34 橋の上で
橋があった。
人がすれ違えないほど細い橋。一人通るだけでいっぱいだ。
真っ白の空間にあるそれを、俺は見下ろしてる。
どっから? ……知らね。
岳だ。
自分の体がどこにあるんだか分からん。橋が見えるんだから目はあるな。
で、きっとこれは夢で、どうしようもねぇから取り敢えず橋を見てる。
ん? 橋の形が変わって、白い手すりのあるコンクリートの橋に。森が見えるかたっぽの端から中高生くらいの女の子、街っぽい風景が見える反対側からは杖をついたお婆さんが。
橋の太さは変わってねぇから、当然ぶつかる。
女の子が焦った様子で、
「ちょっ、ちょっと、通してください!」
「あたしゃ向こうに行きたいんじゃ」
「えっ!? いいから、通してください!」
ぐっとお婆さんを押し戻そうとすると、
「年寄りに何という事をぉ!」
腕を押さえて怒鳴られた。
「えぇええ!? ご、ごめんなさい? でもお願いですから通してください!」
「いやじゃ、あたしゃ向こうに行きたいんじゃ」
「で、でもあそこ、出ますよ!」
「出るって何がじゃ」
「ゆ、幽霊的なアレですよ! 出るって噂、というか今あたし会ったんですよ! お爺さんの幽霊! ほら」
女の子が指した方に、ぼんやりと幽霊が見える。
「あぁ、アレはあたしの爺さんじゃ。今行きますよー」
「えぇえええ!? お婆さんのお爺さん!? 行っちゃ駄目でしょ! とりつかれますよ!」
ぐっとお婆さんを押し戻そうとすると、お婆さんは腕を押さえて
「年寄りに何という事をぉ!」
元気に叫ぶ。
「あんた全然年寄りじゃ無くない!?」
「何を言う!」
「痛っ!?」
杖で女の子の頭をペン! めっちゃ元気じゃねぇか!
「ふう。やれやれ、一服するか」
しかも婆さん、橋の上で座り込んだ!? 一服!? その湯呑みどっから出した!?
「ちょっ! 通してくださいって言ってるじゃないですか!」
「さて、この爺さんへのお供えのお饅頭を」
懐から出したのに、あの饅頭、包装紙にくるまれてねぇ! そのまんまだ!?
「旨いのぉ」
「食った!? お爺さんへのお供え物食った!?」
女の子引いた。後ろを振り返って、
「そんな事したら来ちゃうじゃないですか!」
「おぉ、爺さーん、こっち来ませんかぁ?」
「呼ぶなぁああああ!」
……あ、消えてった。何だったんだ。
今度は吊り橋に。細さは相変わらず。
山が見えるかたっぽから焦った様子の女の子A、都会が見える反対側から怖がった様子で吊り橋にしがみ付く女の子B。またぶつかる。
「あぁっ! ちょっと、退いてください! 急いでるんです! トイレに行きたくて……向こうにしかないんです!」
「怖いよッ!」
女の子BがAにしがみ付いた。
「えぇええ!?」
「怖いよぉ、怖いよぉ!」
「え、あの、ちょっとぉ! 通してくださいよ! 一緒に戻ってあげますから!」
「都会は怖いけぇ、山に行きたい!」
「吊り橋が怖いんじゃないのかよ!」
おぉ……突っ込みの時だけ口調が変わったぞ、女の子A。
「もぉ! 早く退いてください! トイレ、行きたいんですってばぁ!」
「山ですればよかろ!」
「この年で!? 中三ですよ!?」
「知らんよ! 早よ行き!」
「いやぁ! いいから一回戻って下さいってば!」
「田舎じゃなぁ! 皆トイレでするけん、問題なかろ!?」
「いや、何処が問題ないんだよ!? 田舎とあたしの何処に関係があったんだよ!?」
「知らん! さっさと行きぃ! 怖いよぉ!」
言い合い押し合い。……女って怖ぇー。
「キャァッ!?」
うん? 女の子Bが飛びのいた。
「穴開いたぁ!?」
「どうすんですか! 結構デカいですよ! あたし帰れなくなっちゃったじゃないですか! トイレェ!」
「そこにせぇよ! 怖いよぉ! ほら、目ぇ逸らしちょくけん! 怖いよぉ!」
「怖いよぉ! は語尾か! あたしまで怖くなってきたじゃないですかぁっ!」
あ、消えてった。
…………ほんっとに何なんだ!?




