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第2章 20話 駆け落ちの顛末と変身の探求

リーシェとウィリアム、そして私たちは村への被害もあったことで、村長を交えて話をすることになった。


大事になったわけだ。


ギーツがまとめ役として話を進めた。


「まず、ウィリアム、あの魔族だった人は何者か、どういう経緯だったりかかわりがあるのか、聞かせてくれ」


「はい、すいません。まさか、魔族だっ他なんて、思ってもみませんでした」


「それはいいんだ、状況を整理したい」


「その……先ほどのひとはゴメスという街の大商人で、リーシェと会うのを手伝ってもらっていたんです」


「なるほど」


「家とも取引があるところでした。リーシェとは、結婚を前提にと考えていて、父さんに伝えたら反対されて。何度も言ったんですけど」


「貴族としては、みたいなのはあるでしょうね」


「はい、別の縁談もいろいろあって。もう、勝手に決められそうになってて。それで、ゴメスさんに相談したんです」


自由恋愛って、なかなかできない立場なんだろうなと思う。私もそうだったし。逃げてきちゃったけど。


「いろいろ手配してくれて、王都への計画とかそのへんも、いったんここで落ち合って、という予定でした」


「なるほど、それでまんまとお前は、街の外にフラフラ出てきちまったってことか。最悪、ゼルが判断してくれてなかったら、お前、死んでたぞ」


それを聞いた、ウィリアムやリーシェは愕然としていた。


私も、少しどういうことなんだろうと思った。


「魔族の変身は、変身する相手の頭を食う必要がある。どういうことか、わかるよな」


そして、ウィリアムとリーシェはさらに青ざめるのだった。


そうか、頭を捕食する必要があったんだ。そこまでは、知らなかった。


「ゴメスも、ようは入れ替われてたってことだろうな。それで、次はウィリアム、お前の番だったってことなんじゃないか」


「そんなっ……」


「駆けつけるのが早くても、ゼルさんみたいにとはいきませんでしたでしょうから、今回は運がよかったですね」


「まったくだ」


その後、フェルディアスの、ドーベン家の捜索班も合流し情報を共有、リーシェとウィリアムはひとまず、街へ帰ることが決まった。


街へ帰る途中。


「サーラ、今回は助かった。ありがとう」


「いえいえ、無事でよかったです」


「あぁ」


「ギーツさん的には、ウィリアム様のことはどう思ったんですか」


「あんなやつにリーシェを任せられるか」


---


変身に拡張性を持たせられるかというと、実はできている部分がある。それは衣服である。


まず、裸のセナ。


続いて、ドレスを着たセナ。


さらに、冒険者のセナ。


こんな感じで、変身は肉体部分に拡張部分という感じで行える。


拡張部分は、一メートル程離れると消えてしまうので注意が必要である。


これまで、肉体およびその精神面の拡張は試していなかった。


つまり合成ともいえるだろうか。


リンゴとレモン、があったとき、リンゴでありながら、レモンの酸っぱさを足せるのかどうか、そんな感じだ。


なお、俺はから揚げにレモンはかけない派である!


可能であれば、モノに変身していながら、セナ、もしくはバリスタードあたりの感覚を取り込むことができるとよさそうだ。


そうであるなら、セナでありながらバリスタードの強さ、なんてことはできないだろうか。


可能だとすれば、夢は広がる。


まぁ、最終的な俺自身は一切強くならないことはさておいて。


もしそれが可能ならば、話のできる猫、なんてこともできそうである。


おぉ、夢が広がるね!


では練習しようじゃないか。


ミックス変身の世界へ!


---


ハインケルくんの授業は順調で、炎や水を一定に生成できるようになり、小さな防御円もできるようになった。


まだ、防御円は、出現場所が不安定で上手くいっていないけれど、一つ一つである。


そんな授業がひと段落し、おしゃべりをしていた。


「冒険者になりたいって言ったら、お父様に怒られちゃった。なんでダメなんだろう」


「そうですね、難しいです。ハインケル様はともすると、この街の長だったり、どこかの領地を任されたりするかもしれません。もっと立場の上の人になって欲しいというのはあるのかもしれませんね」


「よくわからないや。だって、サーラは、冒険者としてみんなの役にたってるんでしょ。ウィリアムお兄様だって助けたし。それってダメなことなの?」


「必要だけれど、きっと、それをまとめる人も必要なんですよ。冒険者ギルドも、受付の人、ギルドを運営する人がいます。また、冒険者でも兵士さんでも、そうした人たちがどう動けばいいか、指揮する人がいないとまとまりません」


