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ただいま迷走中!?  作者: 呪理阿
六月 梅雨だろうがどんどん迷走
83/102

83 キャンベル牧場

「わぁ~っ! 牛が居る~!」

「牧場だもの。あっ、鶏も居る」

「牧場だかんな。あ、シマウマも……って、は?」

 なんでシマウマ? 何が悲しくてシマウマ? 何がどうなってシマウマ?

 タラッド=タドだ。

 街を出るところで、牧場に行く馬車を捕まえて乗せてもらった。

 ちなみに、馬車に乗せてくれたアントニーっていう優しい兄ちゃんはここの牧童なんだとか。買い出しで街に出てたんだってさ。

「アントニー、アレは?」

「よそよそしいなぁ、トニーでいいぞ?

 で、何だ……あぁ、あれ。またか。気にしないでくれ、坊ちゃん等のイタズラだ」

 白い馬に黒のペンキでも塗ったのか? どんな坊ちゃんだよ……。

「トニー! お帰りなさいっ!」

「うぉっ、わっ!」

 あ、トニーが女の子の突進でこけた。もうちょっと踏ん張れよ。

「バービー、もうちょっと加減してくれ!」

「えへへっ。ねぇ、この人達だぁれ?」

 光より少し小さいくらいの、バービーとかいう子は俺等を指差す。

「ジャイズン、シヴィル、タラッド、ヒルデガート。お客さんだ。ほら、お前も自己紹介しろよ」

「はぁい。バーバラ・キャンベル。バービーって呼んで。よろしくっ!」

『よろしく』「よろしくー」「よろしく~」

 人懐っこそうだな。可愛がれてそうな子。

「この牧場の嬢さん。でもって……おい、ブライアンにペンキ塗ったのはお前だろ」

 ブライアン? あぁ、あの白い馬。名前付いてるんだな。

「バートもだもんっ!」

 あ、バービーが逃げた……。足速ぇな、あんな小せぇのに!

「ね、トニー。バートってのは誰?」

「バートランド、坊ちゃんだよ。バービーの双子の兄だ」

「ふぅん、大変そうだな、アンタ等も」

「……ジャイズン、その根拠は?」

 ジンとシルに、トニーがじろりと視線を向けた。

「イタズラは周りが困れば困るほど楽しいモンだからな。まだまだ止めねぇだろ」

 イタズラっ子の大将が言うなら間違いねぇな。

 もちろん、その大将に付いて行ってたのはシル、俺、ヒア。

「はぁ……。よし、二度とやりたくなくなるような仕置きを用意してやろう、相談して……」

 トニーが怖ぇ。誰と相談する気だ。

「お帰りなさい、トニー。ご苦労様」

「ただいま、シャロン。バートは何処か知ってるか?」

「クレムと一緒じゃないかしら。それより、その子達は……?」

 玄関の方から出てきた、まだ若く見える女の人。若い、けど雰囲気が『お母さん』っぽい

「ジャイズン・ラオマネット。覚えてくれてる事を期待してたんだけどな」

「覚えてるわよ! でも、人違いだったら失礼でしょう?」

「知り合いか?」

 トニーが割って入る。そりゃ、そうだろうなぁ。

 ジンが言ってた、泊めてくれそうな場所の一つかな。ここって。

「昔、旅の途中に寄ってくれたことがあったのよ。ミャやラドはどうしたの?」

「さぁ、どっかぶらぶらしてるんじゃねぇのかな。一緒じゃない」

「ジンはもう、一人前だものね。さ、とりあえず中に入りましょ。丁度ケーキができたところよ」

 トニー、ガッツポーズはいいけど、そういうのはせめて心の中でしろよ。

「その子達の事も聞きたいし、ね? トニー、皆を呼んで来てくれる」

「へいっ」

 おぉ……馬にまたがって走り出して行った。かっけー。

「マミー、クレム捕まえて!」

 男の子の声。それと同時に……シープドッグって言うのか? ふさふさの茶色い犬が走って来た。

「え? きゃっ!」

 そっちに気を取られたシャロンが、何もない所でこけた。

「わぉ、大丈夫?」

「シル、ナイスキャッチ」

「タド、それ褒めてんの?」

 褒めてる褒めてる。どう聞いたら褒めてないように聞こえるんだ。

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