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第2章 05話 魔法の花咲く部屋

ふむ……困った。


一定の成果、があったのかもしれない。


目の前には色が黄色にほんのりと不思議な魔力を帯びたポーションが出来上がっている。


さっきまでの、低級治癒ポーションとは違う輝きを秘めて入る。


だが……


であるが……


これってさ……そう……どうやって検証するんだ?


まず、検証して大事故とかならないか?


ありうる、実は人体に劇薬でしたとか、そういうの。


まずはそこからゆっくり確認するしかないか。


それならできる、まず、物にたらしてみて、あと、植物、つぎに、動物、犬か猫あたりにちょっと、そう、少しずつやってみるのはできるかも。


うーんただ、動物というのは、あれだ、出かけてポーションを振りかけることになるので、それが皆に見られてしまうのはよくない。


うん、部屋で完結させたい……いっそ自分でとしても、まぁ、うん、うーん、危ないと思うなー俺。


ポーションをかけた瞬間、さらさらさらーっとかけたところから砂になっていく、連鎖的な劇薬だったらどうするよ。


笑えないよ。


本当に笑えない。


そこは、無理にやったとして、でも結局俺では、効果の判断がつかないのである。


もしも、ちゃんとできているとしたら、うん、もう奇麗になっちゃってるから……判断がつかない。


猶予があるなら、今日の夜試せばいいか。そうしてみるか?


うん、では、ひとまず、床に一滴垂らしてみて、とくに問題なし、よしよし。


それから、布にはー、OK、こっちも染みただけだな。


次は、鉄素材とかどうかなー、この辺でっっと、うんうん、イスの金具に垂らしてみても問題なし。


さーて、ちょっと深呼吸。まずは次までは試しておきたい。


心を平静にして、俺は一滴、左手にふりかけた。


ん?


んん?


うーん……まず、酷いことにはなっていないかも。痛いわけでもないし、燃えたり、溶けたり、腐ったりしてないね。


よしよし。


そのうえで、さっぱりしたお風呂上がりの感じがほんのりする。もしかして成功しているだろうか。


差が小さいから、そこまでわからないけど、とりあえず、今確認したいことはできた。


よしよし、おちつけ。これがダメでも、まだ、そうまだ、詮索されないという希望もあるんだ。


いやー人に成りすますって、大変ですね。


完全に今回は俺自身のミスだけど。


ただ、それはそうとさ。リフレッシュの創成魔法がそんなに使えないとなると、それはそれで嫌なんだよな……毎日さっぱりしたいし。


うーん、先々のこともちょっと不安がよぎるが、いまは、まだ、それどころではないかな。


さて、せっかくだから後は魔法の練習でもしておくか。


創成魔法はいったんやりきってるから、水を霧状に出してみれるかーとか、熱湯を瞬時に作ってみる練習だったり、反対にこんどは冷水と、室内でできるのは、風を生成してホコリを払って、ちょっとしたお掃除と、植物がおいてあるから、そこにもう一本花をさかせてみたり、と小さく、できることを確認したり練習したり精度を上げてみる。


例えば、熱湯の温度を高くとか、やけどしない程度とか、そうした制御とか。


あと、魔法を収束させるというのも練習している。電撃、風の刃、防御円などなど、それぞれの魔法を収束する、発動はしない、そんな練習。とくに、雷撃の収束練習は重点的に行った。そとでもし、一撃放つぞ、と言うときに、ここが上達していればそれだけすぐに収束させ、威力のある魔法が放てる。やはりセナといえば、俺の中ではあのブラッドウルフ戦で見た、雷撃ビームが頭に残っている。長所は育てたいよね。


他にも、一本の花を咲かせるのも、具体的にイメージして、普通は白の花を黄色だったりして。ちょっと部屋の植物を彩っていく。おーにぎやかだ。


ちょっと試しに桶に水を入れて、タオルを放り込んで、ぐわんぐわんと水を操作してタオルを洗ってみる。洗濯機ってこんな感じじゃなかった?


洗剤とか無いと難しいかな。


とりあえず、そうしたあと、干して風の魔法で乾かしてみる。


うん、奇麗になった、かどうかわからないな。ホコリくらいはとれただろうけど、汚れていたわけではないから。


たまには部屋だけでできそうなこと、を考えてやってみるのも悪くなかった。


魔法はいろいろできていいな。


セナが羨ましい。


それはそれとして、やらかしで皆に発生させてしまった違和感、どう転びますかね。


---


いつ頃からだろうか、セナちゃんの雰囲気がちょっと変わったと思う。


今日は特に変わっていた。あんな魔法薬は俺が知る限りでは見たことがない。


パーブルの人生のなかで、そう、身綺麗にする、そんな、もの、あったかと言われればないし、そもそも、そこまで必要だったかとも思う。


そう、そこだ!


