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第二章 新しいパーティーの結成⑤

 第二章 新しいパーティーの結成⑤


 俺はみんなと共に冒険者の館に行くと、そこで新しく結成するパーティーの登録手続きをした。


 俺、個人の冒険者ランクがSということもあり、結成されたパーティーの冒険者ランクはBから始まることになった。


 おそらく、いきなりBランクから始まったことには生徒会の力が大きく働いているに違いない。


 ランクの付けられ方には様々な要素が絡むというが、それが公正かどうかは疑わしいところだ。


 でも、今回はそれに助けられているのだから良いことにしておこう。

 

 ちなみに新しいパーティーの名前は【アビシニアン】になった。また猫の品種の名前だが反対する者はいない。

 

 ま、大切なのは名前ではなく、これからこのパーティーが何を成し遂げるかだ。

 

 とりあえず、セティたちの実力を確認したいと思った俺は、いつものように人だかりができている掲示板の前に行った。

 

「これから、セティたちの実力をみるためにモンスターを討伐する仕事を引き受けようと思うんだけど、良いかな?」


 俺はセティたち様子を窺いながらそう言った。


 ちなみにさっきまで一緒だったジャハナッグは自分の店の仕事があると言って姿を消してしまった。

 

 あいつがいてくれると、色んなアドバイスをしてくれるから助かるのだが。

 

「構わないわ。その代わり、アタシたちが怪我をしなくて済むような、モンスターにしてよね」


 セティは腰に女の子でも扱いやすそうな細剣を下げている。


 俺も剣の腕についてはまだ何も聞いてないので、セティの実力は推し量れない。ただ、足運びには、何らかの訓練をしてきたような独特さがある。

 

「分かったよ。一応、聞いておくけどセティたちは回復魔法の類いは使えないのか?」


 俺はアリスの深い胸の傷も直して見せたハンスのことを思い出していた。回復魔法の重要さはあの時、思い知らされたからな。


 ま、セティたちにはあんな傷を負うようなことはさせられないけど。


「アタシなら使えるわよ。もっとも、たいした熟練度じゃないから、酷い怪我だと治せないけど」


 セティの回復魔法には不安を覚えなくもないな。もっとも、回復魔法の効果を確かめるために敢えて怪我をするなんてことはしないけど。


 とにかく、パーティーを結成してからの最初の仕事だし怪我はしたくない。

 

