第10話 初冬の昼食。
11月にしては珍しく朝から天気がいい。
アリシアは先生が寒いというので、押し入れの奥から毛布をもう一枚出して、先生の部屋の前のデッキに広げて日に当てる。
海から吹き上げる風は冷たいが、お日様はありがたいもんだ。
先生はここのところ<男装>して麓の村から薪を運んでいる。今日も朝から出かけて行った。午前中のうちに3往復する。
先生が蒔運びをしている間、アリシアは小屋の裏から木材を運び出して、玄関に風よけをつける。波待亭の御主人に昨年組み立て方を聞いたので、慎重に組み立てていく。と、言っても大きな板戸を斜めに設置して動かないように固定するだけだが。
それが終わると、玄関のドアの内側に古い毛布を切って作ったカーテンをつける。隙間風が吹き込まないように。これは宿のばあ様に聞いた。
作業が終わる頃、3回目の薪を背負子に積んで、両脇にも抱えて先生が坂道を上ってくるのが見えた。
勝手口の出口の脇に薪を積むのを手伝う。
手を洗って、お昼ご飯。
朝のうちにサンドウィッチを作っておいたのを、デッキで食べる。冬場の日光は貴重だから。毛布をついでに裏返す。
蒸した鶏肉ときゅうりの酢漬けのやつと、卵のサンド。そこに紅茶。
小麦粉は冬が越せる分を昨日配達してもらった。ジャガイモも豆も玉ねぎも人参もある。カボチャは早めに食べてしまおう。きゅうりの瓶詰や缶詰、ブロックのベーコンも下がっている。塩漬けのお魚、肉。バターに油。家の食糧庫はパンパンになった。
「あとはなんですかね?いる物があればメモしておいてくださいね、先生」
「うん」
短く返事を返して、先生がサンドウィッチを美味しそうに平らげた。
紅茶を入れ直して、並んでぼんやりと景色を眺めた。岬には牧場の牛やヤギが、最後に残った黄色くなりかけた草を食んでいるのが見えた。
空気が澄んでいるからだろうか、どこまでも見える気がする。




