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第一章 豪傑の魔将⑤

 第一章 豪傑の魔将⑤


 俺は寮の部屋で、図書室から借りた本を読んでいた。リードも特に口を開かずに愛用のナイフを研ぎ石を使って研いでいる。


 この時間帯はどうしても暇になるよな。


 【ラグドール】の部室にいた時は話せる相手がたくさんいたから苦にはならなかったけど。


 俺は【ラグドール】の部室に顔を出してみようかなと思ったがすぐに思い留まる。


 まだ一週間も経っていないというのにもう寂しさに負けるなんて、それではこの先が思いやられる。


 俺が自分を諫めていると、ジャハナッグが窓の外から入り込んで来た。

 

「おい、お前ら魔界からガルバンテスが帰って来たぞ。ガルバンテスのいる修練場には生徒たちが詰めかけてる」


 ジャハナッグは雷鳴が轟くような声で言った。


「ガルバンテス先生は無事に帰って来れたのか?」


 弾かれたように顔を上げたのはリードだった。


「誰のことを言っているんだ?」


 俺は怪訝そうな顔をする。


「お前、知らないのかよ。ガルバンテスと言えば、あの魔王ヴァルストモロを打ち倒した大英雄じゃねぇか」


 リードがジト目で言った。


「それくらい俺も知っているよ。でも、魔王ヴァルストモロが倒されたのは三百年以上も前の話だぞ」


 人々にとっては魔王アルハザークの方がまだ記憶に新しいくらいだ。

 

「そのガルバンテスがどうして学院に帰って来れるんだよ」


 俺の疑問にリードは真面目な顔をする。


「お前、本当に何にも知らないんだな。ま、お前はこの学院の生徒じゃなかったから無理もないが」


 リードは目を垂れさせると言葉を続ける。


「ガルバンテス先生は魔王ヴァルストモロの魂が宿ったヴァルケヌンスの魔剣を所持しているんだ」


 リードは講義でもする口振りで言った。


「あのどんな生き物の命をも吸い取ると言われている呪われた魔剣か」


 相応しい持ち主じゃないと、一分もしない内に命を吸い取られて死んでしまうと聞いている。


 逆にヴァルケヌンスの魔剣で斬り付ければ、その相手の命を吸い取ることもできる。その命は剣の持ち主に注がれるというけど。


「さすがにヴァルケヌンスの魔剣のことくらいは知っていたか。とにかく、ガルバンテス先生はその魔剣の力で不老の体を持っているんだ」


 ウルベリウス院長と似たようなものか。


「だから、百年以上も前から、この学院で剣術を教える教師をしていたんだ。学院が迷宮に飛ばされる前は俺もガルバンテス先生の剣術の授業を受けたんだぜ」


 リードは得意げに言った。


「その教師が魔界から帰ってきたと」


 俺は驚く風でもなく言った。


「さっきからそう言ってるじゃねぇか。とにかく、ヴァルケヌンスの魔剣の力があれば、魔界の瘴気を幾ら吸い込もうと大丈夫だからな」


 魔界の穴に入れば魔界には行ける。


 が、生きて帰って来た人間はいないというので、もし、リードの話が本当なら大変なことだろう。

 

「だから、魔界でも暮らしていけたんだろうよ」


 リードは揚々とした声で言った。


「なら、そのガルバンテス先生とやらに会いに行ってみるか。俺も魔界でどんな生活をしていたかは知りたいからな」


 俺は本を閉じて立ち上がる。


「おう」


 リードもナイフを腰の鞘に収めた。


「俺も行かせて貰うぜ。ガルバンテスはゼラムナート様に友好的な人間じゃないから、ちゃんと監視しないと」


 ジャハナッグもそう言って、俺の肩に止まった。それから、俺たちは寮を出ると、学院の敷地にある木造の建物へと向かう。


 修練場があることは知っていたが、特別なことには使われていないと聞いていたので、今まではさして興味も沸かなかった。

 

 だが、今やその修練場の前にはたくさんの生徒たちが詰めかけていて、俺たちはガルバンテス先生の姿を見ることができなかった。

 

