3-6 王太子殿下が心配になるなんて・・・
・・・まさか。
あの王太子殿下のことを、心配する日が来るなんて。
私がお針子見習いとしてようやく慣れてきたころ。
「ミリー。突然ごめんね。」
市井のおうちは私のお父様が治安のいいところに準備してくれた。
そこに急に表れたのが久しぶりに会うお兄様だ。
「何かあったの?」
急に来たということは、何か起きたということだ。
私は、メグにお茶を準備してもらってお兄様の話を聞くことにした。
「ちょっと困ったことになった。」
お兄様は、口を結び視線を下げる。
私は気になって固唾をのんで話の続きを待つ。
「それが、王太子殿下がお前と婚約を破棄しただろう。
そして、平民の女ーーー
つまりミリーと結婚したいと言い出したんだ!」
まさか本気だったなんて。
ゆくゆくは王様なのに・・・
「そんな王太子は王としての資格がないと今廃嫡の危機なんだ。
そうしたら、次の王位継承権一位は誰だと思う?」
お兄様は、分かっていることを確認するように私に尋ねる。
「王様のお兄様のロドルフ様よね。」
「そうだよ。あのロドルフ様だよ。今回の件の黒幕なのにだ。」
お兄様が悔しそうに拳を握る。
「ただ、ロドルフ様はアルフレート王より年上だから
もしかしたら、その機会は来ないかもしれない。
すると、次は継承権を放棄したアレクシス様かロドルフ様のご子息のロイド様しかいない。
そのロイド様も実は継承権を放棄したいと言っていることが調べて分かっている。
そうなると、この国はどうなってしまうのか・・・」
本当だ。
どうすればいいのだろうか。
「お前の考えを聞かせてくれないか。
私はお前がどんな判断をしても味方になってやっていく。」
お兄様は力強くうなずいて私を見た。
私はしばらく考えた。
関わらなければ、このまま平穏に生きられる。
そんな考えが、一瞬よぎる。
・・・でも。
私は首を横に振った。
それよりこの国の未来がかかっているんだ。
しっかりしなくちゃ。
私は、視線を上げ、ゆっくり話を始めた。
「何が正しいのかはまだ分かりません。
でも、私の考えを話します。
まず、自分の私欲だけで動いたロドルフ様だけは絶対に王にしたくありません。」
人を駒のように扱い、
失敗するように仕向けて、
それを見て喜ぶーー
そんな人が王になるなんて、絶対に許せない。
「その上で、やりたくないという人に無理やりさせても国のためにはマイナスです。
今の王太子殿下は確かに未熟かもしれません。
でもーーー
変わる余地があるのは、あの人だけです。」
私は結論を話した。
「実は、私もそう思っていた。
王太子教育だってまだ間に合う。
本気で取り組む気があれば十分やっていける。
でも、それにはどうしたら王太子を救えるか
考えなくてはならないのではないか?」
お兄様が試すように私を見る。
「それなら私に考えがあるんです。
誰もが廃嫡なんてしなくてもいいと言える方法が。
・・・ただし
それにはーー
それでも
・・・やります!」
私は、決めた!
王太子殿下を救うこと!!
婚約を破棄した相手を、
今度は自分から救おうとしている。
・・・本当に、人生はわからない。




