3-7 ミリエンヌ再び王宮へ
今日も私は太った方のミリエンヌだ。
ーーでも、この姿でいるのも、今日で終わり。
今日は主だった貴族が集められた。
きっと、今日事態は動く。
会場では、みんなひそひそと話すばかりで落ち着かない。
そこに、王太子殿下、アルフレート王、ロドルフ様の3人がゆっくりと歩いてきた。
辺りは、誰一人として動かず静まり返っている。
3人の表情はどこか固く、いつもの笑顔が見られない。
「今日は、みなに知らせたいことがあって集まってもらった。」
アルフレート王が会場に響き渡る声で話し始めた。
「我が息子フレデリックだが、今まで王太子として努めてきた。
しかし、その資質を疑う声が数多く上がってきた。
まずは本人に確認したい。」
アルフレート王は、親としてではなく、王として毅然と話をしている。
「お前は、ミリエンヌ・エーデルシュタイン嬢との婚約を破棄したな。
その上で、平民のミリーという女性と添い遂げたいということだが変わりはないか?」
王は、一瞬だけ父の顔を見せーー
すぐに、それを押し殺した。
下を向いていた王太子殿下は、決意したかのようにゆっくりと返事をする。
「・・・はい。私はミリー嬢と添い遂げたいと考えています。」
その場に集まった人たちが近くの人と目配せをしながら、視線を王太子殿下に戻す。
「ーーー変わりはないか?」
最後の望みをかけて王が声をかけるが王太子殿下は動かない。
「ーーーそれならば仕方がない。
お前は、本日をもって・・・」
「お待ちください!」
静まり返った会場に、
私の声だけが、はっきりと響いた。
会場のみんなが何事かと騒然となる。
王の言葉をさえぎることは不敬にもなる。
私は、頭を下げて返事を待つ。
「そなたは、今回婚約破棄という不名誉な目にあわせてしまったミリエンヌ嬢だな。
よい、話してみよ。」
王の許可をいただいたので頭を上げて背筋を伸ばす。
「先ほどのお話の中に誤解がございます。
それを今からご覧いただきます。」
そう言って、みんなが固唾をのんで見守る中ーーー
私は、ゆっくりとドレスに手をかけた。
ざわめきが広がる。
次の瞬間ーー
颯爽とドレスを脱ぎ捨てた。
「キャー。」
悲鳴を上げるご婦人や
「なんてはしたない。」
と顔をしかめる人々。
「は?はあーーーーーーー?」
誰もが、口を開き唖然とした表情で固まる。
それもそのはず、
中から現れたのは、
引き締まった体と、軽やかな装い。
そんな私の姿を穴のあくほど凝視し、驚きの声を上げる。
おまけに、髪の毛をいつものポニーテールにしたら・・・
平民のミリーの出来上がり!!!
「・・・・誰だ?」
「いや、あの顔・・・・」
「ミリー・・・・?」
誰もが混乱して信じられないものを見たような顔をしている。
「ミリー!!」
ロイド様は驚いたが、私を見つけて嬉しそうに近づいてきた。
王太子殿下は、
「ミリー・・・・?いや・・・・ミリエンヌ・・・・?」
言葉が、繋がらない。
「どうなっているんだ!!なんで貴様が・・・」
ロドルフ様は怒りで顔を真っ赤に染めた。
その時。
「静まれ!!」
アルフレート王が声を張り上げた。
辺りは、途端に静かになった。
「ミリー。いやミリエンヌ・エーデルシュタイン嬢。
どういうことか説明してもらえないか?」
私は、これまでのことをかいつまんで説明した。
王太子殿下との婚約を破棄したいという目的を除いて。
平民になるべく、貴族としての価値を持たせないため、太ったままの姿を見せていたこと。
平民となった後でも暮らしていけるように、食堂でミリーとして働いていたこと。
「ですから、王太子殿下は平民の女性を妻に迎えようとしたのではありません。
公爵令嬢のミリエンヌ・エーデルシュタインを選ぼうとしたのです。
つまりーーー
王太子殿下は、身分を違えたのではありません。
同じ私を選んだだけです。
・・・・何も問題はないはずです。」
私は、落ち着いて会場のみんなを見渡す。
「あ!それなら私はミリエンヌ・エーデルシュタイン嬢との婚約破棄を撤回する!!
ミリー。いやミリエンヌ嬢と一緒になりたい。」
王太子殿下は焦ってそんなことを言い出す。
「お断りいたします。
婚約破棄は、すでに成立しております。
もう王太子殿下と結婚するつもりは微塵もありません。」
「そんな・・・」
王太子殿下はがっくりとうなだれて、膝をつく。
「ですが、王太子殿下の王としての資質が下がったわけではありません。
もう少し、王となる自覚は必要だと思われますが・・・
それより、問題は資質ではありません。
教育です。」
その言葉にーー
ロドルフ様の肩が、わずかに揺れた・・・・・
ーーー図星、ですね。