 それを受け、俺は強引に人垣をかき分けると、修練場へと飛び出すようにして足を踏み入れた。

 

 すると、一人の男と目が合ってしまった。

 

「お前はシュルナーグ、か?」


 黒い髪をした三十歳くらいの長身の男が、膝を突いている俺を見下ろしていた。


「はあ」


 俺は男から漂ってくる得体の知れない空気に警戒感を感じた。


「いや、シュルナーグではないな。奴とは体の中を流れるエネルギーの質が違う。だが、その顔を見るに他人の空似とは思えないな」


 男は貫くような視線を俺の顔に向けてきた。


「俺はシュルナーグの孫のディン・ディルオールです」


 俺はこの男がガルバンテス先生だと察し、丁寧な言葉で自己紹介をした。


「そうか。私の名前はガルバンテス。かつて魔王アルハザークと戦った時もシュルナーグに力を貸していた」


 ガルバンテス先生は淀みなく言った。


「爺さんの友達なんですか」


 それなら、ほっとできるけど。


「そんなところだ。まあ、友人と言うよりはライバルと行った方が正鵠を得ているかもしれんな」


 ガルバンテス先生の声には懐かしさが混じっていた。


「奴とは共に切磋琢磨し剣の力を競い合った仲だからな」


 その爺さんから俺は剣術を習ったというわけだ。


「それだけに奴が魔王アルハザークを倒した後、剣の道を極めることを止めてしまったことに失望感を覚えたが」


 ガルバンテス先生は遠い目をして言った。


「そうですか」


 爺さんには他にやることができのだと思う。だから、旅に出ると言って俺の前からも姿を消してしまった。


「君も剣を扱う腕は持っているのだろう。なら、私と手合わせしてみないか。そうすればシュルナーグが君に注ぎ込んだ情熱も分かるというものだ」


 ガルバンテス先生は修練場にあった木刀を握るとそう言った。


「構いませんけど」


 願ってもないことだ。この学院には俺に勝てるような剣の使い手はいないと思っていたからな。


 アルゴルウスではないが、俺も強い相手と戦いたいと思っていた。


「その必要はありませんよ、先生。この少年は確かに剣の腕が立つと聞いています。が、所詮は下賤な冒険者です」


 そう言って進み出て来たのは高等部の三年生の男子生徒だった。サラサラとした金髪が美しいが、その顔は何とも冷たい雰囲気を漂わせていた。


「であれば、その相手をしても得るものは何もないかと」


 男子生徒は何とも失礼なことを言った。


「それを決めるのは私であってお前ではない。だが、そこまで言うからには、ギュネウス。お前がディンの相手をして見せろ」


 ガルバンテス先生は手にした木刀の内の一本を、ギュネウスと呼ばれた男子生徒に手渡す。


「ひょっとしたら、彼はこのヴァルケヌンスの魔剣を託すに相応しい人間かもしれないからな」


 ガルバンテス先生は悠々と笑った。


「何を馬鹿なことを。ヴァルケヌンスの魔剣を受け継ぐことができるのは先生の一番、弟子であるこの俺だけです」


 ギュネウスはそう言い張った。


「なら、その資格を言葉ではなく剣の腕で証明して見せろ。お前なら私がいない間も鍛錬に励んでいたのだろう」


 そう言うと、ガルバンテス先生は俺に木刀を手渡した。


「その通りです」


 ギュネウスと呼ばれた生徒は木刀を手にすると、俺の方をキッとした目で睨み付けた。


 俺としてもギュネウスの態度は腹に据えかねるものがあったので、少しくらいは痛い目に遭わせてろうと思っていた。

 