私自身、言ってて、それでも、自分は冒険者を選んだのだよね、とは思う。


「指揮ってよくわからないや」


「そうですね。私もわかりません」


「サーラにもわからないことがあるんだね」


「はい、たくさんありますよ」


そう、たくさん、わからないこと、知らないことはたくさんある。


だからこそ、見てみたい景色もたくさんある。


ちなみに、ウィリアムは現在軟禁状態である。ま、無理もない。


危うく殺されかけたうえ、最悪、魔族に入れ替わられていたとすると、本当に恐ろしいことになりかねなかった。


「そういえばさ、赤ちゃんってどこからやってくるの?」


え……


「そ、それはですね。魔法の一種です」


「そっか! 魔法だったんだ、僕にもできるの?」


「いえ、特別に好きな男性と一緒にいると使える、女性だけの魔法なんです」


「えー、なんかずるいなぁ」


あはははは……


「ねぇ、サーラは使えるの?」


「私は、特別に好きな男性がまだいませんので」


「なるほどね!」


そう、こんなふうに、私もお茶を濁されたことがあった。ロハン先生に。


---


マリウスは、デファード国の王都ルシフの城の門番として見張りをしていた。


潜入の第一段階は成功である。とはいえ、重要な役職であったり、もう少し行動しやすい役職になるには、しばらく時間がかかるだろう。


城には様々な人が通る。貴族、大商人、などなど。


通行証や書状などを確認して通ってもらうなど、その辺を覚えてこなしていく。


見える街の人々に活力わなく、やせこけた人が多い。王都でこれなのだ、他はもっと悲惨であった。


国全体が病魔にむしばまれているように見える。


それでいて、隣国ウェンプトンに挑発行為をしていたのだから、何を考えているのかとも。


ただ、ここから離れた、元ウォズニック領は、まだ活力があったが、反対にウェンプトンへの拡大欲が強くなっている印象だった。


全てではないにしろ、デファード国はおかしくなっている。


きっと作為的に。


天啓によれば、ここ王都ルシフに魔族ありとのこと。


魔族の謀略を許せば、国は崩壊してしまうことだってある。そうすれば、周辺国との関係が変わり、その歪みに乗じてさらに魔族は付け入ってくる。


潜入、昔、一人、それに長けた良い仲間がいたのだがな。


そうだ、まったく、あいつが生きていれば、俺がこんなことをする必要もないのだがな……


惜しい奴をなくした……


いや、彼一人ではない。


天空の風のメンバーは、ゆっくりと入れ替わっている。


それは不仲だからではない。


魔族との戦いが厳しいからだ。


だが、誰かがやらなければならない。


そして俺には力がある。


俺でリーダーは七代目になる。


ずいぶんと長い戦いだ。


はたして終わりが来るのだろうか。


途方もない時間が必要な気がする。


ゼルには次のメンバーを探してもらっているわけだが、早く帰ってきても欲しい。


組織を維持しながら、そのうえでやることもやらなければならないというのは、大変難しい。


天空の風の第一部隊の三人では、難しいかもしれない。


といって、第二、第三部隊は現在は別の任務がある。そう、世界中に魔族は入り込んでいる。


---


ふふふふ、ふははははは!


俺は天才、そう天才である!


今の俺はパンツ、しかし、見える、感じる、しかも、媒体の宝石としての機能も備えているからこのとうり、風がふわりとパンツがゆれる、そう! 魔法も使える!


イッツァファンタジー!


エクセレント!


おう、やばい、これはどういうことかというと、セルディアの生活がひとしきり終わったら、俺、誰かのパンツになって過ごそうかな。あは、あはははは。


まったく、変身能力は実にけしからんな!


ただし、現在まだ不慣れなので、ぽわん。


と、解けてしまった。


そう、複合変身は長時間持たない。時間が来ると遊馬慧に戻ってしまうのが難点だ。


途中で別の単一変身に戻したりできたらいいけれど、ゆくゆくだな。


複合できるのも三つが現在の限界だ。


それでも十分だ。


セナをベースに能力はバリスタード、ロハンを複合させれば、とびっきりの魔剣士になれたりもする。


うん、現時点でもズルいな。


少し思考を変えて、セナをベースに能力はバリスタード、黒猫、なんてしても嗅覚するどい対応とかもできる。うんうん、いいね。


三枠目を精霊にして、詠唱魔術を使うというのも手かな。


現時点では、セルディアとしてふるまう必要があるから、そこまでは使えないけれど、今後に期待である。


あと、物にも記憶ってものがあるんだね。


---


ゼルとのいつもの依頼をこなした後、めずらしくゼルから話したいことがあると言われ、今、高い建物の屋根の上である。


広い街並みが見える場所だ。


「サーラ、天空の風に入ってみないか?」


「ゼルさんのパーティーですよね?」


「あぁ、魔族対峙専門の危険な任務をこなすパーティーだ」


「私を育ててたのって、やっぱり関係あるんです?」


「半分はそう、半分は暇つぶしだ」


「暇つぶしでしたか」


「なに、磨けば輝きそうな物を見つけたら、磨きたくなる、そういう性分でな」


「私、旅がしたいんです。世界を見て回りたいですし、あと、そうですね、ちょこっと、いろんな人を守れたらなとも思ってます」


「旅はいいな、いろんな場所にいろんなうまいもんがある。面白れぇやつもいる」


「私はゼルさんに感謝しています。でも、私の人生は私のものなんです」


「そうだぜ」


「もし、天空の風に入ったら、いろんな場所に行けますか?」


「狙った魔族を倒すのに場合によっては一年、二年、かかるときもある。反対に、それが終われば、今度は世界の反対側へ、なんてこともある」


「なるほど」


私は何になりたいのだろうか。私にとって、自由とはいったい何なのだろう。


そして、あの、村の人たちに犠牲が出てしまった悔しさは、なんだったのだろうか。


そこそこ、強くなった自負はある。


弱くはない。


「もし、参加するとしたら、どこへ向かうんですか?」


「デファード国の王都だ」


「隣国とはいえ、遠いですね」


「嫌か?」


「いえ、行ってみたい気もします」


「ウェンプトンとデファードの国境沿いは緊張状態らしい、迂回する予定だ。長旅になる」


「行ったら解決してました、何てことは?」


「あるだろうし、それならその方がいい。一応、そこで落ち合う予定にはなっている」


「なるほど」


「ウォルダムっていう魔法使いの爺さんがいてな、いろいろ聞けるかもしんねぇぜ」


「凄い人なんですか」


「あぁ、魔法に関してはな」


少し考える。


ここ最近は、自分なりに魔法についてやってきた。先生はなく、他のパーティーの魔法使いを見習ったりもしつつという程度。


そういう点で、先を目指せる機会があるのだとすると、いい誘いなのかもしれない。


「わかりました、私、行きます」


ゼルはニヤリと牙を見せて笑った。


とうとう、この街から旅立つ日がやってきた。


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