42 ドッジボールで一人が狙われることってあるよね
右から一球、左から一球、前から一球。
……どうしろと?
岳だ。
男子の体育の先生が出張だからって、体育の時間がドッジボールになった。今は三組対四組。
やったー。と、喜んでたのは最初だけで、俺ばっかり狙ってくるのがそろそろ鬱陶しくなってきた。
とりあえず……どうするかな。前に出て、前から飛んできたのは何とか取った。左右から飛んできた奴は……声を聴いた感じでは誰かに当たったな。
取ったボールはコートの右より仁居た男子に投げる。取られる。投げられる。取る。
実はこのやり取り、始まったころからずっとやってたりする。
ちなみに相手は修也。
「修也、いい加減俺ばっか狙うのやめろよ! 他狙え、他!」
って言いながら、俺が投げる。
「お前もおればっか狙ってんじゃねぇよ!」
修也が投げる。
「狙ってねぇ! そこの塊狙ってんのに、当たんねぇんだよ!」
俺は、女子が固まっててそこにボールが行けば確実に一人は当てられるところを狙って投げる。でも修也が取る。一歩も動かずに。
『ノーコン!?』
皆でハモる必要なくね!? 先生まで!
「い、以外……」
「……ダーツはそれなりにできるからな、言っとくけど」
呟いた女子を一瞥。その女子が口抑えた。聞こえないと思ってたのか?
投げられたボールを取る、投げる。
「わっ!」
よっしゃ。修也のすぐ側に居た男子に当たった。最初っから修也を狙えば良かったんだ。
「えい!」
うわ、あの大柄な女子が投げてきたボールけっこう速ぇ。
俺は狙われてなかったけど、無意識にボールから遠のくように動いたら、後ろから飛んできたボールが目の前をかすめた。
…………っわ。怖っわ!? 奇跡的だな今の!
「チッ! もう少しだったのに!」
そう言ったのはさっき俺が当てた男子。……復讐かよ。
「汰一!」
今度は修也が俺を狙って投げる、そのまま避けたら今度は汰一とか言う、俺が当てた男子が取って、投げる。
勘弁しろよ……。
修也が投げたら、さらに斜めからあの大柄女子も投げてきて、もう一球は……? あぁ、相手の陣地に味方の外野が投げたところだった。
ボール二個を何とか避けて、こっちの陣地で跳ねたの一個を拾う。投げる、避けられて味方の外野が取る。
後ろから一個、前から二個が同時に投げられた。……全部俺に向けて。
ぶっちゃけコレ叩き落としたいんだけど。駄目だよなー……。それしたらアウトだよなー……。蹴り落とすのも駄目かー……。
「頑張れー、岳ー!」
真っ先に外野に出た俊が叫ぶ。
「応援はいいから戻って来いよテメェ!」
外野から来たボール一個を取って、投げながら怒鳴った。
「ボールが回ってこねーんだからしょーがねーだろー」
外野多っ!? こっちの陣地の中少なっ!?
……ってか、内野、俺しか居なくね!?
「四組弱ぇえええ!?」
危ね、叫んでる間に当てられるトコだった。
『何を今更ー!』
四組外野の声と共に、三組内野からボールが一つ。避けて、怒鳴る。
「開き直んなテメェ等! 戻れよ! 投げんの上手い奴にボール回せ!」
『三組強ぇえええ!』
「開き直んのをやめろっつってんじゃねぇんだよ! 後半聞いてたか!?」
『投げるの上手い人手ぇ上げて!』
……そんなんで上げる奴、居るか?
とりあえず取ったボールを外野に回した。……あ。ボールが偶然誰も居なかった所に。悪ぃ。
「じゃあ俺投げる」
俊が名乗り出て、投げた。……って、こっちも後ろから投げられてた!? 危ねっ。
何とか避けた先にまた前からボール。取って投げる。
二人が三組の内野から出て行った。
「復活なう。でも俺、避けんの苦手だからそこよろしく」
俊がそんな事言ってる間に、修也のボールが俊の腕に。
「おーい、次は投げるの旨くて避けるのも上手いヤツにボール回せよー!」
「えぇ!?」
『イエッサー!』
俺上官?