「おい、話は聞いていただろ。これからお前はこの俺と勝負するわけだが、その前に一つ言っておいてやる」


 ギュネウスは木刀の切っ先を俺の方に向ける。


「この学院で一番、剣の腕が立つのは生徒会長のエリオルドなんかじゃない。ガルバンテス先生の一番、弟子であるこの俺だ」


 ギュネウスの目から殺気にも似た光が放たれる。


「それを良く理解した上で掛かってくるんだな」


 そう言うと、ギュネウスは口先だけでないことが分かるような、一分の隙もない構えを取る。


 確かにあの構えから察するに、ギュネウスの剣の技量は侮れないものがあるだろうな。こんな鋭い剣気を感じたのはこの学院に来てからは初めてだし。


 俺はギュネウスから発せられる空気に肌がビリビリする物を感じながら剣を構えた。そして、一切の手加減をせずに斬りかかる。


 ギュネウスはその斬撃を的確に受けとめる。


 俺は鍔迫り合いに持ち込もうとしたが、ギュネウスは素早く身を引いて切り返すような斬撃を放ってきた。

 

 その洗練された太刀筋を見て、俺もこれは本気にならなければならない相手だと理解した。

 

 俺はギュネウスの斬撃を身を捌いて避けると、目にも留まらぬ早さの突きを放つ。

 

 その突きはギュネウスの喉元を狙っていたが、ギュネウスはその突きを顔を少し傾けるだけで避けてしまった。

 

 その顔には余裕の笑みが張り付いていた。それを見た俺はすぐに笑えなくしてやると息を巻く。

 

 そして、剣を引き戻せない俺にギュネウスは木刀とは言え、食らえば頭の骨が砕かれそうな振り下ろしを繰り出してくる。

 

 それを俺は紙一重のところで避けると、クルリと体を回転させて円を描くような斬撃を放った。

 

 その一撃をギュネウスは後ろに飛び退くことで避けて見せる。俺とギュネウスの間に距離が開いた。

 

「やるじゃないか。まさかこの俺とここまで立ち合えるとは思わなかったよ。だが、それでも俺には適わない」


 ギュネウスの目が炯々と光る。


「それを今から証明してやろう」


 ギュネウスの体がいきなり霞んだ。そう思った時には俺の胸に向かって、神速の突きが放たれていた。


 俺はそれをほとんど反射的に弾き返す。すると、ギュネウスは息も吐かせぬ連撃を俺に叩き込んできた。


 一つ一つの斬撃に押し返せないような勢いがあり、同時に重たくもあった。なので、俺はギュネウスの連撃を捌くだけで精一杯になる。


 こんな風に剣を振るえるのは、剣の道に身を捧げた人間だけだ。

 

 それにギュネウスは高等部の三年生だが、俺は高等部の一年生だ。そこには二年の開きがある。

 

 同じように一流の剣の使い手に師事し、鍛錬に励んできたとすればその二年の差は大きいだろう。

 

 しかも、俺の体はギュネウスと違って成長途中。つまり体ができあがってないのだ。

 

 それでも俺は負けるわけにはいかないと思い、自らの感覚を極限まで研ぎ澄ました。それから、反撃に打って出るようにギュネウスの剣を弾き返す。

 

 俺は今度はこっちの番だと言わんばかりに、残像すら生み出すスピードで、剣を突き出した。

 

 ギュネウスも明らかに焦りが滲んだ顔で、俺の突きを捌いていく。

 

 だが、俺の剣は捌かれる度により強く殺気という名のオーラを纏って、鋭く突き出されるようになる。

 

 そう、俺は自分でも止めることができずに、相手を殺す気で剣を振るっていたのだ。すると、血だらけのラダックの顔が思い浮かぶ。

 

 そして、その行為に嫌悪感を覚えた俺は途中で剣を止める。これにはギュネウスも訝るような顔をした。

 

