ギルドに呼び出されちゃいました!?
最高の売り上げを叩き出した次の日、開店時間前にもかかわらずコンコンコンとノックが聞こえた。
ベルの方を見るも心当たりはなさそうだった。不思議に思いつつもベルと共に玄関に向かいドアを開ける。
目の前には眼帯をしたヤ○ザが立っていた。
いや、正確に言うとヤ○ザみたいな人が立ってこちらを見ていた。
いや、にらんでいた。
アイクが隣を見るとベルがガタガタと震えている。アイク自身もベルに負けないくらい震えているが。
二人して目の前のヤ○ザに恐怖していると、ヤ○ザがついにアイク達に話しかけてきた。
「こちらにアイクさんという方がいらっしゃると聞いたのですが今はどちらに? 」
意外にも丁寧な口調だったので驚いた。ヤ○ザっぽい見た目だからもっと威圧的な感じかと思ったのだが。
「アイクは俺です。この店の店長をやっています」
「おお、貴方がアイクさんでしたか。大変失礼致しました。わたくし、すぐ近くのギルドでギルドマスターをやっております、ラサラスと申します。突然で申し訳なのですが、本日の営業が終わりましたらギルドに来ていただけますか?」
どうやらヤ○ザことラサラスはギルドマスターだったらしい。…とてもそうは見えないが。
「行くのは構いませんが、どうしてですか? 俺が何かしましたか?」
「申し訳ありませんが、それは来ていただいた時にお話しさせていただきますので」
そう言うと失礼しますとだけ言って去っていった。
呼び出されるようなことをした覚えはなかったので、とりあえず心当たりを探してみる。
ギルドマスターに呼ばれるレベルのことはしていないと思う。たぶん。
それでもわざわざギルドマスターが訪ねてくるということは何かやってしまったのだろうか。
そんなことを考えていると、緊張が解けたのか隣で座り込んでいるベルが話しかけてきた。
「アイクさん! あのヤ○ザみたいな人、なんなんですか? 」
「ラサラスさんね。本人曰くギルドマスターらしいけど」
「なんで急にうちに来たんでしょうか?」
「もしかしてベルが何かやらかしちゃったとか?」
「何で私何ですか? やらかしてそうなのはアイクさんの方だと思いますよ。アイクさん何やらかしたんですか? 」
「いやいや、もしかしての話だから。それに何もやってないから。…たぶん」
ベルからは懐疑的な眼差しを向けられたものの心当たりがないのだから仕方がない。
それでもギルドマスターが直接尋ねてくる用件となれば相当やばいだろう。
ギルドに着いたらとりあえず土下座でもするべきだろうか。
やっぱり何か手土産をなどと考えていると、開店時間になってしまった。
「ベル、もう時間になっちゃったから、とりあえず終わってから考えよう」
「分かりました、アイクさん。とりあえず謝り方だけ考えておいてください」
なぜアイクが謝る前提なのかは謎だったが、もう何人かお客さんが入ってきているので仕方なく対応を始める。
その日はなぜか冒険者が一人も来なかった。
閉店後、アイクはベルと二人でギルドに向かっていた。
「アイクさん。謝り方は思い付きましたか?」
「うん、バッチリだよ。まず土下座。そして謝る。ひたすら謝る。これで少しはマシになると思う。」
「ちゃんと謝ってくださいね。私も謝りますので」
アイクとしては結局自分が何かやらかしたのだろうという結論に至ったため、ひたすら謝る方針となった。
五分ほどでギルドに到着した。
緊張したままギルドに入り、受付嬢に用件を伝える。
受付嬢にも話が来ていたのか、用件を伝えるとすんなりギルドマスター室に案内してくれた。
目の前にはかなり大きめの扉があった。深呼吸を繰り返し、なるべく緊張をほぐそうとしてからコンコンとノックして入る。
入ると机を挟んで対となっているソファーに座っているラサラスの姿が見えた。
「ようこそアイクさん。この度はお忙しい中、あr」
「この度は誠に申し訳ありませんでしたー!」
先手必勝。アイクは部屋に入った瞬間、土下座を繰り出す。
隣ではベルが必死にペコペコ頭を下げている。
しばらくすると前方からラサラスが動く気配がした。
「あ、アイクさん。急にどうされたのですか? 入ってくるなり土下座なんて。とりあえず座ってください」
「えっ?」と二人の声が部屋に響く。
ひとまずは許されたのだろうか。そろそろこの姿勢にも疲れてきたのでアイクはベルと共に素直に目の前の席に着くことにした。するとラサラスが慌てたように、
「アイクさん。急に土下座なんてどうしたのですか?」
「いやいや、悪いことをしたのなら責任を取って土下座をするのが普通でしょう」
「えっ悪いこと? アイクさん、何かしたのですか?」
「えっ何もしてないんですか?」
「えっ? 」
「はっ ?」
「いやだって、ギルドマスターに呼び出されたので、何か怒られるようなことをしたのかと」
「いや違います。誤解させてしまい申し訳ありませんでした」
…どうやらアイク達の勘違いだったようだ。最悪指が飛ぶかもなと思っていたがそもそも問題なかったらしい。ちなみにクビが飛んだことならあるが…。
安堵しつつアイクはラサラスに尋ねる。
「じゃあどうして俺たちを呼んだんですか?」
そう聞くとラサラスが神妙な面持ちで答えた。
「実はギルドの奴らから話を聞きまして。何でも属性を二つ付与した『魔法剣』を作れる魔道具師がいるとか。正直最初は嘘だと思ったのですが…」
「なるほど。たぶん、というか間違いなくその魔道具師は俺です」
「じゃ、じゃあ『魔法剣』に魔法を二つ付与できるのですか? 本当に?」
「はい、本当に作れます。」
「……そうですか。話は本当だったのですね。それで本題なのですが、ギルドでその『魔法剣』を定期的に買い取らせていただけないでしょうか? 」
「ええ、それは構いませんが…」
「もちろん、相応のお金はお支払させていただきます。そうですね、一ヶ月に十個でこのくらいでどうでしょうか? 」
提示された金額は想像していたより桁が三つ多かった。
今までの売り上げなどゴミ同然と言わんばかりの額。
「高すぎませんか?」
「いやいや、これでも足りないかと思ったくらいですよ。何せ属性を二つ付与できる魔道具師はかなり希少ですので」
「これで十分ですよ」
アイクは本気を出せば五つまでなら属性を付与できるのだが、二つでこの反応なら黙っておいた方がいいだろう。
言ったら間違いなく面倒なことになるだろう。
その後は二時間くらいの諸々の面倒な手続きを済ませ、ようやく帰ることができた。
「アイクさん、怒られるなくてよかったですね」
「本当にな。まじでやばいかと思ったんだぞ? 」
「まあでも結果的にはよかったんじゃないですか? 」
「そうだな。…財布も潤ったことだし今夜は焼き肉かな」
「私、オークの肉が食べたいです」
「それいいね。今日は奮発して高いやつ買っちゃおっかな」
「買っちゃいましょう! 」
次の日、生の肉を食べたせいで二人ともお腹を壊したのであった。




