↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高所恐怖症のドラゴンライダー、竜王の息子のつがいになりました  作者: 永久保セツナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/30

第24話 冬の祭典――竜灯祭

 セント・マタル竜騎士養成学校での一年目、十二月に差し掛かった。


「――ひゃあ~、寒い!」


 寮のベッドから起き上がったカッツは、部屋の冷え切った空気にブルルッと震える。

 ベッドの脇に置いてあるスリッパに足を入れ、窓のカーテンを開けると、目の前の光景に目を輝かせた。


「ね、レヴィ、見て。雪!」


 一夜にして降り積もった、一面の銀世界。

 レヴィはくあぁ、とあくびをして、カッツほどの興味は示さない。


「人間というのは、雪が積もった程度でそこまで大げさに喜ぶものなのか」


「だって、綺麗じゃない。外に出ず、家の中から見る分には好きだよ」


 もちろん、カッツも寒いのは得意ではない。

 だが、雪が降るのは『桜の国』では冬の間だけ。

 期間限定のものは楽しまなければ損だ。


「それに、誰の足跡もついてない雪ってレヴィみたい」


「ほう」


 レヴィは寝起きの細めた目でカッツを見やる。


「つまり、俺のことをそんなに美しいと思っているわけか。常日頃から」


 なにか恥ずかしいことを言った気がして、カッツはそれ以上なにも言わなかった。


「そろそろ竜灯祭(りゅうとうさい)の時期ですね」


 一階の食堂に降りて、いつも通りトールやニーズと一緒に朝食を取る。

 トールの言葉に、カッツは「ああ、もうそんな時期かあ」とフォークを持つ手を止めた。


「竜灯祭、好き。美味しいもの、いっぱい出る」


「ニーズホッグ、お前は常に食べ物のことしか頭にないな」


 今更なことを言いながら、レヴィは呆れたように小さくため息をつく。


「レヴィアタン、食べ物無しで生きていける?」


「一年くらいなら……いや、まあ、そうだな。食べ物は大事だ」


 レヴィは折れたようで、ニーズの言い分を認めた。

 ちなみに竜灯祭とは、「冬の寒さから世界を守るために、竜が火を灯した日」という伝説に基づいて作られたお祭りである。


「僕とニーズは屋台を周る予定ですけど、カッツさんやレヴィアタンさんはどうします?」


「屋台、いいね。僕達も行こうよ、レヴィ」


「構わんが……その屋台というのは何があるのだ?」


 レヴィはあまり買い食いをする習慣がないらしく、トールが取り出した竜灯祭のパンフレットをじっと見つめた。


「わりと何でもあるんじゃないですかね。おでんとか、たこ焼き、たい焼き、焼きそば、ラーメン屋もあるみたいですよ」


「今年こそ、全制覇する」


 ニーズがふんす、と気合を入れるが、「制覇するつもりなら自分の財布で買えよ」とトールに言われて、ちょっとしょぼんとしている。彼は普段から食べ物を大量に買ってしまうため、懐が寂しい。


「屋台というのは食べ物しかないのか?」


「いや、そんなことないよ。色んなお店が出展してて、アクセサリーとか手作りの小物とか、店によっては似顔絵を描いてくれたり、曲芸師が大道芸を披露したりするんだ。楽しいよ」


 カッツがウキウキとした声色でレヴィを誘った。


「まあ、そこまで言うならやぶさかではないが」


「やった! じゃあ、夕方頃に行こう。竜灯祭は日が暮れてからが本番なんだよ!」


 ガッツポーズをするカッツに、「『桜の国』の連中は、祭り好きとは聞くが……」と少し呆れたような笑みを浮かべている。


「まあ、いい。それでは、夕刻まではトレーニングで構わんな?」


「えーっ!? 冬休みなんだから少しは休もうよー!」


「たわけ、身体がなまったらどうする。休み明けに肥え太った醜態を晒す気か?」


 カッツとレヴィのやり取りを聞きながら、トールは「仲が良いですね」と微苦笑を浮かべた。

 ニーズは相変わらず感情の見えない顔で、目玉焼きをもぐもぐと食べるのみである。


 夕暮れ、四人は寮の入り口で待ち合わせて、全員で竜灯祭の会場へ向かった。


「わぁ、綺麗だなあ……」


 カッツは感嘆の息をつく。

 積もった雪は、夜になると青い色に見える。

 そこに、ランタンに灯された火がオレンジの光を放ち、幻想的な光景が広がっていた。

 ちなみに、ランタンはドラゴンの形をしているのが竜灯祭のしきたりである。

 ランタンの火に照らされた屋台の看板。

 ジュー、と音を立てて焼き上がる食べ物の数々に、ニーズの目が爛々と輝いた。


「屋台、何から食べようか?」


「何から食べてもいい。最終的に全部食べるから」


「だから、僕の財布を頼ろうとするなよ」


 トールに怒られてもなんのその、ニーズは彼を引っ張っていく。

 カッツとレヴィも屋台の食べ物を買おうと、ラインナップを確認した。


「レヴィって、好きな食べ物とかある?」


「そこまで頓着はないな。好き嫌いはない。なんなら、骨まで噛み砕くぞ?」


 レヴィが歯をむき出してニヤリと笑う。


「骨かあ。僕も、ちょうどガッツリした肉系食べたかったんだよね。フライドチキンにしようかな」


 カッツは特に意に介した様子もなく、鶏肉の香りがする屋台に並んだ。

 フライドチキンを食べたあとは、広場に戻るが、トールとニーズが戻ってくる気配はない。


「はぐれちゃったかな」


「大方、予想はついていたがな……。あのニーズホッグのことだ。それに、はぐれたときの対策もしてあるだろう?」


 トールと話し合い、はぐれたときの集合場所は決めてある。

 彼のニーズに対する理解力は大したものだ。


「では、俺達も自由行動としよう。アクセサリーショップに興味がある」


「え、レヴィって装飾品とか好きなの? 初耳」


「フン。人間がどういったものを作るか見てやるというだけの話だ」


 アクセサリーの屋台は、手作り感溢れるビーズのブレスレットから、レザークラフトの本格的な革製品など様々だ。

 カッツとレヴィは、2人で色々眺めたり、試着するなどそれなりに楽しんでいる。


「カッツ」


「ん?」


 レヴィは、カッツの左手を取り、指輪を嵌めた。


「うむ、ぴったりだな。これを買おう」


「指輪なんて買ってどうするのさ」


「マーキングだ」


「??」


 代金を支払い、店をあとにする。


「その指輪、外すことは許さん。死ぬまでつけていろ」


「なにそれ、呪いの装備!? お風呂とか外さないと錆びない!?」


「……ふむ。錆びるのは困るな」


 途中、大道芸人のショーを見ながら、再び広場に戻った。

 既に待ち合わせ場所に戻っていたトールは、カッツの左手の指輪を見て、全てを察したのである。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。