72 色々と大変だね
「きゃー! たけくん、ずっぶ濡れぇ!」
雨が止んでから帰り始めたはずなんだけどなぁ。
タラッド‐タドだ。
俺と岳が帰って来たことに気付いた光がどたどた走って来た。
光って、純くんの事は『お兄ちゃん』なのに岳と忍さんの事は『たけくん』に『しのちゃん』なんだよなぁ……。
「岳くん、なんでそんなに濡れちゃったの~?」
「川落ちた」
『なんで~!?』
すっ転んで。ドジだなー。
「あ、ありがと、しのちゃん」
そういやこいつも『しのちゃん』だった。
リビングの方から忍さんがタオル持ってきてくれた。濡れたまま入るな、と、実際には何も言ってないけどそんな風に聞こえる。
「あ、俺はいいよ。濡れてない」
だからこうして、さっさと上がってるわけで。
「ねっ、たけくん達のお昼ご飯何だったの?」
「豚汁」
あぁ、理絵が提案した。すいとんは時間かかるとかで却下されたんだった。あと中田と西山が五月蠅い。
「いいなー。ウチも豚汁食べたかったー! 一番の大好物ー!」
……小学校高学年の女の子の大好物が豚汁か。
吠える光の頭を、ヒルデガート‐ヒアと忍さんがポンポンと叩いて慰めてやる。
「しのちゃん、明日豚汁にしてね」
「作るのは忍ちゃんじゃないよ~?」
凛さんとミリアン‐ミャの共同料理。忍さんが参加してるのはごく稀。光はちょっと稀。純くんと岳は絶対しない。
「お母さーん!」
わざわざ頼みに行った……。
『材料無い』だってさ。
「帰ったか、岳」
「ただいまー」
「……何をしたらそんなに濡れるんだ」
「川に落ちたら」
「気を付けろよ」
純くんの言葉にも軽い返事。生返事?
「ジンとシルは?」
「ジンは仕事~。シルは最近ハマり初めたRPB? に夢中~」
RPG、な。ロールプレイングゲーム。Bじゃないだろ。
「金の無駄遣いを」
「無料ゲームなんだけど、これ」
純くんが顔をしかめて言った事に、すかさずシルが突っ込んだ。
「時間の無駄遣いを」
わざわざ言い直した。
「あたしその言葉が一番嫌ーい。本人が無駄だと思ってなかったら無駄じゃないんだよ」
「屁理屈を」
「あれ、違うの?」
火花が見える。……火花が見える。
純くんの目からは光線。シルの目からは静電気位のびりびりがでてるし。
仲悪いな、あの二人。
「もー、仲良くしなきゃダメだよ!」
「そうそう~、同じ家なのに~」
「そもそも、お前等はいつまで住み着くつもりだ!」
……知らね。
死校に行けるようになったら、俺は出るかな? 寮あるらしいし。死校の地下に。
「純兄さんは、楽しむこと覚えなきゃ」
忍さんが口開いた。珍しい。イケてるボイス略してイケボの忍さんの声。
「そうそう、忍の言う通りだよ、堅物」
「……忍。どうしても楽しめそうには無いが」
「無理すれば?」
「お前は黙ってろ」
シルを人睨み。まるで効果は無いらしいけど。




