魔道具の修理、始めました!
ある日の朝。
アイクはいつもより早く起きて、開店の準備をしていた。
開店の準備と言っても、普段は魔道具を商品棚に並べるといったくらいなのだが、今日のは一味違う。
実は今日から魔道具の修理を店のサービスとして始めるのだ。
以前お客さんから要望があり、それがあまりに多かったので、始めることになってしまったのだ。
なってしまったというのはアイクが魔道具の修理をしたくなかったからだ。
これは別にアイクが魔道具の修理をできないからというわけではないし、面倒だからというわけでもない。…まあ面倒ではあるのだが理由は他にある。
それは魔道具の修理は致命的なまでに稼げないということだ。
なぜ稼げないのか。
まず、魔道具の修理の料金は安い。
もし高いと、じゃあ新しいやつ買えばいいじゃんとなってしまうため、これは仕方がないだろう。
それに修理にはそこそこ時間がかかる。シンプルにコスパが悪い。
また、時間がかかるため、仮に大量の魔道具の修理を頼まれた場合、恐らく時間の関係で店が閉まった後に家で作業をすることになるだろう。
営業時間外の作業__すなわち残業。これだけは何がなんでも避けなければならない。もちろん、このような修理の依頼があれば当然お断りさせていただくが。
こうしたもろもろの理由があり、アイク的には修理をするより新しく作った方が楽なのだ。
他にも修理をしてしまうと、新しい魔道具を買う人が少なくなってしまうだろう。
修理をするということはその魔道具を長く使ってもらうということであり、日常的に使う魔道具は買い換えの頻度が高いのだが、それが低くなってしまう。
アイクの修理の技術は無駄に高く、修理後の魔道具は新品と同じくらい使えてしまう。
これら諸々の理由から、アイクは魔道具の修理をやりたくなかったのだが、しぶしぶと言った感じで始めることにした。
それに魔道具の修理では稼げないが、店の利益に関しては冒険者用の魔道具が大半を占めている。
どこかの誰かさんのせいで…。
さすがに『魔法剣』などの修理はする気がなく、あくまで普段使いをする魔道具のみと言った感じだ。
それでも魔道具の修理は面倒だ。あまり好きな作業ではない。
アイクはため息をつきながら修理のための器具を黙々と整えていった。
開店時間。
今日の冒険者の数は以前に比べると少なく(それでも多いのだが)、ギルドと契約しておいてよかったなと思う。
ラサラスに頼んでギルドにアイクの店の冒険者用の魔道具をいくつか置いてもらうことにしたのだ。
しばらくは普通に接客をしていた、というよりできていたアイクだったが、当然、始めると告知していたのだからこういうお客さんも来るだろう。
「すみません。実は魔道具の修理をしてもらいたいんですけど」
「…はい。どの魔道具ですか? 」
アイクはだるさを隠しつつ話しかけてきた主婦らしき人に尋ねる。本当に隠せていたかは分からないが。
「この浄水コップ十個をやってほしいです」
「はい。お値段1000エンになります」
「あら、安いですね。これならもっと持ってくればよかったかしら」
頼むからやめてくれと願いつつ、修理を始める。十個でもかなり大変なのだ。
結局、この日は魔道具を100個以上修理することになってしまった。
(今度ベルに魔道具の修理を教えてみよっかな)
アイクが見たところ、ベルは魔道具が好きそうだ。
以前研究室を見せてほしいと言われたことがあり、その時の様子からそう思ったのだ。
というかそもそも魔道具が好きでもなければアイクの店の求人にあの年齢の子が応募することはないだろう。
教えたら店でもやってくれるかもしれない。
(でも教えるのも面倒だな)
などと考える怠惰なアイクだった。
閉店後の夕食の時、アイクは思い切って魔道具の修理の件を切り出す。
「ベル、今日から魔道具の修理を始めたでしょ。それでベルも今度やってみない? 」
魔道具を修理する面倒と教える面倒。
アイクは教える方をとったのだ。
今面倒なのは教える方だが、将来的にはこうした方が楽になるだろう。
「本当ですか? 私やってみたいです! 」
(キター!)
「じゃあ明日は休みだしその時にやろっか」
「はい! 実は私もアイクさんみたいに魔道具が作れたらなって思ってたんです」
「いつかベルが作った魔道具を店に置いてみたいね」
案外ベルが乗り気だったので安心したアイクだった。




