33 口から出まかせ どこまで出まかせ?
「ん、お早よ」
「お早よっつーか、お帰り。何で居んだ?」
「半月ぶりに帰って来た兄に言う言葉か?」
お帰りは言っただろ。つか、半月は二十日もねぇよ。
岳だ。
起きて、着替えて、一回に下りたら、何かフツーに兄ちゃんが居た。フツーにルービックキューブ弄ってた。服も死神の黒い服じゃねぇし……。霊体でも無い。
「……会ってすぐってのもなんだが、ちょっと大事な質問だ」
「あん?」
ルービックキューブ回しながら言われても説得力ねぇー。……あ、完成した。すげー。
「霊界、その他色んな世界、行ってみてぇか?」
どこが大事な質問だよ。
「異世界か……まぁ、興味はあるな」
「行きたいかと聞かれると?」
「帰って来れるなら行ってみてぇな」
「ふーん……。帰って来れるなら、って言ったのは?」
「異世界で帰って来れねぇとか不安すぎるだろ。言語とか違うだろうしさ」
「誰か居るなら?」
「……その人がその世界に詳しいなら、別にいいな」
「帰って来れなくても?」
「まぁ……そう、かな。架空の話だから言えるけど。……って、何が言いてぇんだよ」
さっきから、何が聞きてえのかさっぱり分かんねぇよ。まさか異世界に飛ばす訳じゃあるまいし……。異世界に飛んでった奴を連れ戻すのも仕事だろ。
「異世界知識と異世界言語学の教科書があるんだ。こないだ発売された。知り合いの本屋に貰ったけど、生憎知ってる事しか書かれてなかった。貰ったばかりのモンは売りにくいし……要するに邪魔だ」
はっきり言ったな。ありがた迷惑ってか。
「で、どうせ数年もすりゃ岳も行くだろうから、先に知識がある方が得だろ? もし死校に行く事があれば、俺よりも早く卒業できるかもしれねぇし」
「ちょっと待て、行くって何処にだ。死ぬって事か?」
「ん、そん時分かるだろ。待てば分かる事を教えんのはめんどくせぇ」
……出た、めんどくせぇ病。
「気になるだろ!」
「ん……じゃあ、そうだな。ご先祖にでも会いに行こうってのはどうだ?」
「は?」
「直接繋がってるご先祖だ。どうやらまだ生きてるっぽい。ひいの付くご先祖は四種類の生き物の血が混ざった化け物達らしいし、きっと面白れぇだろ? 出来る事なら元の、純血が流れてる代まで遡って会ってみてぇんだけどなぁ……。生きてるかどうかは聞いてみなきゃ分からんな」
「え、ちょっと待てよ? ひい祖父ちゃん祖母ちゃんの代で四種類の生き物?」
「の、血が混じってる。要はクォーターだな。鬼と悪魔と妖怪と……何だったかな」
「え、じゃ、俺等は!?」
「三十二分の一入ってるな」
冷静に言える事か!?
「あぁ、でも、どっかで同じ種類の血が混じってるかもしれねぇから、十六分の一や八分の一の可能性も……」
「そうじゃねぇよ!」
「はいはい、人間の血は入ってんのかーって言いてぇんだろ。知らねぇよ。形は人間だし、入ってんじゃねぇか? でも似たような形の奴はいっぱい居るからな……。父さんは八分の一、母さんは十六分の一、そん中のどっかに入ってるといいな」
兄ちゃんと話してると、たまに勢い削がれんだよなー……。兄ちゃんの言い方聞いてると、どうでもよくなってきた。
「……別に、入って無くても困らなくね。今まで困った事ねぇし」
「ん? それもそうだな。…………じゃ、テメェが中学卒業してもまだ見つかってねぇようなら一緒に探すか。人手は多い方が早く見つかる」
人かどうかは知らねぇけどな。
「……っつか、俺を高校に行かす気無しか?」
「別に行かなくても勉強はできるぜ。そこは楽しさの問題だな。ま、どちらにせよコレ、使っとけよ。役に立ちそうだろ?」
あぁ、異世界の事や言語の教科書?
「貰っとく」
…………どこの言語だー。っつか、あれ?
「……兄ちゃん、俺にコレ受け取らせたかっただけじゃねぇのか」
「すげぇな俺。口から出まかせがここまですらすら出んのか」
あ゛っ!?
「まぁ、役に立つのは間違いねぇって。各ページの一番下に豆知識乗ってるぜ。上手い値段交渉の仕方とか」
どんな豆知識だ! 教科書に乗せるもんじゃねぇよ!




