第28話 竜王の『宝』
「れ、レヴィアタン様!?」
「レヴィアタン様が『竜の国』にお戻りになったぞ!」
――『竜の国』、竜王城は、ちょっとした騒ぎになっていた。
なにしろ、レヴィは竜王城を襲撃して『竜の国』追放を命じられたドラゴンである。
彼は、蒼空防衛局から譲り受けた渡航許可証を提示している。
「レヴィアタン、ここに戻ったぞ。竜王に謁見を申し込む」
門番たちは顔を見合わせて、目を白黒させていた。
妾の子とはいえ、レヴィは竜王の息子である。
しかし、竜王の殺害を企てたドラゴンを通していいのか、判断がつかない。
「――レヴィアタン様、お久しゅうございます」
そこへ、城内から歩み出てくる影。
執事服に身を包んだ男が、レヴィに恭しく頭を下げた。
「久しいな、アジ・ダハーカ」
「竜王様への謁見ですね。すぐに準備いたします」
「よ、よろしいのですか?」
口を出そうとした門番を、レヴィとアジ・ダハーカの視線が冷たく射抜く。
それで、番兵は何も言えなくなった。
2人は王城の廊下をまっすぐに歩いていく。
「ところで、レヴィアタン様。『竜の国』にはおひとりでいらしたのですか?」
「いや。ドラゴンライダーと一緒に来た」
「それはそれは……人嫌いのレヴィアタン様が人を背に乗せるとは」
「背に乗せる騎手は選ぶという話だ」
「その竜騎士様はご一緒ではないのですか?」
「城下町で待たせてある。これは俺の問題だからな」
アジ・ダハーカは、黙って目を細めた。
やがて、謁見の間に辿り着く。
竜王には、既に話が通っているらしい。
「レヴィアタン、まさか、本当に戻ってくるとはな」
――竜王ファフニールが、玉座からレヴィを見下ろした。
その隣には、正妻――竜王妃がいる。
妾の子としては、目の前に竜王の正室がいるのは複雑な気分だった。
「久しいな、ファフニール」
レヴィの横柄な態度に、謁見の間で控えている従者たちは気が気でない。
それでも、竜王は余裕綽々の笑みを浮かべている。
隣の竜王妃は、感情の読めない瞳でレヴィアタンを見つめていた。
「お前が戻ってきて余は嬉しい。お前を待っていたのだ」
「ほう、俺を?」
「レヴィアタン。――王になる気はないか?」
従者たちがザワッ……と、どよめく。
レヴィは動揺していない。
酒場でメリュジーヌから聞いた情報通りだ。
「竜王様と竜王妃様の間には、まだ世継ぎがいらっしゃらない」
――だからこそ、レヴィに王位継承権がある。
むしろ、一度追放したレヴィを待っていたのだろう。
竜王からしたら、獅子の子を崖から突き落とした程度の感覚なのかもしれない。
――ふざけるな。俺がどんな気持ちで――。
レヴィは気付かれないように、拳を握りしめる。
爪が手のひらに食い込んで、少しだけ冷静になった。
「……まさか、俺を次期竜王に?」
レヴィは驚いたふりをする。
それで、竜王は気を良くしたようだ。
「ああ。お前に王を任せて、余は離宮に籠ろうと思う」
――それが本音か。
レヴィも、おそらく竜王妃も、冷ややかな目で竜王を見ている。
ファフニールだけが気付かない。
――宝を守るドラゴンは、離宮に『宝物』を隠している。
そして、その『宝』とは、おそらく……。
一方、レヴィが時間を稼いでいる間に、カッツも動いていた。
竜王が父オリバーを囚えている場合、隠す場所は限定されている。
「それにしても、これ、見つかったら僕どうなるんだろ……」
恐ろしい想像が脳裏を駆け巡るが、レヴィが作ってくれたチャンスを逃すわけにはいかない。
城の中を歩き回って扉を開けていった。
「……これ、僕ひとりでやってても終わらなくない?」
王城には無数の部屋。
もしかしたら地下牢もあるかもしれない。
人間一人で探すには限界がある。
「――そこで何をしている」
背後から声をかけられ、カッツは飛び上がった。
ヤバい、見つかった――!




