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アイク先生の魔道具講座(一時間目)

 休みの日、アイクは朝から研究室でとある準備をしていた。

 今日はベルに魔道具の修理を教える日なのだ。

 ベルには魔道具の修理に必要な知識、技術を叩き込んで行きたいと思う。

 今日のために修理が必要になった魔道具をいくつか用意してある。

 アイクが修理を教えるためにぶち壊した…ものではなく長く使い続けたために劣化してしまったものだ。

 劣化したものを使えるようにするという意味では修理よりもメンテナンスの方が適した表し方かもしれない。

 (ベルの魔道具師としての才能はどうだろうな)

 実は優秀な魔道具師になれるかというのは才能で八割が決まる。

 できる人は最初からできるし、できない人は最初からできないということが多い。

 もちろん、時間をかけて練習をしていけば徐々に上達はするのだが、最初からできる人には敵わない上に時間がかかるのでアイクとしてもやりたくはない。

 そんなことを考えているうちに約束の時間になり、ベルが研究室に入ってくる。

 「アイク先生、今日はよろしくお願いします」

 「よろしくね、ベル」

 アイク先生という言い方に少しジワジワ来たものの、気にせず話を進める。

 「早速始めていくんだけど、ベルは魔道具がどうやって動いてるか知ってる?」

 「そういえば前に魔物の素材がどうとか言ってた気がするのでそれで動いてるんですか?」

 「正解。魔道具にはコアって呼ばれる部分があって、そこから魔力を流して魔道具を動かしてるんだけど、そのコアに魔物の素材が使われているんだ」

 「へえ、そうなんですね。ところで魔道具の修理って具体的に何をやるんですか?」

 「修理ではさっき言ったコアに手を入れるんだよ。それについて言う前にもう一個質問。修理が必要になる。つまり魔道具が動かなくなっちゃうのは何でだと思う?」

 「さっき言ってたコアの部分がおかしくなっちゃった…とか?」

 「そういうこと」

 どうやらベルは予想以上に飲み込みが早いようだ。

 「一番多いのは魔力が溜まりすぎて固まっちゃう場合かな。他にもコアが割れちゃったりするときもあるんだけど、その場合の修理はめちゃくちゃ難しいからベルにはまだ早いと思う」

 コアが割れたときの修理ではコアを一度取り出して、一から作り直す必要がある。

 それができるなら魔道具師としては一流と言われるほどなのでベルにはまだ早いだろう。

 「それで魔力が固まっちゃったときの対処法としてベルには魔力操作を覚えてもらう」

 「魔力操作?」

 「そう魔力操作。今から俺がベルの体に魔力を流すから実際に感じてみて」

 「はい、やってみます」

 行くよーと声をかけ、ベルの体に魔力を流し始める。

 「ひゃっ!これちょっとくすぐったいです」

 可愛げな声がベルから発せられた。

 実はくすぐったさを感じられるのはよい傾向で、才能がない人はそもそも魔力を感じられなかったりもする。

 つまりベルはどちらかといえばできる側の人間なのだろう。

 「それが魔力の流れだよ。今度は自分で動かして感じてみて」

 「何か熱いお湯みたいなのが流れてる気がします!これが魔力なんですか?」

 「そう。これを魔道具のコアに流すことで魔力の固まりをなくして魔力がスムーズに流れるようになるんだ」

 「実際にやってごらん」とベルの前に魔力が固まったせいで動かなくなった浄水コップを出す。

 果たしてベルはできるだろうか。

 魔力が感じられて体内で操作ができても体の外の魔力はうまく操作できないという人は一定数いる。

 これに関しては練習でどうにかなるのだが当然、初めからできる方がアイクとしてはありがたい。

 祈りながら見ていると浄水コップの内部が光っていた。

 光っているのは魔力の固まりがなくなって魔力がスムーズに流れるようになった証拠である。それはつまり…

 「成功だよベル。おめでとう。初めてでここまでできる人なんてなかなかいないよ」

 「できましたアイク先生!なんか思ってたよりすんなりできちゃいました」

 「それはこっちの台詞だよ。ほとんどの人は習得に一週間くらいかかるのに」

 「えへへ。なんかできちゃいました。」

 「そういえばこれをやる時の注意点なんだけど、魔力を流しすぎちゃうとコアが負荷に耐えきれなくて爆発しちゃうから気を付けてね。爆発する前は淡く光るんだけど」

 「アイク先生、それってこんな感じに?」

 「そうそうそんな感じに…えっ?」

 「もしかしてやっちゃいました?」

 「いやいやちょっと待っt」

 次の瞬間、周囲に轟音が響いた。

 その日、病院には若い男女が二名、運ばれた。

 後日、ギルドマスターに呼び出しをくらうことをこの時のアイクとベルは知らなかった。




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