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ただいま迷走中!?  作者: 呪理阿
五月 GWにもレッツ迷走
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44/102

44 大昔のお話 上

 昔々、あるところに、とても美しい人魚達が暮らす海がありました。

 その海に面した大陸から、そう遠くない位置、海の上に、小さな島がありました。島には、暴れん坊の鬼達が少し住んでいました。

 鬼達は、背が高くてがっしりとした体つきをしていました。力が強いので、大きくて重たい金棒もぶんぶん振り回すことができました。

 彼等の額と脳天の中間あたりの高さには個々によって違う色の太い角が二本あり、口にはとがった牙があります。多少の差はあっても皆立派なものを持っていました。

 鬼達は、強力に金棒、角と牙の武器を使って、狩りをして生活していました。彼等は肉食ですから、野菜や木の実は食べません。

 鬼達の住む島は、自然が豊かでした。山があり、川が流れ、沢山の植物が育って花をつけ、実をつけますから、勿論鬼以外にも動物が居ました。

 鬼達は、その先祖がこの島に来た時からずっと、同じ島に居る四足歩行の動物を食べて生きていました。

 しかしある時、海を渡って旅に出た鬼が気付いてしまったのです。

 大陸に居る人間たちの方が、ずっと捕まえやすいという事に。

 そして、その動物の方が、ずっとたくさん居るという事に。

 旅人ならぬ旅鬼は、故郷の仲間たちにそのことを教えてあげました。

 鬼達は皆、船を作って大陸へ渡りました。

 当然、おっかない見た目をした鬼達を見た人間は逃げ出します。

 しかし、鬼達にしてみれば、今まで狩って来た動物よりもずっと逃げるのが遅かったので、簡単に人間を摑まえてしまいました。

 人間の二倍程も大きい鬼達は、次々に得物をとらえます。

 それからというもの、その大陸は鬼達の格好の狩場になってしまいました。

 しかし、その大陸以外に行くところの無い人間たちは、あることを思いつきました。

 海に住む人魚達に頼んで、鬼達の船が転覆するようにしてもらおう、と。

 思いついたはいいものの、そう簡単に人魚と会う事はできませんでした。

 人間達は、人魚へと大きな赤い木の実を海に投げ入れてみました。

 何も起こりませんでした。

 次に、偶然海でとれた、大きなはさみを持つ海老を投げ入れてみました。

 翌日、砂浜に『ありがとう』と書かれて終わりでした。

 終いには、何を渡せば鬼を倒してくれるのかと書いた紙を、石を詰めた瓶に入れて投げ入れました。

 翌日、砂浜に、『おとこのこ』と書かれた紙の入った瓶が流れ着いていました。

 人間たちは相談して、くじで一人の男の子を選び、彼が寝ているすきに重りをつけ、海へ投げ入れてしまいました。

 海に投げられた衝撃で目を覚ました、まだほんの小さな男の子は、始め何がどうなっているのか分かりませんでした。すぐに苦しくなって、意識を失ってしまいました。

 しかし、意識を失っているのに怒りだけはふつふつと湧きあがってきます。

 気が付いた時、男の子はもう、人間ではありませんでした。

 少し時は戻って、男の子が投げ入れられた直後の事。

 人魚達の住む海の中は大騒ぎになっていました。まさか本当に、男の子が投げ入れられてくるとは思ってもみなかったのです。

 ――代償をもらってしまった以上、頼まれたことはやらなければなりません

 人魚の女王様が言いました。

 彼女は人魚を男女合わせて十八選び、水面へ送り出しました。

 彼等は歌を歌います。相手が何者だろうと、聞けばすぐに美しさで惑わされてしまう歌を。

 鬼の船が一隻通りました。狙った通り、その船は舵をとり損ね、ひっくり返ります。

 乗っていたのは若い鬼三人でした。筋肉が重たくて、彼等は浮かび上がることができません。溺れ死んでしまうかと思った時、女王様に選ばれた内の一人である女の子が突然、黒い角を持った鬼の一人に酸素を与え始めました。

 呆然とする周りの人魚たちに、彼女は何も言わず、その鬼を連れて島の方へ泳ぎ始めました。

 いつもなら一時間もかからずに着く筈の島は、半日かかってやっとたどり着きました。

 黒い角の鬼を岸へと上げ、彼女はぜぇぜぇと荒い呼吸をします。

 夜になり、目を覚ました鬼は、半身が海に浸かったままぐっすりと眠っている女の人魚にすぐ気が付きました。

 その寝顔はとても美しく、神秘的で、しかしどこか可愛らしさも兼ね備えていました。

 黒い角の鬼は、彼女のつややかな金色の髪を撫でました。

『ん……』という声を出して、人魚が起きました。

 起こしてしまったと思った鬼は、慌てて謝り、助けてくれたことに礼を言いました。

 彼女ははにかんで、『借りを返しただけ』と答えました。

 彼女は子供の頃、勝手に遠くまで遊びに行って帰れなくなったところを、旅をしていたという黒い角の鬼に助けられたそうです。

 それを聞いた鬼は、人間という生物を自分たちに伝えた父を思い浮かべました。

 その夜、二人は、彼の父親やそれぞれの家族の話をして過ごしました。

 それから十数年後の事です。

 人魚達の住むところに、母親となった彼女は子を連れて帰ってきました。

 人魚たちは特別驚くことも、彼女を叱ることもしません。ただ、彼女の帰りと、彼女に子供ができたことを喜びました。

 人魚と鬼の娘は、黒い角と、栗色の髪を持っていました。人魚たちとは違って足がありますが、泳ぐことも、水中で息をすることもできるようです。その足には人魚たちと同じ、不思議な色に輝く鱗がありました。

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