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エピローグ①

 エピローグ①


 竜王ガンティアラスが討伐されたという事実は、その日の内に学院中の人間に知れ渡ることになった。


 結果、たくさんの生徒が【ラグドール】の部室を訪れ、俺たちに感謝の言葉を伝えた。

 中には感極まって涙を流す生徒もいたくらいだからな。

 

 今の俺たちはちょっとしたヒーローだ。

 

 もし、ガンティアラスの討伐が仕事として依頼されていたら、【ラグドール】の冒険者ランクもSに届いていたことだろう。

 

 冒険者ランキングでも一位になれたかもしれない。

 

 もちろん、全ての生徒が俺たちの活躍を喜んでいるわけではないことは俺もつぶさに感じ取っていたけど。

 

 ま、俺にとっては、他人からの評価なんてどうでも良かった。

 

 幾ら冒険者ランクが上がって、学院での暮らしや待遇が良くなっても地上に戻れなければ意味がないわけだし。

 

 そして、そのためにはまだまだ恐ろしい敵と戦わなければならないのだ。それを考えれば、俺たちも喜んでばかりもいられないだろう。

 

 フィズが死んだという重い事実もあるしな。

 

 とはいえ、みんなの心に希望を与えられたことは俺も素直に嬉しかった。

 

 みんなの笑顔を見ていると、俺も爺さんのような勇者になりたいという目標に一歩、近づけた気がするし。

 

 なので、みんなが俺たちに寄せる期待はこれから先も裏切りたくなかった。

 

「起きろよ、ディン。いつまで、そんなだらしのない格好で寝てるんだよ」


 俺が目を開けると、視線の先にはカイルの顔があった。

 

「何だ、カイルか。昨日はワインを飲み過ぎたし、頭がズキズキするからもう少し寝かせてくれよ」


 俺は寝返りを打つ。

 

「そうはいかねぇよ。今日は昼の十二時から学院が主催するパーティーがあるんだぞ。二日酔いで忘れちまったのか」


 カイルの言葉に俺も目をパッチリとさせる。

 

「そうだった」


 俺は何度も瞬きをする。

 

 部室にある水時計は十一時四十分を指し示していた。

 

「ああ。今日のパーティーの主役は竜王ガンティアラスを倒した俺たちなんだ。俺たちがパーティーに行かないわけにはいかねぇだろうが」


 カイルは腰に手を当てて、嘆息した。

 

「分かってるよ」


 俺は急いで寝袋から出ると、大きく伸びをする。

 

「ま、昨日のディンは本当にたくさんワインを飲んでいたからね。それだけフィズが死んだことが辛かったんだろうけど」


 頭のリボンを結びながら言ったのはチェルシーだ。

 

「もう大丈夫だよ。フィズのことは吹っ切れた」


 嘘じゃない。

 

「そう?なら良いんだけどね。アタシも一本、五十万ルビィもする百年物のワインを飲んだら、悲しさも吹き飛んじゃったよ」


 チェルシーはいつものツインテールの髪型を作り上げると言葉を続ける。

 

「やっぱり、ワインの力は偉大だね。でも、あんまり美味しいお酒ばかり飲んでると、アルコール中毒になりそうで怖いけど」


 まったくだ。

 

「ところで、ハンスとアリスはどこに行ったんだ?」


 現在、部室にいるのはカイルとチェルシーだけだ。

 

「ハンスとアリスなら、一足、先に運動館に行ってるよ。あいつらは真面目だから、パーティーの準備も手伝うって言ってたぜ」


 カイルの言葉を聞き、俺は今までグーグー寝ていたことが恥ずかしく思えてきた。

 

「なら、俺たちも急がないと。パーティーで主役が遅刻するっていうのも締まらない話だからな」


 俺は疲れを取るように肩をぐるりと回す。

 

「良く分かってるじゃねぇか。だったら、いつまでもノンビリしてないで、さっさと支度をして部室を出るぞ」


 カイルは長机の上にあったコップの水を呷るようにして飲んだ。

 

「ああ」


 俺は今、着ている服がヨレヨレになっているのを見る。それから、どこに出ても恥ずかしくないような服を買っておけば良かったと思った。


「でも、今のディンは寝癖とか酷いから、髪型はしっかり整えていきなよ。畏まるようなパーティーじゃないと思うけど、一応、身なりはきっちりとしておかなきゃ」


 そう言い聞かせるチェルシーはいつもと雰囲気が違った。何となく、いつもより活発さが押さえられ、清楚で大人びた印象を受ける。


 やっぱり、パーティーの席に出ると言うことで、身なりにも相当、気を遣ったのだろう。


「おっ、運動館のある方にたくさんの生徒が歩いていくぜ。しかも、みんな揃って制服を着てやがる」


 カイルは窓から顔を出しながら言った。


「こんなことなら、ディンのための制服も用意しておけば良かったね。ディンはこの学院の生徒じゃないから制服を持ってないってことをすっかり忘れてたよ」


 チェルシーは舌を出した。


 この学院のブレザーの制服はなかなかセンスが良いからな。俺もできれば着てみたいと思っていた。

 

「今更、そんなことを言ってもしょうがねぇだろ。一人、私服で恥ずかしい思いをするかもしれねぇが、ディンには耐えて貰うしかねぇよ」


 カイルの言葉に俺も不安になってしまった。


 その後、身なりを整えた俺たち三人は部室を出ると、ぞろぞろと廊下を歩く生徒たちの流れに乗るように運動館へと向かった。


《エピローグ① 終了》



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