67 変わった兄弟×2
「あ、タドお帰りー。霊界楽しかった?」
「うん、流石異世界って感じだった」
「とゆーと」
「魔法があったり、校内が森だったり」
普通に火事があったり。
タラッド‐タドだ。
帰ってきたら、シヴィル‐シルが台所で何か作りながら聞いてきた。クッキー、かな。
「あれ、また火事あったんだ。流石炎上街」
「霊界ってどんなとこだよ!?」
「あ、岳もお帰りー。部活慣れた? ってか、自分で自分の体動かす生活に慣れた?」
「慣れた」
言い切った。
岳は何部入ったんだったっけ……野球? じゃないな。俺が一日で止めたせいで、すげぇ入りにくい雰囲気になってるはず。
あれ、そもそも俺、岳が何部に入ったかなんて聞いたっけ。
「岳さ、何部に入ったんだっけ? タド聞いた?」
「聞いてない。何部?」
「卓球」
『……ふーん』
「なんだよそのリアクション!?」
いや、結構普通だなーって。
普通じゃない部活動なんか水中にはねぇけど。せいぜいオカルト部。部活じゃねぇけど。
「面白い?」
「面白い」
全然面白いって表情じゃねぇけどな。俺等って感情見せたくないほど嫌われてんのか? そりゃ嫌わない方が不思議だけど。
「あ、ジンだ。お帰りー」
「お帰りー」
シル、俺がジャイズン‐ジンに言った後、
「ジン、お帰り~!」
とヒルデガート‐ヒアが駆けてきた。
「ヒア、何かいい事あったのか?」
「だってジン久しぶりなんだも~ん」
「一週間くらいじゃねぇか?」
「久しぶりでいいでしょ~」
…………『で』?
「仕事一段落付いたんだ?」
「放って来た」
おい。いつもの事って気もするけど。
「シルは何作ってんだ? ずいぶん量多いな」
「小麦粉がドパッて出てきちゃって。クッキーすることにした。大量出来るよ」
やた。いっぱい食える。
シルの菓子はうめぇからなー。岳もそれを知ってるから、ちょっと表情が緩んだ。
「ふぅん。丁度いい時に帰って来たな」
「出来るまでまだ時間かかるけどね。なんせ量が多いから」
ボウル二つ使うほどだもんな。型抜きするのにも焼くのにも時間かかるよな。
「私も型抜きした~い」
「うん。一緒にやろ。型抜きも遠いけど」
まだ白い粉見えるもんな。全然混ざってねぇ。
「ヒア、型抜きが出来るようになるまでちょっとこっち来い」
いつの間にかジンがリビングに来て、ヒアを手招きしてる。面白そうだし、俺も行こ。岳も来た。
「何~?」
「分離ガム。味の方も改良がされた奴。使ってみろ」
「光ちゃんと会えるんだね~?」
「ん、そう。ちゃんと自分が風船の中に入るように意識しろよ」
「は~い」
緩いお返事。大丈夫なのか、おい。……ヒアは大抵大丈夫だけど。心配する方が損だな。
「甘くて美味し~! 砂糖の味がするよ~! 黒砂糖!」
……ガムの味として旨ぇのか、それ。ありそうではあるけど。でもオレンジとかイチゴとか、メジャーな物はなかったのか?
「風船ガム出来るかな~?」
プゥッと膨らませる。茶色っぽい色の風船がどんどん大きなって、ヒアの身体もとい光の身体よりほんの少し小さいくらいまでになった。
「出たらガムから口を離す」
パッと光が口からガムを離した。あの風船ガム、本当に風船みたいなんだよな。あんまりべた付かないし、膨らます時の抵抗がちょっと似てるし。
どこからか取り出した金棒で、ジンが風船を割る。
「出た~。鏡見て来よ~っと」
「……はっ! ヒアー! 待ってよぉ!」
ヒアに続いて、光が部屋を出て行った。
「なんでまた黒糖味。まぁ、不味くなけりゃいいか」
「ジン、ひょっとしてヒアを実験台につかった?」
「安全性は保障されてるからな。味の方はあまり頼りにならない保障がされてた」
それ保障って言っていいのか?
「これでやっと純を外に出せる。いつまでも巣食いやがって」
最初に純の中に巣くったのはジンだけどな。
ジンも口の中にガム入れて、噛んで、風船を作る。今度はジンよりも大きい風船ができた。
金棒を振ったら、今度は純が現れた。
「に、ちゃん?」
「……岳?」
兄弟が首を傾げて、呟く。
「感動の再会」
「タド、水を差してやるな」
すいませんでした。
「ヒアー、型抜き出来るよー」
さらに水を差すシル。
「あれ? 生地寝かせないの~?」
「ちょっと寝かせた」
シルが言うならホントにちょっとなんだろうな。
「ってかさ、何か増えてない?」
「ヒルデガートで~す」
「ひかりちゃんでーす」
何だあのコンビ。末っ子コンビか?
「あ、何かあっちも増えてる」
「ホント~?」
「お兄ちゃん!」
光がどたどた走り寄ってきて、純に向かってダイビーング。でもって、床にダイビーング。
「お兄ちゃん、すり抜けちゃった!? なんで!?」
……そう言えば、兄ちゃんが死校入ったのって五、六年前なんだっけ。その時は死んだのと同じようになってたらしいし……。ひょっとして、純はもう死んでる……?
その純は部屋を見渡して、
「……忍。忍は?」
忍?
シルと一緒に霊界に行ったらしいから、忍ももう死んでるよな……。
「忍はねー、今は多分、天井裏か床下。それとこの、流しの下の色々置けるトコのどこか」
『なんで!?』
「純兄さん。シル、全然驚いてくれない」
ぼそぼそっとした声と共に、忍が鍋置き場から出てきた。おしい!
「無口だけどサプライズ好きなんだねー、忍って」
ジン、シル、タド、ヒアっていう俺等兄弟は大分変ってるって思ってたけどさ。
純、忍、岳、光の兄弟も十分変わりまくってね?




