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第一章 ホワイト・ナイツの面子④

 第一章 ホワイト・ナイツの面子④


 俺たちはモンスターとは会わずに迷宮の九十五階まで来ていた。


 冒険者の館で聞いた話だと、ガンティアラスが倒されても、迷宮を徘徊するモンスターに特に変わった様子はないらしい。


 一時期は、姿を消したリザードマンたちもまた現れるようになったと聞いているからな。


 ま、もしモンスターの数が減ったりしたら、それはそれで困ることになる。俺たちはモンスターの肉を食料としているわけだから。


 モンスターの意味のない乱獲は控えた方が良いだろうな。


 ちなみに、この階の南側にドレイクの住処がある。運が悪くなければドレイクも昼間は住処で寝ているはずだ。

 

 であれば、寝込みを襲うと言うこともできそうだが、それだとレイシアとモリエールの実力は確かめられない。

 

 やはり、真っ向からぶつからなければならない相手と言えるだろう。ま、何かあってもこっちは七人もいるんだから負けることはまずない。

 

 そして、俺たちの期待した通り、ドレイクは住処である部屋にいた。しかも、ちゃんと起きていて、目もパッチリと開けていた。

 

 そんなドレイクは羽のないドラゴンと言って良く、かなりの迫力があった。もちろん、あのガンティアラスとは比べるべくもないが。

 

「ガンティアラスより、一回り小さいがそれでもかなり手強そうだな。本当に戦うのは、お前ら二人だけで良いのか?」


 俺は再度、確認する。


「構わんよ。どのように戦っても負ける相手ではないし、手出しは無用だ」


 モリエールは腰に下げられている鞘から剣を抜いた。その刀身の輝きを見るに上等な剣であることは間違いなさそうだな。


「ええ。むしろ、あなたたちにドレイクの周りをウロチョロされたら、私も強力な魔法が使えなくて困るわ」


 レイシアはチェックのスカートをヒラヒラさせながらアリスが持っていたものと同じ杖を構える。


「なら、お手並みを拝見させて貰おうか」


 俺がそう言うと、二人は軽い足取りでドレイクのいる方に歩いて行く。


 すると、ドレイクも身を起こして、肉食獣が獲物を狙うときのように、ゆっくりと足を踏み出す。

 

「さてと、僕の華麗な剣さばき、特とご覧に入れよう」


 そう言うと、モリエールは吹き抜ける風のような早さで、ドレイクに向かって駆ける。


 それを見たドレイクも爪を振り上げて、攻撃を仕掛けようとする。瞬く間にモリエールとドレイクの距離が縮まった。


 そして、お互いに攻撃を当てられる距離にまで近づく。


 それを受け、ドレイクは勢い良く、鋭い爪を振り下ろす。それはドレイクの間合いに躊躇なく踏み込んだモリエールの体を切り裂こうと迫った。

 が、モリエールは鮮やかに身を捌いて、ドレイクの爪による一撃を避けた。


 確かに、鋭い爪の振り下ろしだが、ガンティアラスの早さには到底、適わないな。ガンティアラスの爪は本当に死の風を纏っていたから。

 

 それから、モリエールは反撃するようにすかさず、剣を一閃させる。

 

 その目にも留まらない早さの一撃は、ドレイクの腕をあっさりと切断した。宙を舞った腕はクルクルと回転して床に落ちる。

 

 少し遅れてドレイクはギャーッと絶叫した。

 

 良い太刀筋だし、モリエールも口だけの男じゃなかったか。機会があればだけど、俺もモリエールとは剣を交えてみたいな。

 

「やはり、ドレイクなど僕の敵ではないな。僕の実力なら、あのガンティアラスだって倒せたに違いない」


 そう豪語すると、モリエールはドレイクの懐に入り込み、息も吐かせぬ連撃を叩き込む。ドレイクの胸板が何度も切り裂かれた。


 その度に血飛沫が舞う。


 怒り心頭に発したドレイクは切断されていない方の腕で、がむしゃらに爪を振り下ろす。だが、華麗にステップを刻むモリエールには掠りもしなかった。


「もっと必死に足掻いてくれたまえ。でないと、僕も見せ場を作れないからな」


 そう言って、モリエールは不敵な笑みを浮かべると、綺麗な弧を描いた斬撃を繰り出す。その斬撃はドレイクの爪を一度に三つも砕いて見せた。

 

 この技には俺も唸らせられる。

 

 やはり、モリエールはあの力だけのラダックとは違い、技を磨くような修練も積んでいたようだな。

 

 どこか気品のある剣さばきは、貴族のそれだ。おそらく、俺のように幼い頃から剣術を学んでいたのだろう。

 

 貴族の子供が剣術を学ぶのは別におかしいことではないからな。むしろ、平民の方が日々の生活に追われて、剣術を学ぶことができないくらいだし。

 

 一方、爪を失ったドレイクは目を血走らせると、鋭い牙を剥き出しにしてモリエールにかぶり付こうとした。

 

 が、モリエールは余裕を持って後ろへと跳躍し、ドレイクと十分な距離を取ることに成功する。

 

 すると、今度は光りの球がモリエールの背後から空を切り裂くようにして飛来した。

 

 その光りの球はドレイクにぶつかると目も眩むような光りを撒き散らせながら大爆発する。その際、大量のエネルギーが一気に発散される。

 

 と、同時にエネルギーの奔流に耐えきれなくなったドレイクの体はバラバラに弾け飛んでしまった。

 

 血とグロテスクな肉の塊が周囲に降り注ぐ。

 

 こんな凄まじい爆発を見たのは初めてだな。

 

 やはり、レイシアの魔法の力はアリスを確実に上回っている。でかい口を叩くだけのことはあったということか。

 

 そして、辺りは静かになった。

 

「ま、こんなものでしょ。私たちの実力を披露するには、ドレイクはちょっと弱すぎる相手だったけど」


 掌からバチバチとした光りを迸らせているレイシアが肩を竦める。あんな強力な魔法を使ったというのにレイシアの息は少しも乱れていなかった。


「同感だ。とはいえ、君たちも僕たちの実力が本物だということはちゃんと確認できたはずだろ?」


 モリエールが剣を鞘に収めると、俺に向かってニヤッと笑った。


「まあな。二人とも凄かったし、さすがあのエリオルド会長が二人の実力に太鼓判を押しただけのことはある」


 ドレイクがもう少し強ければ、二人の実力をもっと良く確かめられたんだけどな。


「だろう。会長の下す指示に間違いはない。ま、君たちも第四階層に行く時は大船に乗った気持ちでいたまえ」


 モリエールの過剰なまでの自信がどこまでも続けば良いが。こういうタイプの人間は何かの拍子に自信を失うと、なかなか立ち直れないからな。


「じゃあ、学院に戻るわよ、みんな。明日になったら、私たちは第四階層に行くことになってるし、何か文句があるなら今の内に言ってよね」


 レイシアは肩に羽織っているケープの裾を払うと更に言葉を続ける。


「それと私の力は確かめられたんだから、ディンにはちゃんと私とデートして貰うわよ。もし、逃げたりしたら承知しないんだから」


 レイシアは俺に向かって釘を刺すように言った。


《第一章④ 終了》



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