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第2章 04話 ワイバーン討伐

私はサーラとして、いま村で商人さんの荷運びなどの手伝いをしていた。


「助かるよ、ありがとね」


「いえいえ」


髭を生やした小太りの人の好さそうな商人のジンさんは、愛想と元気がいい。


なんとも、話しやすそうという感じである。


この村を過ぎれば、あとは次の街のフェルディアスへ到着する。


大きな荷物は持てないので、小さな、薬草や調合の要の素材など、そうしたものを主に運ぶ。


これまでの仕事でもなじみのある品物は多いものの、はじめて聞くものもあり、これはこれでいい勉強だと思う。


場所ごとに取れる薬草、作物、魔物の素材が違う、とのことだ。


ということで、気になるものがあったら、時間があるときにジンさんに聞いてみたりしている。


「これって、なんの薬なんです?」


ふと、見たことのない魔法薬をかかえて聞いてみる。


「おぉ、それか……それはの、オトナの薬じゃ」


「オトナの?」


「そうじゃ。だから、サーラちゃんには、うーん、まだちょっと早いかな」


子ども扱いされた。なんだろう?


飲んでみたらわかるのだろうか?


「値段はどれくらいなんです?」


「一本で金貨2枚だよ」


「うわぁ」


それはまた、高い。


貴重な素材で作られているのだろうか?


