85 街は今日も平和です
「馬って難しいねぇ~」
「っつか、思いっきり怖がられてなかったか?」
「……違うも~ん!」
タラッド‐タドだ。
一晩泊めてもらった後、馬に乗るのを教えてもらった。
……全く動いてくれなかったという……。まぁ、なんだ。悲しい結末? が待ってた。
動いてくれたっちゃ、動いてくれたんだぜ? 大暴れとも言う。危うく振り落とされるところだった。主にヒアが。
昼飯までごちそうになった後、街の入口まで馬車に乗せてもらった。いい人達だった。
……ニールはともかく。
「あっ」
「ヒア? どしたんだよ」
「学校~……」
「げっ」
きれいさっぱり忘れてた。今、日本は何月の何日? まさか年まで違ったりしてねぇよな……? 浦島太郎みたいになるのはごめんだぜ、俺。
「気にすんな、時間の流れはほとんど同じだ」
『……ほとんど……』
それって、いくらか違うって事だよな?
「こっちでの三日は、向こうの四日。それくらいの違いしかない」
いや、丸一日ずれてるよな。一日につき八時間のズレが生じてるよな。
「帰ったらちゃんとノート見せて貰えよ」
笑いごとか? 俺が家庭学習一切しない、ってかできないの知ってんだろうが。……威張れることじゃねぇけど。威張ってる気はねぇからな。
「あぁっ! ラオマネット様!」
……荒くれ野郎の呼び方が『さん』から『様』に変わってるし。何があったんだ、昨日の夜から今朝にかけて。
『お帰りなさい!』
なんて息がそろってるんだ。相変わらず。お前等もう兵隊なれよ。軍隊作れよ。滅茶苦茶息揃ってるから。
「ただいま~!」
ヒアが高い高いされた。それを見て通りすがりの女の人が顔を強張らせ、『シェリフ!』と、保安官を呼ぶ声が聞こえ……。え、保安官呼んじゃった?
「コラッ! 何をしている!」
「見てわかんねぇか、ヒルデガート様に高い高いを……」
いかつい男が『高い高い』とか言うのって、何かシュールだな。
「何っ! 他界他界!?」
……シェリーフ。何かすげぇ間違い起こしてねぇ? 発音が死ぬ方のになってたんだけど。
「ヘクター、コイツ等は遊んでやってくれてるだけだから。気にしないでくれ」
「そう、か? これから何かしでかすんじゃ…………うん? 何故俺の名を」
アンタ気付くの遅い。
「覚えてないか」
「もしや……ダニドス!」
「誰がだ。ジャイズンだ、ジャイズン。文字数すら合ってねぇぞ」
ヘクター……。奥さんのシャロンは覚えてたのにな、ジンの事。
「いや、すまない。今指名手配中なんだ。デイビス・ダードン」
名前思い切り変わってね?
「……コイツだ。見てないか?」
指名手配のポスターに描かれてる男の人。その下には『ゼパニヤ・グリーン』
「一文字も合ってないじゃん」
シルのジト目でヘクターはそっぽを向いた。拗ねんなよ、いい年したおっさんだろ。いや、まだ見た目若いけど。凛さんと父さんとに比べたら十分若いけど、さ。俺等から見たらやっぱりおっさんだ。
「で、コイツを探していると」
「あぁ。このあたりの荒くれ者のボスだ」
あの弱い奴。
「心当たりはないか?」
「ある」
「すごくある」
「滅茶苦茶ある」
「困るほどにある~」
「何っ!?」
いや、だって、なぁ?
『今、アンタの目の前に』
ヒルデガートを高い高いしてる、あのデカい奴。
どっからどう見ても、そこに描かれてるゼパニヤだ。
「なっ!? お前か!」
大丈夫か、この保安官。




