勇者やめます。大魔王はじめました。第四話
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勇者やめます。大魔王はじめました。第四話
竜の里の風がツバサとレナーを通り抜ける。人々の談笑や鉄を打つ音、商売文句をたれている声が里が繁盛していることを教えてくれる。
「わぁ!賑やかですね!見てくださいツバサ!人がこんなに!」
人が集まる場所に連れてこられたことがないのか、はたまた市場を見たのが初めてだったのか、レナーは少し興奮気味ツバサを見て言った
「ふふ、楽しそうですね、喜んでもらえて何よりです。ここは里で最も繁盛している市場で門を出るとすぐに目がつくようにしてるのです、なぜかって言うと」
カタンが話そうとすると、竜人の商人が目を輝かせてこっちに向かってくる
「お客さん!どうだいこの瓢箪!お酒がたくさん入るしこの川模様は縁起物としても良いんだよ!」
また別の商人に現れた
「お嬢ちゃん綺麗だねぇ横にいるのは旦那さんかい?ならこの髪飾りなんてどうだい!似合うじゃないか、ほら旦那似合うだろ?1個どうだい?」
「だっ!旦那!?違います!」
レナーの顔が少し紅くなる
「おいおいそんなしけたのより俺の方のほうがよく映えるぞ、ほら、どうだ兄ちゃん!嬢ちゃん似合ってるだろ!」
「お、おう、ああ、まぁ」
俺だって私だってと竜人の商人たちがツバサ達の周りを瞬く間に囲んだ。
「とまあ、こういうふうにたとえ新しく来客が来てもいつでも押し売りできるようにしてるんですねー、まぁ来客なんて滅多に来ませんけど」
カタンが少し困ったように話す
「いいから!こいつらを止めてくれ!おい勝手にリボン入れるな、買うかぁ!おい頭につけようとするなぁ!」
「カタンさんお願いします。皆さんを止めてください、ごめんなさい. 私たちお金持ってないんです、え?お金は要らない?別嬪さん?えーーカタンさーーん!!!」
ツバサとレナーが助けを求めるようにカタンを見る
「ふふ、はいはい、すみません皆さんこの方たちは星神様に用があって来たのです。いじめるのもほどほどに」
カタンがそう言うと商人たちは諦めて帰っていった。諦めた時の商人たちの目はどこか少し残念そうというか、空虚な目をしていたのをツバサは見逃さなかった。
「…はぁ助かった。ありがとうカタン」
「ありがとうございます。カタンさん」
「いえいえ、どういたしまして、星神様の正宮はこの先を暫く歩いた先ですよ、今日は多分人が多くて会えないでしょう、あそこの宿を使ってください。明日の朝お迎えの者を呼びますよ、これどうぞ」
カタンはツバサの手のひらに宿代を渡す
「良いのかこんなに良くしてもらって、さすがに受け取りすぎだと思うが」
カタンの厚意にツバサは申し訳なさそうな顔を少しする。がカタンは目を細めて言う。
「良いんですよ、何十年ぶりのお客人ですしね、ごゆっくりなさってください」
「あ、ありがとうございます!良かったらこれ」
レナーが手元から指輪を取り出して渡した。
「うちの宝物庫から気に入って持ってたやつなんですけど、良かったらこれ売って足しにしてください」
「いやそんな!とんでもない!受け取れませんよ!そんな大事なものしまっておいてください!いただけません」
カタンはレナーに指輪を返す。
「それに子供にもらうほど里は落ちぶれていません、初代魔王様への恩返しだと思ってください」
「そ、そうですか、ありがとうございます。それではお言葉に甘えます。」
レナーは申し訳無さそうに指輪を受け取った
「それでは私はこれで」
カタンが去っていくのを見て
ツバサがニヤニヤしながらレナーに話す
