握るのだ。

 がっつり日常回でした。

 僕のイメージでは、セタンたちが食べていた昼食は、豪華めなサンドウィッチとかです。ら

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