「そうか。セティは他に何か魔法は使えないのか?」


 俺は続けて尋ねる。


「アタシは光属性の攻撃と付与魔法が使えるわ。カロリーヌもけっこう凄い威力の炎属性の魔法が使えるし」


 金髪のセティには光りの魔法も似合っているよな。ま、光りの魔法が似合うという点では、アリスの方が断然、上だけど。


「なるほど」


 俺が頷くと、カロリーヌが溌剌とした顔で口を開く。


「私、炎の魔法だけは誰にも負けない自信があるから。ま、反対に水系の魔法は全然、駄目なんだけどね」


 カロリーヌはオレンジ色の髪を揺らしながら言った。まさか、髪の色で上達させる魔法を選んでいるわけじゃないよな。


「じゃあ、イルザは?」


 俺は微笑んでいるイルザの方を見た。


「あいにくと私は魔法の類いは全く使えないぞ。戦いではこのバスターソードだけが頼りだからな」


 イルザはバスターソードの鞘を手の甲で叩いた。剣を扱う腕でイルザを心配する必要はなさそうだな。


「そっか。まあ、そんな大きな剣を扱えるなら、戦う力としては十分だよ。俺だって、魔法は全然、使えなくてもトップ冒険者の仲間入りをしているし」


 魔法の力がなくても戦えることはソロでの活動もしていた俺の存在が証明している。


「そうだったな。君のような人間がいると、私も剣の力にはまだまだ大きな可能性があると思えるよ」


 イルザは生粋の剣士のような目で言った。


「でも、剣の扱いならアタシだって、それなりのもんよ。アタシって頭は悪いけど、体を動かすのは得意だから」


 セティは剣の柄に指を這わせた。


「だよね。セティは学院が迷宮に飛ばされる前はフェンシング部に入ってたし、目にも留まらぬ早さで突きを繰り出せるから」


 カロリーヌがそう持ち上げるように言った。


「ま、アタシがフェンシング部に入ったのは、同じようにフェンシングをやってたウザイ親の命令だからだけど」


 じゃなきゃ、面倒くさがりのセティが部活動なんてやらないか。


「私も学院が迷宮に飛ばされる前の放課後は、あのガルバンテス先生に剣術を教えて貰っていたな」


 イルザはどこか眩しいものでも見ている顔をする。


「ガルバンテス先生は本当に凄いし、あの人の指導のおかげで、私もこんな重い剣を操ることができるのだから」


 イルザは微苦笑した。


「ま、あのよこしまなギュネウスのように不老の力を得られるヴァルケヌンスの魔剣を狙っていたと言わなかったら嘘になるがね」


 イルザの目が妖しく光った。


「でも、そうなると、この中で一番、頼りないのは俺ってことになるよな。俺も魔法は使えないし、扱う武器は二本のナイフだけだから」


 リードは手にしたナイフをクルクルと回転させる。リードも手先は器用だから、それを何かの技術に生かせないものか。


「ったく、女子たちよりも、戦う力がないなんて我ながら情けなくなるぜ」


 リードは心底、悔しそうに言った。


「なら、戦いとは別のことで役に立ってくれれば良いさ。リードはモンスターの肉の切り分けとかはできないのか」


 俺は幾ばくかの期待を込めて尋ねる。


 肉の切り分けができるとだいぶ助かるんだよな。料理人のギルドに肉を売れば、簡単にお金が手に入るし。


「無理だ。俺って血を見るのは苦手だからな。だから、モンスターを殺したことも一度もないし」


 リードは即答してから、そう力なく言った。


「地図作成は」


 地図の作成にもそれなりの技術が要る。ま、頭脳派とは言いがたい、リードに地図作成は厳しいかもしれないが。


「やってできないことはないだろうが、得意とは言えねぇな。誰かが手取り足取り教えてくれるなら、覚えられるかもしれないが」


 リードは半眼で言った。


「そうか。なら、当面は無理のない戦いをしてくれるだけで良い」


 俺はリードのプライドを傷つけないように言葉を続ける。


「技術ならこれから幾らでも身につけられるし、命を落としてしまうのが、一番、まずいことだからな」


 死は取り返しが付かない失敗だ。でも、逆に言えば、死なない限りどんな失敗でも取り返せるのだ。


 特にこの迷宮では。

 

「分かった。まあ、荷物持ちくらいなら俺でもできるから、迷宮で何か手に入れた時はこき使ってくれて良いぜ」


 なら、手に入れた武器はたくさん持って貰おうかな。男のリードなら、チェルシーのようにへばったりはしないだろう。


「分かった」


 俺はそう返事をすると改まったような顔で、みんなの顔を見回す。


「それでどんなモンスターと戦うの。アタシは考えるのは苦手だし、幾ら掲示板を見ても決められないんだけど」


 確かにろくに仕事をしていない人間にとって、掲示板に貼り出されている仕事の紙の多さは戸惑うものがあるよな。


 ま、そこは経験だ。


「私は可愛らしいスター・ラビットなんか良いと思うけどね。スター・ラビットの肉はとっても美味しいよ」


 カロリーヌが掲示板の隅の方を指さす。


 スター・ラビットの討伐には食料系の仕事としてはかなり高額な六十万ルビィの報酬がかけられていた。

 

 よっぽど旨い肉なんだな。

 

「逃げ足の早さだけしか特筆するべきものがないスター・ラビットでは私たちの実力は計れないのではないか?」


 イルザはそう指摘する。


 確かに重たいバスターソード持っているイルザに、ウサギとの追いかけっこは無理だろうな。

 

「だよね」


 カロリーヌは舌を出して笑った。


「まあ、スター・ラビットの肉の美味しさは私も知っているから、どうしても狩りたいというのなら止めはしないが」


 イルザは項に掛かる黒髪を掻き上げる。


「アタシは疲れるのは嫌だし、スター・ラビットと追いかけっこをするなんてマジで勘弁して欲しいんだけど」


 セティにやる気を起こさせるにはどんな仕事が良いだろうな。いっそのこと、ジャハナッグの店で働かせてみるか。


「えー、スター・ラビットの肉は苦労してでも食べる価値あるのに」


 カロリーヌが不服そうな声を上げる。


「なら、スター・ラビットを狩るのは、あんたたちだけでやりなさいよ。悪いけど、アタシはパスだから」


 セティはドライに言った。これにはカロリーヌもムーと膨れる。


「ま、俺は何でも良いや」


 リードは投げやりに言うと言葉を続ける。


「どうせ、俺のナイフじゃ倒せるモンスターなんて限られてるし、こういう時はディンの裁量に任せるしかない」


 リードは謙虚さを交えながら言った。


「なら、第四階層の迷宮に出で来る中ボスのデュラハンを倒しに行こう」


 俺は声を張り上げる。


「なかなかの強敵らしいけど、嫌な技や魔法は使ってこないと言うし、俺たちも怪我はしないだろ」


 デュラハンの討伐は七十五万シュケムだ。中ボスクラスのモンスターがまだ残っていることにはありがたさを感じる。


 ここ最近、他の冒険者の生徒たちも力を付けてきたせいで、中ボスクラスのモンスターが現れてもすぐに倒されてしまうからな。


 戦いたい敵とは、早めに戦っておくに限る。


「死霊系のモンスターのデュラハンなら光属性の魔法で大きなダメージを与えられるし、良いんじゃないの」


 セティは指先に小さな光りの球を作りだした。その光りの球は青白い光りを迸らせている。


「デュラハンなら炎の魔法も普通に効いてくれるよね。久しぶりにスカッとするような爆炎の魔法を使っちゃおうかな」


 カロリーヌの言葉には俺も少し背中が寒くなったが。


「私のバスターソードなら、デュラハンの鎧も砕けるだろう。デュラハンは剣も振るって来る相手だし、腕が鳴るな」


 イルザも乗り気だった。


「よし。意見も一致したことだし、デュラハンを討伐する仕事を引き受けるぞ」


 俺は力強い声で言った。


「ただし、俺たちはまだパーティーを結成したばかりだから、なるべく慎重な行動を心懸けるように」


 俺はそう念を押すようにみんなに言い聞かせると、仕事を引き受ける手続きをするために受付カウンターの方に歩いて行った。


《第二章⑤ 終了》



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