第15話 午後のお茶。
二人いるというのはなかなかいいことだ、と冬用のカーテンを縫いながらアリシアは思う。寒いから敷物を敷いた暖炉の前に陣取るのは良いが、背もたれがないのでどんどん猫背になっていく。先生を反対向きに座らせて、背中にもたれ掛かる。丁度いい背もたれになる。背中も暖かいし、一石二鳥だ。
アリシアは、小さい頃は二つ違いの妹とよくこうして背中をもたれ合ったな。そんなことを思いだした。
先生は相変わらず本を読んでいる。
先週、コートを真っ白にしてゴードンさんが訪ねてきた。その時運び込んだ本のようだ。ゴードンさんはいつものように持ってきた本を置いて、先生の原稿を持って帰った。
彼は二か月に一度は来ていたが、冬は船便も乗合馬車も当てにならないので4か月分の原稿を持って帰る。先生が書き溜めていた原稿を街から帰って来てから清書して仕上げて置いた。それで、カーテン製作に取り掛かるのが遅くなってしまった。
カーテン生地に選んだのは、柔らかいクリーム色のウールの生地。
先生の部屋と客間と、ダイニングの窓。もし余れば玄関の使い古した毛布のカーテンも替えたい。あれはあれで暖かいけれど。
ここの山小屋は高台にポツンとあるので風をまともに受ける。海から吹きあがってくる冷たい風だ。雪は降るが、飛ばされてしまってそうそうは積もらない。私の生まれ育ったところは雪が深々と積もった。降るだけ降ると暖かくなる。天然の風よけになる感じだ。随分と遠いところまで来たが、田舎に帰りたいわけではない。
縫い針を針箱に戻して、うーーーーん、と伸びをする。背中で先生の背中を押すがびくともしない。
「さて、お茶にしましょうか、先生」
「うん。煮込んだミルクティーがいい」
「はいはい」
アリシアは立ち上がって、もう一度伸びをした。
片手鍋に牛乳と茶葉を入れて、暖炉で温める。
カップを温めている間に、戸棚から焼いておいたビスケットを取り出して、小皿に2枚ずつ並べる。先生の好みに合わせて少し甘めに作ったが、一応、いちごジャムも添える。
外は寒いが、家の中は暖かい。一緒にお茶を飲む人もいる。
これはなかなか幸せなことじゃないだろうか?
ささやかな幸せを発見して、アリシアはふふっ、と笑ってしまった。
真冬の午後のお茶の時間が始まる。




