第16話 春。
長い静かな冬の間、晴れ間があれば村の雑貨屋まで散歩がてら買い物に降りたり、肉屋に寄ったり、港で魚を買ったり…。波待亭まで焼いたお菓子を届けに行ったりもしたが、ほとんどは家の中で過ごした。お客様はほとんど来ない。
たまに見晴らし場までの手すりを点検するついでに宿の主人が立ち寄って、先生へ届いた手紙や卵を届けてくれたりした。
クリスマスには先生に黄色のタイツをプレゼントして、1月は生成りのタイツを編んだ。部屋の中はカーテンを柔らかなクリーム色にしたので、見た目にも少し暖かく見える。
去年の…ここにきて初めての冬はお互いに遠慮があったのでもっと静かだった。先生を暖炉の前で背もたれに使うことも思いつかなかったし。
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アリシアが客間のカーテンを開くと、ビクター牧場の牛やヤギはもう牧場に出ていた。岬のようやく少し緑色になったあたりにぽつんぽつんといるのが見える。
3月も中旬を過ぎた。
ほんの少しずつ春になってきた。思いのほかいいお天気だ。
窓を開けて、空気を入れ替える。
ついでに昨日洗って暖炉の前に干して置いた夏に使うカーテンを持ってきて、先生を起こしがてら、デッキの手すりに干しなおす。
起きてきた先生と朝食を食べる。
この前市場に行ったら、オレンジがたくさん入っていた。秋に作りだめして置いたりんごジャムがなくなりかけていたから、思い切りよくたくさん買い込んで、マーマレードを作った。今日はそのマーマレードとトースト。残っていた牛乳で作った煮込んだミルクティー。冬キャベツのスープ。昨日の残りの塩漬け豚の焼いたのに残っていたりんごのソースをかけたやつ。
冬の間にため込んだ食糧庫も随分と棚が空いてきた。
そのうち先生と市場に買い出しに行こう。




