第22話 ドラゴンケア週間
「セント・ジョージ学園、すごかったね!」
カッツの興奮した声色に、トールも「ええ。是非あの学校の良いところを我がセント・マタルにも取り入れたいですね」と頷く。
セント・マタルとセント・ジョージの学園間交流は終了した。
学校対抗の模擬戦は白熱し、黒き龍に変じたコクリュウと白き龍になったレヴィの対決は特に歓声が上がったのである。
「もう10月かあ」
「たしか、今月はドラゴンケア週間があったはずですよ」
「ドラゴンケア? なにそれ」
「さあ……?」
カッツとトールが首を傾げていると、教室に「皆さん揃ってますか~?」と担任教師イゾルデが入ってきた。
「ドラゴンライダーの皆さんは相棒のドラゴンの手入れを一緒に学びましょう~。ドラゴンのみなさんもセルフケアはしていると思いますが、この機会にドラゴンライダーと一緒にできるお手入れ方法を勉強してくださいね~」
「フン。つまりはスキンシップか」
レヴィの言葉に、教室は色めき立つ。
この頃にもなれば、恋愛関係に至ったドラゴンとその騎手も増えていた。ドラゴンケアの名目でボディタッチができるのであれば、ぜひとも勉強したいところであろう。
まずは身体のケア。
「ドラゴンの鱗や皮膚は戦闘で傷ついたり、飛行中に汚れたりすることが多いです~。ドラゴンオイルやドラゴンクリームを使って鱗や皮膚を保護します。小さな傷であればこれで修復もできますよ~。セント・マタルでは、オイルやクリームを購買で売ってるので、是非買ってくださいね~」
竜騎士養成学校では、独自の配合で製造されたオイルやクリームを販売することで学校の維持費に充てられるらしい。
学園の卒業生が商品のポスターに起用されるなど、芸能界での活躍もサポートしている他、工場での商品製造の仕事も斡旋してもらえるなど、学園に入ればまず仕事には困らないだろう。それが竜騎士養成学校の倍率を上げる要因にもなっていた。
「爪や牙なんかはドラゴンの皆さんも自分でケアしていると思いますが、今日はドラゴンライダーの皆さんに身を任せてくださいね~。歯磨きをしたり、爪を砥石で研いだり……ライダーの皆さんは鋭くしすぎないように気をつけましょう~」
さらに、ブラッシングで古い鱗を剥がすなどのケアも大切である。ドラゴンは成長の過程で脱皮を繰り返して古い鱗を脱ぎ捨てるが、その鱗が残ると衛生的にも問題だ。ちなみに脱皮した鱗はお守りとして高値で売られるが、竜が信頼する相手に自主的に渡す新しい鱗と比べるとご利益は薄い。
さらには竜医による健康診断や栄養管理、精神のケアとして温泉などのリラクゼーションや音楽療法など、ドラゴンを徹底的に甘やかすのがドラゴンケア週間である。
もちろん、ドラゴンが望めばいつもと同じ飛行訓練などの軽い運動も推奨されている。
「レヴィ、ここがいいの?」
「ああ~……。カッツはうまいな」
「父さんにもよくやってたから」
カッツは温泉から上がったレヴィにマッサージを施していた。
ドラゴンの筋肉や骨格を整え、リフレッシュ効果のある整体でコンディションを整える。
「ドラゴンとドラゴンライダーの触れ合いか……どんなものかと思っていたが、存外悪くない」
「よかったね」
ドラゴンの姿のまま、パタパタと尻尾を振るレヴィは、誰が見てもごきげんだ。
「皆さ~ん、存分に体調を整えてくださいね~。中間試験も近いので、良い結果を出せるようにドラゴンをいたわりましょ~」
「げっ、もうそんな時期……」
イゾルデの言葉に、生徒たちはこれからの難関を思い浮かべる。
「筆記試験と実技試験だったよね」
「フン、俺とカッツであれば敵なしというもの。いつも通りで良いのだ」
「実技はレヴィがいれば問題ないけど、筆記試験はまたテスト勉強しなきゃだね」
カッツがレヴィの頭を撫でると、ドラゴンは騎士に甘えるように手に擦り寄るのだった。




