グリースの大失態1
宮廷で魔道具師として働くグリース・ヴァルツは大きなため息をついた。
なぜ自分がこんなにも働かねばならないのか。
普段は仕事の全てを部下に押し付けていて自分は働かずにすんでいた。
今まではそれで問題なかったのだが急に仕事が回らなくなってしまい、仕事せざるを得ない状況になってしまった。
手元で業務をこなしつつ時計を見る。もう少しで日付が変わりそうだった。
いつもならもう家で酒を飲みながら寝ている時間だ。
グリースは再び大きなため息をつく。
一体なぜこうなってしまったのか…
遡ること一週間。
その日グリースはとある男を解雇していた。
その男の手柄はもう既に取りつくしていて利用価値がない上、史上最年少宮廷魔道具師だと周囲かちやほやされていることにムカついたからという理由で解雇したのだ。
グリースがこういった理由で人をクビにしたことは一度や二度ではない。
今まではたいした問題はなかった。
宮廷魔道具師は二十人程いて、それが一人いなくなったところでたいした影響はなかったのだ。
しかし、今回は違う。
グリースが解雇した男は一人で全体の仕事の半分以上をこなしていた。
グリースはその事を知らなかった。
その男の同僚でさえも「あいついつも仕事頑張ってるな」くらいの認識しかなかった。
グリースは最も重要な人物を解雇してしまった。
そしてどうなったか。次の日から地獄が始まった。
グリースがいつものように始業から一時間程遅れ行くと職場が何やら慌ただしかった。
あちらこちらから悲鳴が聞こえる上、バタバタと走り回っている者もいる。
何事かと思いグリースは近くの泣きそうな顔をした部下に声をかける。
「おい、朝から何をしている!きちんと仕事をしろ!」
「グリースさん。それが今日までの仕事が大量に残っていたようで…」
「ふん、それだけの話か。それくらいさっさとやればいいだろう」
「その量が普通にやったら一ヶ月はかかるレベルの量でして…」
「一ヶ月!?なぜその仕事を直前までやらなかったのだ!」
「そ、それがですね。その仕事は今までアイクという人が一人でやっていたらしいのですが急にいなくなってしまって」
そこまで聞いてグリースは思い出す。
アイクは昨日自分がクビにしたやつだと。
「ああ、アイクなら俺が昨日クビにしたぞ。あいつなんかがやる仕事なら誰でもできるだろ」
「それが無理だからみんな慌ててるんですよ!一ヶ月分の仕事ですよ、一ヶ月!普通に考えて無理に決まっているでしょう!」
そこから先はまさしく地獄だった。
終わっていない仕事は国王から直接依頼されたものであり、必ず期限内に終わらせなければならなかった。
グリースの部下達は死ぬ気で仕事をした。
自分の立場が危ういと感じたグリースも久しぶりに仕事をした。
時刻は午後十一時五十分。
普段は一人でこなしていや仕事を二十人でやったのだ。
ここまで残業して終わらない訳がない…訳がなかった。
仕事は全体の二割程しか終わっておらず、内容も雑だった。
とりあえず終わった分だけでもとグリースは終わった仕事を国王に送った。
次の日、グリースは国王に呼び出された。
グリースの大失態2は明日投稿する予定です。
(3があるかは未定)




