70 多分待ちに待った校外学習です!
「火には気を付けるんですよー」
っと、言われはしたけど。
けど、な。
『火、点かねぇーっ!』
という叫びがあちこちから。
湿気てるしな! 午後から雨とか言ってたしな! すでにどんより曇ってるしな!
岳だ!
今日は校外学習。曇っちゃいるけど、真っ黒い雲が天井埋め尽くしてるけど、校外学習だ。
理絵と俊、捺希、中田、西山に俺の班は最終的に豚汁を作ることになった。
一番無難な理絵の意見に決まったって事だな。
「火ぃ点かへんやん! このままやったら何もできひんで!?」
「あたし達まさか、お昼ご飯抜きなんかになんないわよねっ!?」
「えぇっ!? そ、そうなの、高山's!」
おい中田、何だ高山ズって。
「だーいじょぶだって。なっ、岳」
「そうだって。点かねぇのは今だけだよ」
「そ、そ。万が一点かなくってもさ、おにぎりあるだろ? 昼飯抜きにはなんねぇよ」
おい、俊。何でそれ言った?
「やっぱり点かないかもしれないんだぁあああ!」
ほら、中田が悪い方に考えて林の方へ走り去っちまったじゃねぇか!
「え? あ、ちょっと、おい! 虎!」
トラって呼んでるけど、中田の下の前は虎之助な。
「……中田君ね、おにぎり持ってくるの忘れたんだって」
「あぁー、そらショックやなぁ。火ぃ点かんやったらホンマに昼ご飯抜きになってまうやん」
「材料そのまま食べられないかしら?」
理絵、西山、捺希の会話を聞きながら俺は一人、薪と格闘する。
ライターで。点けやコラ。
「あ、ごめんね岳……。何か手伝う事あるかな」
俺が一人でやってる事に気付いた理絵がそう言ってくれた。手伝う事?
「ねぇよ。どうも」
「あ、そか、ごめんね……」
どうやったら点くんだよ、こいつ!
……落ち着け俺、落ち着くんだ! ライター地面に叩きつけようとか考えるなっ!
「っぁー! ウゼェ!」
あ、やっちまった。
「た、岳!?」
「ちょっと、落ち着いて!? らしくないじゃない!」
「キレた。ウチ、松ぼっくり探してこよか? よー燃えるでアレは」
西山がさっさと林の方へ。
「西山、それ松林じゃねんだから、松ぼっくりはねぇよ」
一回フリーズして、ゆっくりと方向転換して戻って来た。無言。
俺、何か悪い事したか!? 凄くそういう気分になるんだけど、西山の視線で!
取り敢えず視線だけそらして火に集中するか。
ライターに火は点く。ここから新聞紙に移して、薪に移すのが難……あ、点いた。
「よっしゃ、点いた! うちわは?」
「あっ、あるよ。はい」
……なんで理絵だけじゃなくて、他の二人も渡してくるんだ?
二刀流ならぬ三刀流か俺は!? うちわだから……三扇流、とか? いや、どうでもいいそこは!
「お前等も煽げよな」
「こういうのは男の仕事やろ?」
「せめて俊と中田が帰って来るまではやれよ!」
「あたしは材料とかお鍋とかの用意するわね」
「あ、ウチもそっち行こ」
おいコラ西山。
「はい、岳。二つ使って、ね」
「あ、うん」
理絵はやってくれんのか。流石タラッドに言わせればクラス一の良い子。
「その班、何作ってんの!?」
『生クリーム鍋!』
……何か向こうの方が騒がしいな。