そこなんだよなー、セナちゃんって、いいところの出身であるけれど、俺達の冒険では、わりと汚れてても、汗だくだろうと、嫌な顔をしなかった。


そして、セナちゃんもそこまで、清潔さにこだわっていたかというと、そんなことはなかったと思う。いや、不潔だったというわけではないぞ?


そう、最近は村につくなり湯網をされている。


まだセナちゃんと遠出はしたことはなかったから、そういう時に気になるタイプだっただけなのかもしれない。


そっか、貴族の娘さんなんだもんな。庶民の感覚とは違うか。


そう思うと、ちょっとセナちゃんが遠くの方に行ってしまうようで寂しい。


いや、俺の知らなかったセナちゃんが知れたと思ったほうがいいのかもしれない。


どんどん知って行きたい。彼女を理解したい!


そうだ、俺が理解してあげなくてどうする!


そうだよ、俺が理解してあげなくていったい誰が理解してあげるというのだ!


うんうん、でも、気分転換にと言っていたのは気になるな。


やっぱりあれかな、家に帰るのが嫌なのだろな。


あんな顔、あんまりされてなかったから、もしかしたらいつもは元気に見せていて、実はもっと悩んでいるのかもしれない。


話してくれたらいいのに。


そこまで、信頼されてないのかな。


それはそれで寂しい。


うん、俺では相談するには力不足ですかね。


今日は、練習せずにこもってしまったし、なんだろう、「その、今日はえらくそのお美しい感じですけど、どうされたんです?」なんて、聞いてしまったのがそもそも間違いだったのかもしれない!


もっと上手くやりようはあっただろう!


そうだよ、なんであんな大勢の場所で聞いたんだ。いくらびっくりしたからって、そういう場所では相談だってしにくいだろう。そうだよ、何やってんだ俺……


あー、ごめんよセナちゃん、でも、力になってあげたいんだ。


そうだ、皆がいる場所だから話しにくかったのかもしれない。魔法薬ではなく、今悩んでいることとかもそう。


そうだな、うん、ちょっと尋ねてみよう。


よし、そうしよう!


さぁ君の悩みを、俺にどーんと打ち明けておくれよっ!


---


トントントンと勇気をもって俺は扉をノックした。


「セルディア様、少しお話いたしませんか?」


ちょっと間があって。


「はい、いいですよ」


と、扉が明けられた。


ふわっと華やかな香りに包まれて彼女を見ると、とても愛おしく見える。今日も可愛い、そしていつも以上に輝いている。


「中にどうぞ」


「はっ、失礼いたします」


と言いうわけで中に入って立っていた。さすがに、座るわけにはいかないよな。今は良くても。


セナは、イスをよういして座るのかなとおもったら、反対のベットに腰かけた。


「パーブルも座ってくださいよ」


「ありがとうございます。それでは」


「それより、二人っきりだから、前みたいにはダメかな?」


二人っきりだから!


前みたいに!


ですとっ!


何と感激で涙と幸せがあふれる言葉、あぁっ。


「ですが、いずれはそういう関係になりますし、示しがつかないなどとなるかと」


「でも、他には人はいませんよ? それに、もっと気軽に、ほら、食事に誘ってくれた時のおしゃべりのときみたいにさ、ダメかなパーブルさん」


パーブルさん!


最近は、上下関係をこちらが示してから、セナちゃんは俺にさんをつけずに呼んでいた。それが、さん!


それは、まるで不思議な感覚だ。


さん、とつけられるだけでまるであの頃の距離感に戻るような、いや、むしろ俺が上下関係を、距離をとらせるようなことをしてしまっていたのか。


「わかり……わかったよ。でも、セナちゃんって呼ぶのはうかつに他の場所で言っちゃうとまずいからさ、勘弁してくれ」


「はい、ありがとうございます」


「どうも。でさ、今日ほら、魔法薬で気分転換にさっぱりされてたじゃない、気分転換ってのが気になってさ。セルディア様、何か悩んでない?」


「悩み、ですか……いろいろ悩みはありますよ」


「そうだよね」


「パーブルさんは私がどう悩んでると想像しているんです?」


「そうだな、やっぱり帰るのが嫌だって辛くなったりとか、もっと冒険者続けたかったとか、あるんじゃないかなって」


「はい、そうですね。魔法の練習をパーブルさんやジョニーさんに手伝ってもらってるのも、気分転換だったり、続けたかったなと感じながらやっているんですよ」


「そうだったんだ。うん、セルディア様はすごい魔法使いになる才があると俺は思ってるし、俺達に着いてこようって頑張ってたセナちゃん魅力的だった」


「えへへ、おかげさまで、ちょっと冒険者として自信がつきました。それに、皆とお酒飲んだり、依頼をこなしたり、私はそういうの、あの街での日々に戻れたらなって、ちょっと憂鬱に思っちゃったりもするんです。皆さん優しかったですし」


優しかった、と言ってもらえるだなんて嬉しいことを言ってくれる。


そっか、セナちゃんにとっては、俺達との時間はかけがえのないものになっているのか。いやぁ、嬉しいなぁ。


ん?


