第三章 ドラゴンを打ち倒す武器⑨
第三章 ドラゴンを打ち倒す武器⑨
俺たちは学院に戻り、意気揚々と冒険者の館に行く。それから、バジリスクを倒したことを報告する。
受付の女の子は、バジリスクが討伐されたことを発表し、掲示板にあったランキング表に【ラグドール】の名前を書き込む。
【ラグドール】はパーティーの冒険者ランキングで念願の九位に入った。
そして、パーティーの冒険者ランクもAになり、俺個人のランクも堂々のAになった。
つまり、俺はあっという間にトップ冒険者の仲間入りをしてしまったわけだ。さすがに感無量などとは思わないけど誇らしいことに変わりはない。
すると、いきなり俺たちの周りで割れんばかりの拍手が巻き起こる。これには俺も目を白黒させてしまった。
でも、冒険者の館にいた生徒たちはみんな久しぶりの太陽でも目にしたような清々しい笑みを浮かべている。
みんな今まで言葉にこそしなかったが、俺たちのことをちゃんと応援してくれていたみたいだな。
これには俺も胸に熱い物が込み上げてくるのを感じる。
その一方で、コソコソするような生徒たちもいて「すげー。ギルドに所属していないパーティーが十位以内に入れたことなんて、ここずっとなかったことだろ」「ディンとかいう冒険者の実力は本物みたいだな」「これが本業の冒険者の力か。だが、たった一人の加入でこうも変わるものなのか」「そんなことはどうでも良い。今日の夜はギルド会議をするぞ。このままだと、俺たちの地位が危うくなる」などという話が俺の耳に届いた。
俺はあくまで一枚岩になることができない生徒たちに滑稽なものを感じる。
ま、冒険者のスタンスは人それぞれだ。無理に足並みを揃えさせても反感を買うだけで良いことはない。
とはいえ、これでオリハルコンの原石は貰えるし、今はガンティアラスさえ倒せれば学院を取り巻く状況も変わると信じるしかない。
「何か、あっという間に登り詰めちゃったね。やっぱり、ディン君は私たちにとってのヒーローだよ」
アリスは輝くような笑顔で言った。
「俺一人の力じゃない。みんなだって凄い力を秘めていたんだ。ただ、今まではその力を発揮する機会がなかっただけで」
みんなの力が一つに合わさったからこそ、ここまで来れたのだと思う。
「そうだね。勇気を出して、自分の力を発揮してみようと思えば、できないことなんて何もないのかもしれない」
アリスは含蓄のあることを言った。
その言葉には俺の胸にも様々な感情が去来する。
「そう信じたいところだけど、本当にそうなのかどうかはガンティアラスを倒してみなきゃ分からないんじゃない?」
混ぜ返したのはチェルシーだ。
「思い一つで倒せるほど、ガンティアラスは甘い相手じゃないよ。現にガンティアラスに心を折られて立ち直れなくなった生徒たちはたくさんいるからね」
チェルシーの言葉は俺の心に重くのし掛かった。
ガンティアラスは今までのモンスターとは別次元の相手。
それは分かっているつもりだったが、気分が高揚していた俺は今一つその実感が沸かなかった。
「ま、自分の力を信じることも大切だけど、それと同じくらい自分の限界を見極めることも大切だということだ」
ハンスは正論を口にした。
「その見極めに失敗したのが、犠牲になった生徒たちかもしれねぇな。俺たちはそいつらの二の舞にはならねぇと思いたいが」
カイルは胸の前で何かを覚悟するように握り拳を作った。それを見て、俺もみんなを勇気づけるような言葉を投げかける。
「そうだな。でも、人間は努力しだいで、どんな障害も乗り越えることができるんだ。だからこそ、人間の力も捨てたもんじゃないさ」
そう言って、俺は爽やかに笑った。
いつもは現実を見ている俺だけど、こういう時は理想論を口にするんだよな。
人間は現実と理想の狭間で絶えず苦しむ生き物だ。
でも、その苦しみなくして人間が成長することはないって、爺さんも昔、言っていた。
その言葉の意味を今になってひしひしと感じている。
「何度も言うようだけど、俺はこれからもみんなと共に戦い続けるつもりだ。だから、できればみんなには最後まで俺に付いてきて欲しい」
俺はみんなの心に訴えかけるように言った。
たぶん、途中で悩んだり立ち止まったりすることはあるだろう。でも、みんながいれば乗り越えられる。
青臭いかもしれないけど、俺はそう信じている。
「そういう格好良い台詞は僕が言いたかったんだけどね。一応、僕が【ラグドール】のリーダーってことになってるから」
ハンスがニヤニヤしながら、俺の脇腹を肘で突っついた。
「そうだったな。じゃあ、そのお株を奪うわけにはいかないし、これからも俺たちを引っ張って行ってくれよな、ハンス」
俺はお返しとばかりにハンスの肩をバシバシと叩いた。
「任せてくれ」
ハンスは少し痛そうな顔をしながらも照れ臭そうに笑った。
《第三章⑨ 終了》




