68 長男は
「すっげ。大人数ー」
名無しの父さん、凛さん、純……くん? 忍、さん? 岳、光、ラディム‐ラド、ミリアン-ミャ、シヴィル‐シル、タラッド‐タドにヒルデガート‐ヒア。
合計11名。多っ!
タラッド‐タドだ。
夜、帰って来たラディムとミリアンもガムで分離して、一度全員でリビングに集まってみた。あぁ、ジンはちょっと出てるけど。
「やぁ、10年間、お邪魔しました」
「いえいえ、こちらこそ」
『なんでだよ!?』
ラディムの言葉に『こちらこそ』って返した名無しさんに、純くんと岳の突っ込み。
確かにな、向こうは何も邪魔してねぇしな。むしろその逆だしな。
名無しさんは厳格そうにも見えるけど、中身はちょっとボケてる……もとい、天然?
凛さんは華やかなそれなりの美人さん。中身も朗らか。
純くんは名無しさん似で、堅物っぽく見える。中身は不明。まだろくに喋ってねぇし。
忍さんは名無しさんと凛さんの両方に似てる。真面目そうな美人と言うか。中身は……えぇと、謎。無口。
岳の外見も忍さんに同じく両方似。中身は俺等に対してだけかもだけど、短気。学校じゃ何気に優しい、らしい。
光の外見は凛さん似。美人と言うより可愛いだけど。中身は両方似かな。朗らかでちょっと天然。
……ラディムとミリアンは、きっと年齢以外にも何かしらの条件付けてたな。探すの大変だっただろ。かなり長い間放浪してたような気ぃするぞ。
「で」
『で?』
「アンタ方は何なんですか」
純くんが半分こっちを睨みながら聞いてきた。そりゃ睨みもするよな。いつの間にか自分と妹の一人が死んでるんだから。
「あれ、昔話聞いてなかったのか?」
「聞き流してました。長いから」
「俺も親父が話してる時は聞き流してた」
……ラディム、おい。
「俺は、よく分からない化物と黒修羅、額に一本の黄色い角が生えた鬼が8分の1ずつ。額と脳天の間に角が生えた鬼、牛のような角が生えた鬼、蒼と赤の修羅に空族、豹の獣人、鳥人、虎に人魚に精霊が16分の1ずつ混ざった、超が付く珍生物」
「よくぞそこまで混ざりましたね」
「混血は混血を呼ぶ」
ねぇよそんなことわざ。
「で、ミャは霊界の実験により誕生した霊界の色々なモノが混ざった生物」
純くんはもう、何も言う気が無いかのようにとりあえず頷いた。正しくは高山一家全員で。
「でもって、ジンは今ちょっと居ないみたいだけど、ジンとシルとタドとヒアは、それがさらに混ざった超をいくつ付けても足りないほどの珍生物」
どこの世界探しても一体しかない種族が混ざってるもんな。種族って行っていいのかどうかはともかく。
「まぁ、どうやらミャの形質は霊体って事しか受け継がれなかったみたいだけど」
一番でかい特徴が受け継がれてるな。霊体ってだけでかなり変わるぞ。
「…………それで、この一家にとりついたのは何の恨みがあってですか?」
「恨みは無い。霊体にならない体が欲しかっただけであって。丁度いいところに居たのが高山一家。ホント感謝してるよ。監視はもう撒けただろ」
「ねぇ、ラディム。前からちょっと気になってたんだけど、監視撒いたらどう違うの?」
「見られてるなんて気分悪いじゃな~い。それだけの違いよ」
シルの問いにはミリアンが答えた。
「それだけのために俺等の……」
純が何か俯いてぼやきだした。……まぁ、そうだよなー。
「まぁ、終わったことは仕方がないじゃない。今までの事は水に流して、仲良くしましょうよ。ね?」
「ちょっ! 母さん!」
「さんせーい! ウチ、もう光ちゃんとは仲良しだもん、ねー!」
「ね~」
岳が叫んで、光とヒアがにっこり笑いあう。純は顔をしかめた。名無しさんは会話の外でいじけだした。見た目に反してメンタル弱いなアンタ。
「母さんは楽観的すぎる」
