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ただいま迷走中!?  作者: 呪理阿
六月 梅雨だろうがどんどん迷走
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97/102

97 馬車の中で

「お前が子供の取り扱いが上手とは思わなかった。人は見かけによらないな」

「でしょう?」

「皮肉だ」

「へぇ」

 そう答えると、ギルベルトは窓の外へと視線を向けた。

 生意気な顔の見る先は、ガラガラと言う車輪の音と共に流れて行く。森のひんやりした風が頬を撫でた。

「……ところで、お前は何をしに行こうとしているんだ?」

「……知らないのに、よく馬車出そうと言う気になりましたね」

 彼はひょいと眉を上げ、意外そうにオーラフを見る。

「今日から一週間の休暇をもらっているからな。お前のする事なら時間の無駄にはならんだろう」

「時間の無駄にならなかったら何でもするんですか? いつか絶対後悔しますよ」

 やかましい。もっと他の言い方は出来ないのか。オーラフはぐっと顔をしかめた。

「不吉な予言をするんじゃない」

「忠告です」

 オーラフは大きなため息を吐き、クッションに背中を預ける。薄く目を開いて、陽の光で緑に光る瞳を睨みつけた。

「十二のガキに忠告されてたまるか」

「十六なんですが」

 素早く、そして馬鹿にされているかのような口調で訂正される。オーラフはさらに顔をしかめ、二、三度躊躇った後に言い返した。

「……私の中では、お前は永遠の十二歳なんだ」

「不老ですか俺は。いくら最初に会ったのがそん時だからって。本物の十二歳がここに居ますよ」

 ギルベルトが、隣に座った彼の弟を指す。名はテオバルトと言ったか。初めて会った頃のギルベルトによく似ている。

 しかし、似ていないかと聞かれても肯定してしまいそうだ。

 まず角が違う。次に髪型が違う。そして、まとっている雰囲気も少しばかり違っていた。兄と弟の差か? 話をしてはいないから、正直よくは分からない。

 分からない事を考察するのは時間の無駄か。

 もうすぐ十五になる弟の一人と、簡単な言葉を使って喋っている彼。今の話題は旅らしい。弟もテオバルトも、なかなか楽しそうだ。

 ふと、ギルベルトの方へ視線を戻してみると、彼は馬車の隅の隅に体を預けて眠っていた。

 あまりにも珍しいその光景に、オーラフは身を見開く。

 コイツ、寝るのか……。てっきり寝なくても平気なのかと思っていた。むしろ、寝ないものだと思ってさえいた。

 ぽかんとしていると、ギルベルトが顔を上げた。ついでに、左の人差指がオーラフの鼻先に付きつけられる。

「86人目」

 そう動いた唇が弧を描いた。

「なんだ?」

「寝たふりに引っ掛かった奴。暇つぶしにはもってこいだから、今度やってみたらどうです?」

「遠慮しよう」

「残念だ」

 言葉とは裏腹に、彼は分かっていたとばかりに弟たちを見る。

 いつの間にか、話は魔法の事へと切り替わっていた。

「ギルベルト、そう言えば、お前は旅をしていたな」

「何を今更。忘れてたんですか?」

 余計な言葉も混ざっているが、そこは気にしてはいけない。

「土産話は無いのか?」

「期待してたんですか?」

「ああ。興味はある。この身ではできんからな。お前にとってだって、暇つぶしになるだろう? 減る物じゃ無し」

 ギルベルトはぴくりと眉をうごかし、少しの間なにかを考えるかのように沈黙した。

「んー。オーラフ兄さんとこの双子の話とか」

「会ったのか?」

「ずいぶん派手な攻撃魔法を操るようになりましたね、ディーン。いつ森がなくなるか、ちゃんと注意しといてくださいよ。相手してみたら、遠慮の『え』の字も無く攻撃してくるから大変でしたよ」

「ほう? 手こずったのか?」

 意外な言葉に、思わず身を乗り出した。

「まさか。簡単に喉元へナイフ突きつけることができましたよ」

「……やったのか?」

 ナイフを突きつけられて青くなる弟の顔を思い浮かべながら、オーラフは顔をしかめた。

「はい。戦い方ってものをちゃんと教えてやってください。今ならやる気は十二分にあるでしょうから」

「そうか。……そうだな。この後にでも訪ねてみるか」

 深くうなずくと、ディーンと一緒に居る妹の方も思い出した。

「フィーアはどうだった?」

「面白い薬を作りますね」

 そう言って、彼は薄く苦笑した。

「遊びと真面目のメリハリをしっかり付けて、馬鹿なものと危ないモノとを作ってる」

「褒めているのか、けなしているのかどっちだ」

「両方です」

 きっぱりと、はっきりしない返事が帰ってくる。分からなくもないが……。

 気が付けばいつの間にか、ギルベルトによるディーンとフィーアの様子についての報告、感想になってしまっていた。改めて旅の話を聞こうと口を開こうとするより先に、ギルベルトが声を上げた。

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