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第9話 朝ごはん。

「アリシア、このワンピースの着方がわからない」


掃除をしていたら、私を呼ぶ声がしたので、箒を置いて先生の部屋に向かう。先生は先日ゴードンさんが買ってきてくれた新しいワンピースに袖を通していた。チョコレートブラウンの上品な冬用のワンピース。


「先生、それ、後ろボタンです。身ごろが逆です」

「そうか…どうも着にくいと思った」


もぞもぞとせっかく通した腕を抜いている。先生はものすごく上品な絹のランジェリーとかをつけているのかと最初のうちは思っていたが、中はいたって普通の長袖の肌着。寒がりだから。

…冬になるとスカートではさすがに寒いのか、宿のばあ様が編んでくれたグレーのタイツを履いている。今度のクリスマスに私も先生にタイツを編んであげよう、と思った。何色がいいかな?暖かそうな黄色とか?染色していない生成りもよさそうだ。


手伝って脱がせて、もう一度袖を通してもらって、後ろのボタンを留めていく。

スタンドカラーのワンピースがことのほか似合う。

寒がりな先生のために、クローゼットからグリーンのカーディガンを取って来て羽織らせる。


「ついでに髪も梳きましょう。今日はどうしますか?」

「あ?いつものでいい」


背の高い先生に椅子に座ってもらって、髪を梳く。着替えが終わったのでもう眼鏡をかけて本を読みだしていた。ゴードンさんが背負ってくるリュックには何冊かいつも本が入っている。この前は私も紅茶の大きな缶を頂いた。なかなかいい茶葉だった。


先生のサラサラな長い銀髪を何度か梳いて、いつものように一本の三つ編みに編む。

ワンピースが包まれていた包装紙に巻かれていたグリーンのリボンがあったので、一緒に編みこんでいく。素敵!

先生は毎朝ひげは剃るが、化粧はしていない。元々の造形が美しい人は、下手に化粧なんかしなくても、他人の目を引くような美しさがある。平凡な顔の私としては実に羨ましい。


クローゼットには何着かワンピースやスカートが入っているが、そのほとんどがゴードンさんからのプレゼントらしい。うんうん。二人が愛し合っているなら、性別は問題ないに違いない。それは二人の問題だ。

ゴードンさんの話では、二人は4年近く同棲していたらしいし。二人で街を歩くために、先生は女装しているのかしら?いつか聞いてみたいような…いや、そっとしておこう。


「はい。出来ました。朝食はダイニングでいいですか?部屋に運びますか?」

「寒いから、ダイニングに行く」

「用意が出来たらお呼びしますね」

「うん」


ドアは開けてある。


この山小屋には大きな暖炉がダイニングに一つあるだけ。元々小さな家なので、各部屋のドアを開けて置きさえすれば、ほのかに暖かくなる。まあ、3部屋しかないけど。


先生の住んでいる部屋が一番大きいが、大きな机に書きかけの原稿が散らばり、足元は資料で足の踏み場もないほど。(本棚は廊下まであふれ出している)そこにベッド。

私が先生の原稿を清書するのは、食後のダイニングテーブルだ。帳簿もここで付けている。


先生が来る前に、暖炉に薪を足す。

いつもと同じ、トーストとベーコンに目玉焼き。豆の煮たやつ。キノコのソテー。そこに紅茶。昨日の残りの野菜スープも温め直した。

極寒の食糧庫に、夏に作っておいたラズベリーのジャムを取りに行く。牧場から分けてもらったバターもひと瓶持ってきた。

今度市場に行ったら、リンゴを買い込んで冬が越せるくらい沢山ジャムを作ろう。


「先生、ご飯ですよ!」





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