82 どうやら彼等は洗脳されているようです
「どうですっ! この店の料理、旨いでしょ!」
「うん、美味し~!」
「あぁ、何て可愛いんだ」
「お、コレ旨ぇ。悪いなぁ、奢ってもらって」
「いやいや、とんでもない! 喜んでもらって光栄ですよ!」
「この酒旨いんスよ! どうです!?」
「酒飲んじゃ駄目な年なの」
「じゃあこっちの果汁ジュースは! 手絞りなんだそうで……」
「あの、こっちの酒どうです? ちぃとキツめだけど、これがまった旨いんです!」
「ん、貰う」
屈強な男達が、十代前半から半ばの小柄な四兄弟をボスのように扱っている。……シュールだなぁ。
どうしてこうなった。
俺等がこいつ等を全員倒したからだ。逃げないで昼飯奢ってくれるなんて、しかもおすすめ教えてくれるなんて、真面目だなぁ。ん? 真面目って言うのかこれは。多分違うな。律儀、とか?
タラッド=タドだ。
この店の昼飯は旨い。しかもタダだ! 奢ってくれるから。きっと二倍旨いな。
「ジンー……酒飲んでるし」
「少し飲むか?」
「正月に神社で飲む甘酒は不味かった」
……シル、甘酒とジンが勧めてる酒は大分違うと思うぞ。
「ダグラス、お前も飲めよ」
ジンもあっさり対象変えるのな。
「いいのか?」
「どうせ金を払うのは俺じゃない」
「……アンタなぁ」
「トップ命令」
呆れつつも酒はしっかり貰う、面長の男。多分、年は十代後半から二十代の前半。
ダグラスって言って、倒れた奴の中で一番早く復活した奴。勿論デカいし、がっちりきっちり筋肉が付いてるけど、縦にもデカいから細身に見える。
ちなみに、本来のボスはまだ伸びてる。何でコイツがボスやってたんだ?
わらわらと集まってる時は小物に見えたけど、ダグラスの方がよっぽどボスっぽい。
「ダグラスも大変だねー。あんなのに付いてくとか」
シルが何か飲んでる。果肉っぽい粒々が入った、薄い黄色の液体。リンゴジュース?
「俺はあいつの仲間じゃない」
「……喧嘩に巻き込まれた哀れな人?」
「椅子は飛んでくるわ、マッチョは飛んでくるわ、酒瓶は飛んでくるわ。全部叩き落とすなりかわすなり、できると思うか?」
「一つ二つ当たっても気絶はしなくない?」
「生憎、その一つ二つの当たり所が悪かった」
まぁなんだ、ドンマイ、ダグラス! 元凶俺等だけど。
「はう~、お腹いっぱ~い」
別のテーブルで、ヒアが嬉しい悲鳴を上げてる。
「えっ、もう!? ほとんど食べてないじゃないですかっ!」
「皆と同じにしないでよ~、私女の子だよ~? 子供だよ~?」
「それにしたって、もう少し食べますよ!」
「そうそう、だってこれ、お子様ランチですよ!?」
酒場にお子様ランチあったのか……。
「色んなメニューが楽しめて、かつ小さなお子様でも全部食べることができる量の、お子様ランチですよ!? 大人になったら食べられない、あれですよ!?」
ご丁寧になんで説明してくれてんだ。
「そろそろ出るか」
「ジャイズンさんまで!? ほとんど食べてないじゃないですか!」
「酒もあんまり飲んでないじゃないですか!」
「俺等はこれで十分」
「そーそ。食うときゃ食うけど、今は食うときじゃねぇから」
一回大量に食ったら、しばらくは少しでも満腹になるんだ。むしろ食わなくても良いくらい。
……………肉食獣!?
「ごちそうさま」
「よし、行くか」
『へいっ!』
うん? なんでこいつ等返事した?
「どうやら奴等は付いていくつもりらしいな」
ボスがまだ気絶してるのにか?
「おいおい……ダグラス一人ならともかく」
「ちょっと待て、誰が付いていくと言った」
「道中銃の扱い方を教えてもらいたくてな」
「知らずに持ってるのか!?」
それでか! 道理で教えてもらえなかったわけだ!
「ジャイズンさん! 俺等が教えますよ!」
「結構」
あ、集団んでヘコんだ。
……何気に純粋だなコイツ等。
「で、教えてもらえるか?」
「悪いな、俺はちょっと行くところがある。馬だからアンタ等とは行けない」
「そうか」
「ジャイズンさん!」
「結構」
ジン、早い。断るのが早すぎる。
「……でも、今夜から明後日のいつかにでもまた寄るか」
『ぃやっほぉい!』
「また奢ってくれるか?」
『勿論!』
……流石ケチ。
「じゃ、また今度な」
「またな」
「またねー」
「バイバ~イ! また今度~」
手ぇ振って見送ってくれた。
……いい人等だ。