「なぜ、急に剣を止めた。まさか、俺が押され始めたから手加減する気になったとか言うなよ」


 ギュネウスは忌々しそうな顔をした。


「そんなことは言わない」


 俺もそこまで人の良い人間ではない。


「なら、遠慮せずに斬りかかってこい。俺の力はこんなものじゃないし、余計な手心は無用だ」


 ギュネウスは負けん気の強さを感じさせるように吠えた。が、そんな俺とギュネウスの間にガルバンテス先生が割って入る。


「それくらいにしておけ、二人とも。お前たちの実力は良く分かったし、この勝負は私が預かろう」


 ガルバンテス先生は泰然とした態度で言った。


「でも、先生」


 ギュネウスは狼狽する。


「剣を収めろ、ギュネウス。私がいない間にまた剣の腕を上げたようだが、心の方は全く進歩していないな」


 ガルバンテス先生は諭すように言葉を続ける。


「そんなことでは所有者の命どころか、その心まで貪り食おうとするヴァルケヌンスの魔剣を手にすることなどできんぞ」


 ガルバンテス先生は腰に下げられた大剣の鞘を叩いた。


「分かりました」


 ギュネウスも剣を下ろす。


「ディンも剣の腕は卓越したものがあるが、心の方はまだまだだな。自らの殺気を押さえきれなくなるとは」


 ガルバンテス先生はニヤッと笑った。


「気付いていましたか」


 俺はバツが悪くなる。


「青臭い言葉かもしれんが剣の力は誰かを守るためにある。時には剣を交える相手の命すら守らねばならぬこともあるのだ」


 ガルバンテスは含蓄のある言葉で言うと、更に口を開く。


「そういう意味ではお前たち二人はまだまだだな」


 その言葉には俺も反論できなかった。


「でも、ガルバンテス先生は自分の若さを保つために、ヴァルケヌンスの魔剣を振るってきたんですよね」


 俺は興味からそう尋ねていた。


「貴様、先生を侮辱する気か」


 ギュネウスがたまらず激昂する。


「そういきり立つな、ギュネウス。確かに私は自らの若さを保つために、この剣を振るい続けてきた」


 ガルバンテス先生は静かに続ける。


「だが、それは言うなれば人間が、動物の肉を食らうことと同じなのだ」


 ガルバンテス先生は更に続ける。


「どんなに綺麗事を並べようとも、生き物は他の生き物の命を食らわずに生きることはできぬ」


 その通りだ。


「その真理に背を向けて、誰かを殺すくらいなら、自分が死んだ方がマシだなどと言うことはこの私にもできんよ」


 ガルバンテス先生は苦笑いをした。


「そうですね」


 それが言えるのは聖人だけだ。


「だが、私はもう十分、生きた。だからこそ、この魔剣を受け継ぐに相応しい人間が現れたら、普通に年老いして死ぬつもりだ」


 ガルバンテス先生の目が遠くなる。


「そういう人生も悪くないと思えるほど、私も精神的に老いているのでな」


 精神的な老いは俺には分からない感覚だな。


「そうですか」


 俺は何も言えなくなった。


「ガルバンテス先生はお前のような人間に推し量れるような心は持っていない。もし、それができるとしたら、この俺だけだ」


 ギュネウスが胸を張る。


「へー」


 俺は棒読みのような声を出した。


「とにかく、わたしはこれらウルベリウス院長の元に挨拶をしに行く。お前たちも、これ以上の諍いは起こしてくれるなよ」


 そう言い置くと、ガルバンテス先生は道を開けるようにして退いた生徒たちの間を通って、修練場から出で行った。


 たいした大物ぶりだな。


「お前との決着は必ず付けてやるぞ。その時は殺す気で剣を振るっても、俺には勝てないことを教えてやろう」


 ギュネウスは悪態を吐くように舌を鳴らすと、ガルバンテス先生の後を追うように修練場から出て行った。


 ギュネウスから負のオーラが漂っていたし、いつか命の遣り取りをするような戦いにならなきゃ良いけど。


「ディンって本当に強かったんだな。あんな剣さばきを見たのは初めてだぜ。もちろん、ギュネウスの奴も凄かったが、お前の力にはまだ奥を感じたよ」


 リードの言う通り、俺も全力を出し切ったわけではない。


 もし、ガルバンテス先生が止めなければ、ギュネウスの体に一太刀を浴びせていた自信はあった。

 