「この人たちを攻めても何にもならないでしょう?」
……聖母だ。凛さん聖母だ。後光が見える。当然、実際には見えないけど。
「そーそー! お兄ちゃん達みたいな人が居るから戦争が起こるんだよ!」
「あのなぁ……」
純が大きなため息を吐いた時、リビングの扉が開いてジンが入って来た。
『お帰りー』
「ただいま。……改めてみると多いな」
「12人だもんねー」
ジンの呟きにシルが返す。光は改めて『多っ!』って叫んだ。
「どこ行ってたんだ? 俺が帰って来た時には居なかったけど」
そりゃな。姉ちゃんのクッキー数枚食べたらすぐに出てったし。
「霊界。ちょっとしてないお詫びの品買って来た。流石にこのままじゃ拙そうだから。特にそいつ」
ちょっとしてないってなんだ。ちょっとした、の逆って事は分かるけど。
そいつって言うのと同時に一瞥された純はムッとした様子で口開いた。
「誰が……っ」
「死ぬのはショックかも知んねぇが、関係ない奴にとりつくのは止めろよな。忍については完全にこっちの責任だけど。という訳で、はい。利用できるもの全部利用して、値切りに値切って買って来た」
やっぱジンはケチだ。
パーカーのポケットから出した小さな箱を、純くんと忍さんの前に置く。
「何だ、これは」
「実体珠。モノに寄るがその値段25万リール。二つで50万リール」
霊界の金の単位か。1リールは日本円で4円だったはず。
ちなみに、他にもイレペって言うのがあって、1イレペは0.04円だってさ。細かすぎるだろ。使うのか? 使うからあるんだろうけど。
……って、あれ? 25万リール?
「分かるか」
「分からないと思って言った。25万リールは100万円だ」
「…………合計200万!?」
え、何が? 兄ちゃんが買ってきた奴? え、200万!? 前言撤回、意外とケチでもない!
「を、値切りに値切って250000ジラク」
その場が沈黙。
だって、な。半額じゃねぇか。売り手側に何があった!?
「それでも100万か……」
純くんが唸るような声で言った。逆に言えば100万円値切ったって事だよな。
「わあっ! 綺麗!」
忍さんが開けた箱を、光が横から覗き見た。純くんも開けて、目を丸くする。
……気になるじゃんよー。俺も見てぇよー。
「真珠か?」
「実体珠っつっただろ。真珠よりずっと価値がある。箱から出してみな。穴が開いてるだろ?」
ひょいと忍さんが持ち上げる。
白くて光る、小さな玉。穴が開いてるのかどうかはよく見えねぇけど。
「そこに紐を通して、首にかけるか腕に巻くかして、とりあえず身に着ける。紐は絶対付けることと、紐か珠のどっちかが必ず肌に触れるようにすることは守れよ。そうすれば霊も実体を持つことができる」
……霊が実体化するための物か。そりゃ高いだろうなぁ。
「そんな物、ただの幽霊が付けててもいいのか?」
「大丈夫。死んでるけど、それが不当だと思われる霊が五年間実体化して生きてるって事にできる制度があるんだよ。
本来なら死神の手違いで殺しちまった奴に適用されるんだけど、俺が屁理屈ごねてきたから大丈夫」
屁理屈って自分で言うなよ!
「へりっ……!?」
「気にしちゃ負けだ。大丈夫、ある意味ではそれなりに偉い方だから。知ってるだろ?」
「いや、アレは」
「だから気にしたら負けだって」
手に追えないけど、能力は高い奴等が集まった場所に居るんだっけ。確かにある意味偉い方だな。
「……礼は言う」
っていうセリフって、礼を言うって言っただけだよな。
「だがこんなに高い物を……」
「あん? このまま冥界行くか? 即送ってやれるけど」
「好意に甘えさせてもらうよ」
……流石、ジンを一番近くで見てただけあるな。ジンが金棒出した瞬間態度ひるがえした。




