第三章 ドラゴンを打ち倒す武器③
第三章 ドラゴンを打ち倒す武器③
オリハルコンの原石を譲り渡す条件を提示された俺たちは、善は急げと言わんばかりに冒険者の館に向かった。
ウルベリウス院長の気が変わったり、他の冒険者に横取りされない内に冒険者ランキングを十位以内にまで上げないと。
ハンスたちの反応を見るにおそらくそれはとても難しいことなのだろう。でも、やってできないことはないという根拠のない自信はあった。
ま、相手は所詮、学生の集団だからな。なら、本業の冒険者である俺が遅れを取るわけにはいかないだろう。
チェルシーの話では俺も学院の生徒たちから、注目され始めているみたいだからな。
何にせよ、今はこの自信が打ち砕かれないことを祈るしかない。
俺は手に汗握る物を感じながら、ハンスたちと共に冒険者の館の中に入る。
それから、ランキングを上げるためにどんな仕事を引き受けるべきか、掲示板を眺めながら話し合いを始めた。
「手っ取り早くランキングを上げたければ、討伐の依頼があるモンスターを倒すのが一番なんだよ」
ハンスは掲示板の前で思案するような顔をした。
「なら、そうしよう」
迷うことでもない。モンスターを倒すだけでランキングが上がるなら、余計なことは考えずに済むからな。
それなら、俺としても望むところだ。
「そう急がないでくれ。目玉としてはやっぱりミノタウロスだけど、いきなりこいつと戦うのは僕もさすがに不安を覚える」
それはハンスだけじゃない。
俺だって不安が全くないと言ったら嘘になるからな。でも、ドラゴンと戦うからには、ミノタウロスは避けられる敵だとも思えない。
「ミノタウロスはリザードマン・ロードとは比べものにならない強敵だからね。死人こそ出てないけど、ミノタウロスに痛い目に遭わされた冒険者はたくさんいるし」
チェルシーが半眼で言った。その言葉を補足するようにカイルも口を開く。
「ただ、ミノタウロスはまだ誰も討伐できてないモンスターなんだよ。だから、もし俺たちが討伐できたら、冒険者ランキングも大きく跳ね上がるだろうな」
カイルの言葉を聞いた俺は、ミノタウロスは力試しには良い相手になりそうだなと思った。
「それに、ミノタウロスが塞いでいる部屋が開放されれば、上の階へと続く道のショートカットができるようになるんだよね」
アリスはミノタウロスの討伐を依頼する貼り紙を見る。報酬が百五十万ルビィって言うのは凄いよな。
「上の階に行く冒険者にとってはありがたい話ということか」
みんなの役には立ちたいところだな。俺という存在を受け入れてくれた学院には感謝しているし。
「そうは言っても、今の僕たちの冒険者ランクと実績じゃ、ミノタウロスの討伐の仕事は引き受けさせて貰えない」
ハンスの言葉に、俺は水を掛けられたような顔をする。
「冒険者ランクっていう壁があったか」
俺も気持ちが流行るあまりそのことを念頭に置いていなかった。アリスもハンスの言葉を継ぐように口を開く。
「そういうこと。とりあえずミノタウロスよりも、少し弱いくらいのモンスターと戦って見ようよ。徐々にステップアップしていくことが大切だと思うし」
アリスは別の方向に視線を向ける。
「具体的にはどんなモンスターが良いんだ?」
俺も尋ねてばっかりいるな。いい加減、少しは自分の頭を使わないと、もしもの時に的確な判断ができなくなる。
「討伐の依頼があるモンスターの中だと、オーガ・ロードなんかが良いんじゃねぇのか」
そう言葉を差し挟んだのはカイルだ。
「報酬も六十万ルビィと大金だし、条件もリザードマン・ロードの時と同じだから、ギリギリで引き受けられるぜ」
カイルは受付の女の子の方を見た。
「だけど、報酬が高い分、リザードマン・ロードよりは手強ってことだろ?」
普通のオーガのタフネスぶりは俺も目の当たりにしたし。
「でも、オーガ・ロードは手下なんか引き連れてないから、リザードマン・ロードの時よりも戦い易いんだよ」
チェルシーは腕を組みながら説明する。
「だから、リザードマン・ロードの時と引き受けられる条件が変わらないわけだし」
幾らオーガ・ロードが強くても五対一の戦いなら十分、勝ち目はあるな。
「なら戦わない理由はないな」
俺は血気を感じさせるように言った。
それから、俺たちは話すのを止めて揃ってハンスの方を見る。みんなリーダーであるハンスの決定に従うつもりだった。
そして、みんなの視線を受けとめるハンスも顔の表情を引き締めた。
「そうだな。なら、二日酔いも完全に抜けたことだし、昼食を食べたらオーガ・ロードの討伐に向かおう」
ハンスが発奮するように言うと、俺たちは嬉しそうな顔で冒険者の館を出て、食堂へと向かった。
《第三章③ 終了》




