2-4 王太子とのお茶会
「・・・・まだいたのか。ミリエンヌ。」
今日は、王太子妃教育の日。
私は、もちろん太ったミリエンヌに変装してこの場にいます。
たまにでも、何度もあれば流れ作業のようにできる。
本当の自分ではないのに、この姿にすら慣れてきているのが少し怖い。
「・・・・」
遅れてきて、不服そうに視線も合わせず椅子に腰を下ろす。
王太子としてその態度どうなのよ。
そう思うのに、マリー先生ったら、にこにこと見ているだけ。
2年前と一つも変わらない。
変わったのは一つだけ。
甘いお菓子がちょっと減った。
私が全く手を付けないから。
せっかく我慢しているのにここで意思を曲げるわけにはいかない。
「今日は何のお話をしましょうね。」
私たちの会話が弾まな過ぎて、マリー先生が話し出す。
「そういえば、今市井では『おやこどん?』というものが流行っているそうよ。」
「んんっ。」
危ない。
危うく紅茶を噴き出して”令嬢失格”になるところだった。
市井の話題が王宮まで届くなんて誰が想像する?
「どなたからの情報でしょうか。ずいぶん耳が早い方ですね。」
平静を装って聞いてみる。
「それは、ロイ・・・ いえ。どなたでしたでしょうか?思い出せませんわ。」
え~
確かロイド様って、王様のお兄さんのーー
このポンコツ教育の元凶ロドルフ様の息子さん?
教育で忙しいはずなのに、市井のことまで知っているとは・・・
ちょっと調べてみないとな~
どうすれば・・・
黙っている私を見て、王太子殿下が珍しく声をかける。
「お前も興味があるのか?市井のこと。今度私も市井に勉強に行く予定だ。」
なんですとーーーー
出来れば来ないでいただきたい。
私の平穏なテリトリーに一歩でも入ってほしくない!
「それは、危険なのではないでしょうか。それに、得るものもそうあるとは・・・」
「また、お前は私を馬鹿にする!
王太子として民の生活を知らぬままでいる方が無責任だろう。
それとも、私にはそれすらも必要ないというのか!!」
椅子から立ち上がり、顔を真っ赤にして私をにらむ。
結構まとものことを考えているのね。
ちょっと見直してしまった。
「なに、黙っているんだ。気分が悪い。私は失礼する。
ーーーーーーーーだから嫌なんだ・・・」
王太子はくるりと向きを変え、大股でぶつぶつと不満をぶちまけながら戻っていった。
婚約破棄のために嫌われるっていう点では、100点だけど、
あの怒りっぽさは、どうにかならないのかな?
こっちまで嫌な気持ちになる。
カルシウム不足?それともただ短気なだけ?
にぼしでもかじっていればいいのに・・・
短気は損気だよ。
180度違うことに意識を持っていかれ、
マリー先生が笑顔で殿下の帰る方向を見ていることに気づかなかった。
やっぱり、王宮を直接調べてみたいな。
ーーーでも、どうやって?
!!
私のあの技術で試してみるか・・
かなり危ない橋を渡ることにはなるけど。