「そうか」


 俺も何とか笑みを拵えて見せた。


「ま、だからこそ、トップ冒険者の中に名を連ねてるんだろうが。でも、お前、本当に俺と同じ歳か?」


 リードは胡乱な目で俺を見た。


「当たり前だろ」


 俺は少し気が立ってしまった。


 老けた顔をしているわけではないだろうが、俺はこの学院の上級生とも対等な話し方をしてしまうからな。

 

 だから、十五歳の少年かと疑われることはある。

 

「俺、一生、努力してもお前に勝てるような人間になれる気がしねぇよ。お前みたいな奴のパーティーに入って本当に大丈夫かな」


 リードは不安そうに言った。


「大丈夫だよ。何も俺はお前に無理してアルゴルウスと戦ってくれとまでは言っていない。ただ、指導と育成をしたいだけだ」


 指導の育成という言葉にはリードも嫌な顔をする。


「そうすれば、お前もそれなりの冒険者として活躍できるようになるかもしれないし、生活保護も受けずに済む」


「そう願いたいもんだが」


 リードも今の自分の現状を変えたいと意思はあるのだ。でも、なかなか前に踏み出せないだけで。


 なら、その背中を押してやるのは俺の義務だと思う。そんなことを考えているとジャハナッグが割り込むように口を開く。


「それにしても、ヴァルケヌンスの魔剣から迸る魔力は凄かったな。はっきり言って、アルゴルウス以上の魔力を感じたぞ」


 ジャハナッグは戦いたような顔をしている。


「あの魔力から察するに、魔王ヴァルストモロはあの魔王アルハザークよりもよっぽど恐ろしい存在だったのかもしれないな」


 ジャハナッグはぞっとしないようなことを言った。


「俺もヴァルケヌンスの魔剣の力は見てみたいぜ。噂じゃ、鋼鉄の板すらプリンのように切り裂けるって言うからな」


 リードが興味を覗かせるように言った。

 

「それはさすがに誇張じゃないのか。どんな名剣でも鋼鉄は切り裂けないぞ。まあ、魔法の力が付与されていれば話は違うのかもしれないけど」


 俺は怪しむように言ってから、口を開く。


「とにかく、ガルバンテス先生がいればアルゴルウスも倒せるかもしれないな。現にヴァルストモロには勝てたんだから、アルゴルウスに勝ててもおかしくはないし」


 どんな形でヴァルストモロに打ち勝ったのかは分からないが。


「ああ」


 リードも明るい顔で頷いた。


「だが、これまでの流れからして、そんなに簡単に事が運ぶとは思えないんだけどな」


 ジャハナッグは石を投じるように言うと言葉を続ける。


「ま、そうは言ってもガルバンテスがこの学院の中で一番、戦う力があるのは確かなんだろうが」


 ジャハナッグは思索するように言った。ま、ジャハナッグもガルバンテス先生の力は過小評価していないようだった。


「そうか。それと、すっかり聞きそびれちまったけど、次に先生に会った時は魔界でどんな生活をしていたのかはちゃんと聞いておかないとな」


 リードは頭の後ろで手を組みながら言葉を続ける。


「それが一番、知りたいことだし」


 魔界でどんな生活をしていたかを聞かなかったのはいかにも抜けてたよな。


 ジャハナッグは悪魔のくせに魔界に行ったことがないから、魔界でどういう生活を強いられるかは分からないと言うし。

 

 でも、魔界の人間の話では、魔界もこちらの世界とそう大差はないようだった。太陽の光もちゃんとあるから、いつでも暗いってわけじゃないし。

 

 いずれにせよ、俺もガルバンテス先生とはもっとゆっくりと話す機会を持ちたいと思っていた。

 

 だけど、何だかあのギュネウスに邪魔されそうだな。ま、あんないけ好かない奴に気兼ねなんてする必要なんてないが。

 

「そうだな」


 俺は希望の光が見えてきたような顔で頷いた。


 その後、俺とリードは修練場から出ると、その足で浴場へと向かった。そして、俺はギュネウスとの戦いで掻いた汗を流したのだった。


《第一章⑤ 終了 第二章に続く》




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