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緊急会議開催

 次の日、グリースは始業一時間後に職場に来ていた。

 自分の席に着き目的のものを探す。

 目的のものというのは国王から依頼された仕事だ。

 それを期限内、つまり一週間以内に完璧に仕上げ、提出しなければもう既に危ういグリースの立場がさらに危うくなってしまう。

 全く整理整頓がされておらず、探すのに苦労したものの五分足らずで国王からの依頼書を見つけた。

 そしてグリースは近くで仕事をしている部下に声をかける。 

 「おい、今すぐ全員を会議室に集めろ! 今すぐにだ! 」

 「ぜ、全員ですか? 分かりました」

 部下は多少動揺していたものの指示を受け取り、五分後にはグリースを除く二十四人全員が会議室に集まった。

 少し遅れてグリースも会議室に入り席に着く。

 どっさりと椅子に腰掛け、鼻息をフンッとならす。

 「今日、貴様らには朝からわざわざ集まってもらった。その理由が分かる者はいるか? 」

 回答を口にするものは誰一人としておらず、部屋には重苦しい沈黙が訪れる。

 「この前の仕事の件に決まってるだろ馬鹿者共!なぜ誰も答えない? 貴様らが無能なせいでこの私が国王様から直々にお叱りを受けたのだぞ! 」 

 グリースがそう怒鳴ると部下達が次々に頭を下げ、謝罪の言葉を口にした。

 「申し訳ございません。あそこまでの仕事が残っているとは気が付かず…」

 一人の部下がそこで疑問を口にする。

 「そもそもどうしてあの量の仕事を一人に任せたのですか? 」

 「そんなこと私が知るわけがなかろう! 同僚の仕事の管理も仕事のうちだぞ? なぜそれができんのだ! 」

 グリースの発言を聞いて部下達は思った。

 なぜ部下の仕事を管理できないのかと。それはお前の仕事だろうと。

 しかし、口に出す者は誰一人としておらず、申し訳ありませんと口々に言う。

 「フンッ、もうこの話はいい。それでだ。以前国王様からいただいた仕事があっただろう。今日はそれについて話をしようと思って会議を開いたのだ」

 部下の一人が尋ねる。

 「それはどんな仕事なんですか? 」

 「空間を拡張する魔道具の開発だ。私が前に受け取った報告書にはもう構造自体は確立していてあとは作るだけと書かれていた。この仕事をやっていたのは誰だ? 」

 グリースが問いかけるも声をあげる者は誰もいない。しかしグリースにはこの仕事を間違いなく部下の一人に任せた(押し付けた)記憶があった。

 それは間違いではない。ただその部下、いや部下だった者はここにはいない。その事にグリースは全く気付かずに

 「誰もいないのか? 全く手をつけてないからといって隠しても無駄だぞ! さっさと名乗り出ろ! 」

 グリースは声をあらげるが名乗り出るものはいない。

 「フンッ、もういい。どうせそいつは役立たずだろう。」

 呆れたよう声を出したグリースだったがこの場合、正しいのは部下達の方だ。

 「昨日国王様に 次はないぞ と言われた。そこでだ。貴様ら全員には今やっている仕事ではなくこの仕事をやってもらう。最優先でだ。」

 そこで部下の中でも歴が長そうな者が質問を飛ばす。

 「グリースさん。そもそも空間を拡張する魔道具の作り方を誰が知っているのですか。私はそんな魔道具今までに聞いたことがないのですが」

 質問した男が周りを見回しても反応するものはひとりもいない。

 全員が首をかしげている。そんな魔道具が作れるのかと。

 「魔道具の構造を確立したと報告書書いた人は一体誰なんですか? 」

 部下にそう言われ、持ってきた資料のいくつかを見る。その中には例の報告書があった。

 そこにはグリース自身がちょうど数日前に解雇した男名前が載っていた。

 「な、アイクだと? 」

 「アイクですって? でもアイクはグリースさんがついこの間にクビにした気が…」

 「確かにアイクは私が以前解雇してもう今はいない。だが一週間もあれば1つの魔道具を開発して作るのなど余裕だろう? 」

 歴が長そうな者が再び発言する。

 「グリースさん。そんな魔道具を一週間で開発するなんて無理ですよ。空間の拡張の魔道具なんて神話レベルですよ」

 「甘えたことを言うな! ここには宮廷魔道具師が二十五人もいるのだぞ! それくらいできるだろう! 」

 「グリースさん。先ほども言いましたが無理です。昔魔道具師のトップだった者がその生涯をかけて研究をしても無理だったのですよ」

 そこで他の部下が気づく。

 「というかアイクはその魔道具の作り方を知っているのですよね。それならグリースさんがアイクを連れ戻せばいいだけなのでは? 」

 その言葉に対しグリースは呻き声をあげる。

 自分がクビにした男に頭を下げて戻ってきてもらうなどしたいわけがない。

 しかし今回はグリースの地位が懸かっている。もし失敗すればただではすまないだろう。

 「そうだな。それならば私が明日、アイクを連れ戻してこよう」

 グリースは苦々しく声をあげた。

 「作り方さえ分かればその魔道具でも一日で作れるだろう? 今回失敗したら全員クビが飛ぶと思え! いいな? 」

 グリースは最後にそう叫び会議を終わらせた。

 明日、アイクに頼み事をしなければならないと考えると屈辱的だが、自分のクビが飛ぶよりはまだましだろう。

 どいつもこいつも使えねえなと一番役に立っていないグリースは思いながら始業から二時間も経っていないにもかかわらず、職場をあとにした。 

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