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3-5 このままでは・・・



その夜、食堂に私とケビンが残った。


ーこのままでは、ここにもいられない。


そんな空気を、お互いに感じていた。



「ミリー。お前に提案があるんだよ。」


おかみさんが、ため息をつきながら言いづらそうに話す。


私は、背筋を伸ばしてしっかりと聞く。


「最近、身分のある人たちが出入りしているだろう?


めあてはどうもミリーだ。


お前は、明るくて働き者でかわいいからね。」


おかみさんは、私の頭をなでてくれる。


私も、もう潮時かと考えていたので、黙って聞く。


「身分のある人たちがいるとね、


常連さんが遠慮しちまうんだよ。


・・・店としては、正直きつい。


それに、ミリー。


お前も最近疲れているんじゃないかい?


しばらくの間、身を隠したらどうだい。


他のお店に紹介してやってもいいよ。」


おかみさんは、私のことを心配して言ってくれている。


「実は、私も今日おかみさんに相談しようと思っていたんです。


お店に迷惑をかけていますし・・・」


私が下を向くとおかみさんはすぐ近くに寄ってきて手を握る。


「迷惑なんかじゃないよ。


ミリーは私の娘みたいなものなんだよ。


可愛い娘が心配だから泣く泣く手放すんだよ。」


その言葉にーー


胸の奥が、じんわりと熱くなる。


なんて嬉しい言葉だろう。


一生懸命働いてきてよかった。


このお店で働けて良かった。


泣きそうになって、口をぎゅっと結んで耐える。


「私、本当はこのお店を辞めたくはないです。


でも、落ち着くまでは、新しい場所で、


しばらく身を置こうと思います。


いつの日かまた戻ってきてもいいですか?」


私もおかみさんの手を握る。


「ああ。いつでも戻っておいで。私のかわいい娘なんだから…」




そうして、私とケビンは食堂くららを誰にも告げずに辞めた。


もちろん、家族にだけはケビンに伝えに行ってもらった。







1週間後。


家にこもっていた方が見つからなかっただろうけど、


おとなしくただいるなんて3日ともたなかった・・・


やっぱり私、働くのが好きなのね。


そこで、


私は、隣町の手芸店でお針子見習いを始めた。


店に出ないために、あの3人に見つかることもない。


私は、もともとコスプレ衣装を作るのも好きだった。


それを生かしてお針子見習いとなった。


「なんて素敵な図案なの?」


店主だけでなく、周りの職人たちまで手を止めて見入っていた。


私が描いた衣装の図案や刺繍の図案が新しいと採用されたからだ。


縫う方はまあまあできるけど、


刺繍に関しては、メグの方がずっと上手だった。


だから私は、素直に教えを請うことにした。


そうして、どうにか平穏な日々が戻ってきたのだった・・・・




それなのに


ーーー平穏は、長くは続かなかった。


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