さすがに興味本位で買って試して見れる値段ではない。


大人の、といえば、お酒とかそういう感じだけど、なんだろうね。


ともかく、あまりにも高いので、運ぶのが慎重になる。


村におろすのは数は少ない。


つまり、毎日飲むようなものでもないということだ。お酒とは違う感じかな。


ビールなどだと、むしろ運搬用の荷車で、男の人達が引いて持ち運びしている。


お酒か、そういえば、いつぞやの冒険者ランク2のお祝いで開いてもらった宴会は、途中から記憶がないのである。


皆に聞いても教えてもらえないのだ。ちょっと、あの時は何かしちゃったのかなとか思っていたけど、あの時はそれどころでもなかった。


飲みすぎ注意だ。


二日酔いと言うのも初体験した。


やってはダメ、と言われていた創成魔法でと、ちょっと和らげたのは懐かしい思い出である。


アスマは魔族が使う変身の能力をひっそりと上手く使っているようだった。


私も、そうする方がいいのだろうか、なんて思う。


それとも、純粋に媒体魔法をもっと上手くなったり、戦えたり、できることを増やしたりした方がいいのだろうか。


どうやったら、上達できるのか、どれも私には見当がつかない。


そう考えるといろいろ自身の能力を試行錯誤していたらしいアスマはすごいと思う。


毎朝練習しているという話を聞いて、ここ最近はアスマに習うようにしているつもりだけれど、よく分からかった。


魔法を使ってみることはできるけど、何をすれば上達だったり、新しいことができるようになるのか分からない。


うん、やっぱり、皆に、アスマに会いたい。


手伝いながらも、そんな思考がときおり挟まる。


次の街でも、上手くやっていけるだろうか。


ちょっと自信がない。


だって、あのときはアスマに出会ったから、パーブルさんが積極的に誘ってくれたから上手くいった、そんな気がする。


もし、誘ってくれなかったら、私はきっと冒険者ランク2になってはいなかったんじゃないかと思う。


グネムにすら怯えて何もできなかったのが最初の私なのだ。


よく、あの街まで一人旅をしたものだなぁと、無謀さに少し呆れる。


今はいろんな危険と、自分の実力を知っているから、なおさら無茶をしていたことがよく分かる。


よく生きてこれたなと。


運がよかった。


これからはそうはいかないかもしれないと、気を引き締めるのだった。


せっかく、アスマが自由をくれたのだから。


天使の翼は、どちらがかけても成立しない。


---


バリスタード達は彼を含む精鋭5人でワイバーンを捜索し、3日目に遠目で確認でき、4日目の夜には寝どこまで判明できた。


といって、ワイバーンは夜に活動する。寝床が確認できると匂いを消し身を伏せて、見える地点で朝までまった。


夜、冷える中、隠れるために火も付けずに夜明けを待つ。


セルディア様に参加してもらうことを断ったのは、こうした強引に早く対処するためでもあったし、奇襲で確実に一気に仕留めなければならなかった。


これがもし、1体で、フォローもできる範囲であれば話は違ったかもしれない。


といって彼女を危険にさらすのはあまり本位でもないが、そこまで弱いかと言うと、そうではない。


年齢のわりに、順調に魔法使いとして成長されている。


あの時、断る理由として500m先の狙撃がどうこうといったわけだが、はっきり言って、そんなことができる魔法使いは、冒険者ランク4と言っていい。


魔法の威力だけでいえば、今でも申し分ない。もしあの雷撃が当たるなら、ワイバーンなら一撃で仕留められる。


ともかく、余計な思考をおさえて、ゆっくりと朝を待った。


長い、長い、といっても、こういう時はよくある。


朝、日が登り始めたころワイバーンたちが帰ってきた。これから寝る時間なのだ。


睡眠のためにワイバーンが大人しくなったところを見計らい、私は合図を出し、そして一斉にとびかかった。


12体いるワイバーンの5体をそれぞれ一瞬にして切り裂いて、私はさらにもう1体。


ワイバーンが何事かとっ首をもたげた次の瞬間にはさらに残りを。


こうして、ワイバーンの討伐は完了した。


ふぅ……先の街でゆっくりできる時間があったとはいえ、少し疲れたかもしれない。


城に戻ったなら、少し休みたいが……生憎、もう1つの問題は難航しているらしく、出向かなければならないかもしれない。


ふと思い出す。


いつぞや、話を聞いてくれた黒い猫を。


ほんの一時でも、また、そんな時間を過ごしてみたいものだ。


---


俺は、セナの姿で、部屋で創成魔法の練習をしていた。


目下、お風呂に入った感じに身体を清潔にしてリフレッシュさせてくれるそんな奇跡の実現である。


ワイバーン討伐にバリスタードが向かってから四日目の夜、ついに成功した。


おぉっ!


その気分爽快で、髪の毛のサラサラな感じ、まさりこれ、これだよ!


やったぜ、できた、できた、できちゃった!


おぉ、セナってすげぇ才能もってるんだな。


ありがとうセナ。君のおかげで、おれは、お風呂のない生活苦から、ほんの少し、いや、かなり脱出できた!


そんな翌朝。


皆で食事をとっていた時のこと。


パーブルが、


「その、今日はえらくそのお美しい感じですけど、どうされたんです?」


あ……


やりすぎた!


肌はつやつやで、髪のもつやがあって、あーやばい、きっとお風呂はいってのいい香りとかもわかんないけどしちゃったりなんかあるかもしれない!


どうするよ、どうするよ、どうされたよ!


なんて答える!?


思考を高速でフル回転させるのは、いつ以来かなんてどうでもいい。


まず、創成魔法であることを言うのはダメ、絶対ダメ。


何かしら魔導具、魔法薬を使った、と言ってごまかせるのかどうか、いや、そういうのってパーブル達の方が詳しいんじゃないかと思うと俺やセナの知識の範囲でごまかせるかかなり怪しい。


だからといって、そう、消耗品でないといけないよな……貴重だからこれっきりとか言っておいた方がいい気がする。


もし、俺も使ってみたいですとか言われてもこまるから、もう再現できない感じのがいい。今回限りの。


てことは、魔導具はない。術式魔法のスクロールは? あれって使い切りもあるはず、あるあるある、あるけど、あれも媒体魔法の延長だから、それでできそうなものじゃないと、あ、詠唱魔法にそういうのがあるかどうかなんて知らないんだよねー。


おいおいおいおい、どうする!?


他の人達もちょっと不思議そうにしているぞ!


でも、もう身綺麗にできる魔法薬をたまたま持ってて、最後の一滴を使った、とかなんとかそう言うことにするか。


それでいけるか?


どう?


どうよ?


ええい!


「その、身綺麗にできる不思議な魔法薬があったのです」


「そんなものがあるんですか!」


ほら、ほらね、きっと聞いたことないよね。


「はい、私が街にたどり着く前に、不思議なおばあさんから、女性は身だしなみが大事だと受け取ったんです」


「不思議な話もあるものですね」


「はい、気分が落ち込んでいるときに、ほんの少しずつ使っている大切なものなんです」


と、すこし、顔をうつむけて、笑顔をけして、目線をはずし言う。


「そ、そうでした、それは余計な詮索でしたな。お美しいのは結構であります。ささ、食べましょう」


「はい」


と、今度は笑顔になってそれに応える。


いけた?


誤魔化せてます?


とりあえず、ご飯を食べるしかない。


あー心臓がバクバクしている。顔は笑顔に、心はドッキドキ。ひやぁ、でも、この危機感、嫌いじゃない!


---


食事の後、俺はすぐに部屋に戻った。今日はいったん、魔法の練習は無しとしておいた。


理由はせっかく身綺麗にしたので、と言った。うん、大丈夫かな?


というのも、ちょっと手を打っておきたいからだ。


この世界には魔法薬なるものがある。傷を癒す、治癒のポーションとかそんな感じだ。


それも、浅いものならじわじわとと言うのがだいたい一般冒険者が買えるもので、すぐに傷が治るとかかなり高級、欠損が治るようなものはない。


魔法薬にもいくつかあって、遠くのものが見えたり、暗いところでも見えやすくとか、風邪に効くとか、身体に作用するものが多い。


そういう意味では、まったく的外れでもないと思いたい。


それで、手元に数本の魔法薬、傷を癒す低級のポーションがある。


俺が今からするのは嘘を真実にしてしまおうぜ作戦だ。


これは電撃的なスピードが要求されるかもしれない。


もし誰かに、その魔法薬見せてくださいよ、と迫られ、つめよられたらもうダメ。


下手に隠すと怪しまれる。


であるならば、作ってしまおうよ、今ある低級ポーションに創成魔法で願う。変化してくださいお願いします、お風呂に入ったような効果のある魔法薬に!!!


はたして、嘘は真実にできるのか!


いや、するしかない!

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