「子どもだってよ、やーいガキー」
「うるさい!」
わぶっとツバサの顎を押しのける。
「なんだ!この野菜はぁ!腐ってんじゃねーか!」
突然大きな声が聞こえた。三人の竜人が一人の緑髪の目隠しをしている竜人に突っかかっていた。
「いてて、そ、そんなはずは…」
「うるせぇ!このクズが!よくこれで売れるなぁ!こんなゴミ俺が捨ててやるよ」
竜人の一人が緑髪の竜人を殴り飛ばすと、布に敷いていた新鮮な野菜たちを根こそぎ持っていった。
「はっ、クズがまともに野菜も作れやしねぇのか、お前みたいのが生きてる理由なんかねーんだから野菜ぐらいちゃんと作れよほら金貨やるから」
そう言って男の一人が緑髪の男に銅貨を渡した。
緑髪の男は痛みに顔を歪めながらも笑顔を作って
「はい!いつもありがとうございます!」
と元気に返事した。
ツバサとレナーは突然の出来事に対応できず唖然と見ていた。
「……ひどい」
レナーが苦しそうな顔でそう言う。
「あぁ、でももっと酷いのは、周りの奴らがあいつを気にも留めないことだ。まるで空気みたいに扱ってやがる」
「お客さん!どうだいこの瓢箪」
「どいつもこいつも鬱陶しいいらん!ほら散った散った」
そう言うと商人はつまらなそうに帰っていく。
レナーとツバサは二人してその緑髪の目隠し竜人のもとに向かった。
「よう、大丈夫か?」
緑髪の男がツバサの声に気付く
「?…ええ大丈夫ですよ、聞かない声ですね、旅人様ですか?こんな所に来るなんて珍しい。」
「あぁそんなとこだ、急に聞いてしまって悪いがその目はどうしたんだ?」
不思議な雰囲気だ。くしゃくしゃの髪に1本三つ編みに編んである角がほかのやつらと明らかに違う鹿のような?それにうっすらだが鎖骨あたりに傷がある。
「あぁこれですか?子供の頃の怪我で見えなくなってしまって」
「あのう大丈夫ですか?さっき殴られていましたが」
レナーが緑髪の男を心配そうに見る
「!…ははっこんなの大丈夫ですよ大丈夫大丈夫!いつものことですので!野菜買っていきますか?」
嘘だ。ただのツバサとレナーの直感だがそう思った。
「あ、あぁどうしようかな」
緑髪の男が売ってる野菜を見る。どれも新鮮で質がよい。特に西紅柿は赤みが強く水分が満ちているのが分かる。間違い無くこれらの野菜たちは新鮮だ。
「いい野菜だな、よく育ってる」
それを聞いた緑髪の男が、ぱぁっと嬉しそうに笑う
「そうですよね!そうでしょ?美味しいそうにできたんですよ!」
「あぁ2つ西紅柿をくれ」
「はい!毎度ありがとうございます!」
ツバサは金貨を2枚渡す。緑髪の男は嬉しそうに何度も頭を下げる
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
買った野菜をレナーにそっと渡し、レナーは少し嬉しそうに頬張った。
「あっ、しまった」
レナーと緑髪の男がキョトンとする
「どうしたんですか?」
「それ、宿代だ…カタンにもらった……」
「えっ!あっ!そっそっかぁ!え、どうしましょう」
レナーが困惑してると緑髪の男が口を開く
「あのう…もしご迷惑でなければ私の家に泊まりますか?」
「良いんですか!?」
「ええ、勿論、西紅柿にそれに金貨2枚は高すぎますよ、お礼させてください」
「すまない、正直助かる。そういえばまだ名前を聞いてなかったな、俺はツバサ、こっちの生真面目そうなのがガキンチョがレナー」
「うるさいです誰がガキですか」
「あんたの名前は」
「私はアビドといいます。家までは少し歩くことと思いますが、ご容赦ください」
今回はすごく悩みました。楽しんでもらえたらいいなー




