3-4 なぜみんな食堂に来るの!?
私は市井に降りる準備を始めた。
ーーもう、貴族としての生活には戻らない。
そう決めて、必要なものだけをまとめる。
ドレスなどは、置いていく。
ーーー貴族の鎧を脱ぎ去るように。
私についてきてくれるのは、侍女のメグと護衛のケビン。
私は一人でもいいって言ったんだけど、
二人と家族はそれを許さなかった。
二人も平民の格好をして市井についてきた。
私はもちろん変装なし。
いつも通り食堂くららで働く。
「いらっしゃい・ま・せ」
ん~
どうして来たのかな?
「ミリーさん。今日は一番乗りで来たよ。」
嬉しそうにキラキラした目で私を見つめるロイド様。
私がミリエンヌだと気づいていないからまだいいけど、
なんかドキドキして心が休まらない。
え?気づいていないよね。
「今日は何がおすすめかな?」
そう言いながらーー自然な動作のように、
私の手に触れようとする。
次の瞬間。
気づいたときには、ケビンが間に入っていた。
・・・・いつ来たの?
ちょっと尊敬するレベルだ。
「僕のおすすめは、かつ丼かな?騎士にはやはりガツンと肉っしょ。」
ケビンがうまく会話に入る。
「ミリーさんもそう思いますか?」
後ろの私にロイド様もめげずに聞いてくる。
「そうですね。じゃかつ丼ですね。」
私は笑顔で返事をして、そそくさと厨房に伝えに行った。
一応お客様だからね。
ガラッ
次のお客さんが来た。
「いらっ・しゃ・・・・」
なんだろう。
この既視感。
さっきと同じ流れな気がする。
今度はなんと、アレクシス様が笑顔で入ってくる。
「やあ。ミリーさん。元気だったかな?」
食堂に入るときの挨拶ではないと思う。
「はい。元気ですよ。何を注文されますか。」
悲しいかな。
接客業で身についた笑顔で注文を取る。
「じゃ。君が好きだといった親子丼にしようかな?」
好きだなんて言っていませんがね・・・
「はい。親子丼ですね。」
もう、いちいち気にしないことにした。
アレクシス様は座ろうとしたときに、ロイド様がいてぎょっとしている。
だから変なんですって。
もう、ないですよね~
・・・・フラグ?
ガラッ
「ミリーさんは、いるかな?」
ーーまずい。
一番、ここに来てはいけない人が来た。
この声は、王太子殿下。
こんな市井に何度も来るなんて。
「今日は、君に話があって・・・」
「フレデリ・・・・リック。何しに来たんだい?今日は予定が詰まっていたのでは?」
アレクシス様も焦って近寄ってきた。
「ちょっと何やっているんだよ。」
ロイド様も参戦してきた。
「こちらの方が大事なんだ。」
王太子殿下がむきになっている。
気が付けば。
前に王太子殿下。
右にロイド様。
左にアレクシス様。
ーーー逃げ場がない!
危険な感じになってきた。
おかみさんに言って、ちょっと場を離れようーーーー
前を向いたまま2.3歩下がったところ。
「ミリーさん!」
3人に止められてしまった。
こうして3人の迷惑なお客様が帰るまで、私が解放されることはなかった。
何か言いたげな3人は何も言えないまま、
後ろ髪をひかれるように帰っていった。
ようやく店の扉が閉まった。
・・・・はあ。
全身の力が抜ける。
もうこないでーーーーーーーー!