あれ?


いあいや、なんか、悩みを聞きに来たはずなのに、俺のほうが心を救われているきがするぞ。


ダメだダメだ。


「どうなるか分からないけどさ。俺、セルディア様の側仕護衛に頑張ってなるからさ!いろいろ、悩みや相談、頼ってくれよ」


「はい、じゃあ、嫌なことがあったら、泣き言とか聞いてください」


「わかった」


そうだ、セナちゃんのそばで、きっとアスマは違う形で彼女の心の支えになっていたと思う。


俺も俺なりになろうと頑張ってきたつもりだった。


でも、まだ足りないのかもしれない。俺ではまだ、心を開き切ってもらえてはいないのかもしれない。


それもそうだった。俺はセナちゃんのことについて、相談もなく、バリスタードに決闘を挑んだんだ。


反対に、セナちゃんは、結果の対価についての代案をバリスタードに相談もなく言った。あれは、まぁ、みんなの前でだから、事前相談はなかったが、それでも俺達をちゃんと呼んで、話をしてくれたんだ。


そうだ。ちゃんと俺もまた、セナちゃんに相談をしっかりして、やっていかなければならない。


「そうだ、秘密にできるかはわからないのですが、ちょっと実験につきあってもらえますか?」


「なんだい?」


ふと、見慣れない色の魔法薬をセナちゃんはとりだした。


それは、あれ、なのか?


「ためしに、パーブルさんの手に振りかけてみてもいいですか」


「どうぞ」


え、いいの?


どういうこと?


ポタッ、一滴振りかけられると、うわぁ、なんだこれ、不思議な感じだ。ぽかぽか暖かい感覚が手に広がって、それでいて爽やさに包み込まれる。


おぉ、おおおぉ。


これは、いいな!


確かにいい。


「どうですか?」


「すごく心地いい、これがあの魔法薬?」


「はい」


「そっか、ありがとう。俺に使ってくれて、もったいないでしょ」


「パーブルさんだから特別です」


ズキュンと俺のハートはもう何度目になるか分からない矢でさらに射抜かれた。


おぉ!


特別だって!


そっか、あははは、いあぁ、よかった。うん、俺、頑張ろう。


「そうか、特別でい続けられるように頑張るよ」


「はい、私の騎士になって下さい」


その後、ほわほわとしたした気持ちで自室に向かった。やばい、幸せすぎて死にそうだぜ!


---


2日後の朝、外で魔法の練習中にワイバーン討伐の5人が帰ってきた。


運びやすいよう解体し、ロープで縛られているが、大荷物をその5人が運んできたのも驚きであったが、そもそもそれだけのワイバーンを相手したうえで、というのがまたすごい。


俺はセナの記憶も今読めるからわかる。


冒険して敵を倒す、それだけでも十分に大変だ。それでだいたい力を使ってしまうものだ。


そのうえで、さらに荷物の運搬となると大変なので、通常は、別に運搬用の人材を確保したりもする場合もある。


いつぞやブラッドウルフとのときに、頭だけ持って帰ったように、そう、どうしようもないときは、簡単に済ませてしまう。


とはいえ、ワイバーンの肉や皮膚、各種素材は貴重品である。捨てるのはもったいないということか、はたまた、それを運ぶくらいも楽勝なのか、どちらかは分からない。


荷物を置いて、村側への報告が終わったバリスタードが俺に話しかけてきた。


「セナ様、お待たせいたしました、無事、討伐完了いたしました」


「ご苦労様です。それにしても、あれはどうするのです?」


「持って帰ります。バルト様への良いお見上げにもなるでしょう」


「そういうものなのですか?」


「はい、でもそうですね、1匹のすこし、肉くらいは、お食べになってみますか?」


「美味しいんですか?」


「はい」


「では、ぜひお願いします」


ワイバーンの肉!


おぉ、異世界ファンタジーで、なんかいいねこういうの。俺、何にもしてないけれど。


それに着いていかなくてよかった。それっぽいかな、と言ってみたわけだが、断ってもらえてよかった。


だって5日間、変身しっぱなしで探索と対処してたってことでしょ。うん、さすがにそこまで維持できる自信はない。


「それで、私は練習に戻りますね」


といって、バリスタードから離れ、ジョニーとの練習を再開する。


当たりこそしないが、どんどんといい感じに風を飛ばせている気がする。ザザザザッ、と柔らかい風の刃がジョニーに向かうのを、的確に彼は避けていく。しかし、もう、それはゆっくりしたそれではなくなっていた。


「セナ様、いいかんじです。これだとパーブルだったら、避けられないかもしれませんよ」


と、ジョニーが楽しそうに言ってくれる。なるほど、いい感じだ。そして、楽しそうと言う点で、話す余裕があるという点で、まだ、ジョニーにとってはきっと朝飯前の攻撃なのだろう。


さて、この村を出立した次は、もうユークララス領の大都市ノレントだ。


天使の翼、本番はそこからだ!

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