表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒燈夜市の少女探偵  作者: お試し丸
PR
2/5

第2章 無垢な嘘の屋台

翌日、黒燈夜市の路地に再び足を踏み入れた楓。昨夜の紙片――「忘れたくない花火」――は胸ポケットにそっとしまってある。まだ薄明かりの残る路地に、奇妙な屋台がひとつだけ光を灯していた。


「ねえ、願い屋台の紙、見せてもらえる?」


声をかけたのは、昨夜の少年――黒いフードをかぶった無口な弟子、あおいだった。楓がうなずくと、彼は静かに頷き、屋台の紙片を指差す。


「これ、昨日の屋台とは違う。嘘の願いを集める屋台だ」


嘘の願い――? 楓は眉をひそめる。紙片を見ると、そこには「明日、私は誰にも迷惑をかけない」と書かれている。どうやら少女が自分を偽るためにつけた願いのようだ。


「人は、嘘の願いをしてしまうこともある……でも、それを売る屋台なんて、あるんだろうか」


楓がつぶやくと、屋台の陰から、無邪気な笑い声が響いた。小柄な少女が二人、白いマスクをつけ、紙片を手に楽しそうに踊る。


「嘘の願いって、どれくらい叶うのかな?」


「叶うんじゃなくて、人を惑わすためのものだ」


蒼が低く答える。楓は直感的にピンときた。この屋台の存在は、夜市の秩序を乱すもの――しかし、人の未熟さを映す鏡でもある。


「私、調べてみる」


楓は屋台に近づき、紙片を手に取る。触れた瞬間、淡い光が手のひらに流れ込み、嘘の願いが描かれた少女たちの影が、夜市の灯りに溶け込む。


「なるほど……これが人の“未完成さ”か」


その時、屋台の奥から、消えた店主の声が微かに響いた。


「選ぶこと、それがすべての始まり――」


楓は紙片を握りしめ、微笑む。


「私は、逃げずに選ぶ――だから、この夜市の嘘も、ちゃんと解いてみせる」


小さな屋台の灯りに、夜市の影が揺れる。

楓の探偵としての一歩は、静かに、しかし確実に進んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